No.139062

異世界の天の御遣い物語12

暴風雨さん

真・恋姫†無双~萌将伝~発売決定おめでとう!
作者はすごい楽しみです

2010-04-27 01:22:29 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:3986   閲覧ユーザー数:3142

〝決着〟

 

 

 

 

〝陳宮〟

 

 

ねねは・・・。ねねは・・・。夢でも見ているのですか・・・?。

 

呂布殿に、逃げるための準備を言われ、その準備も終わり呂布殿を探し回っていると、中央から大きな音が聞こえてくる

 

から、近くまで来てみると。・・・あの呂布殿が知らない誰かと互角に戦っているのです。

 

天下無双と謳われた、あの飛将軍・呂布殿が・・・・恋殿が・・・互角。

 

それだけでも信じられないのに・・・。信じられないのに・・・。恋殿が・・・倒れた。

 

「・・・これは・・・な、なにかの・・・間違いなのです」

 

恋殿が・・・ひっぐ・・・恋殿が・・・死ぬはずないのですっ!。

 

頭で否定し、目を瞑り、絶対に認めなくても。・・・目をあければ、見えてくるのは。・・・倒れて動かない恋殿の姿だけ。

 

「・・・えっぐ・・・恋・・・殿」

 

目の端には知らぬ間に涙が溜まっていて、それを零さないように、ヨロヨロと立っているのがやっとの状態です。

 

ねねはその状態で、恋殿を殺した男を、睨むようにみました。でも、男はねねに気づかず恋殿の傍にまで歩いていっている。

 

「・・・くっ!」

 

あの男が傍にまで行くことが許せず、ねねは駆け出しました。

 

 

 

 

 

 

〝一刀〟

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

な、なんとか勝てた・・・。〝羽衣〟を解除して

 

俺はその場で倒れそうになる体を必死に、支えながら恋に近づいていく。

 

まだ・・・ぶっ倒れるわけにはいかない。やることが・・・あるんだから。

 

そうやって頑張りながら恋の前までにやってくる。

 

「・・・さてと」

 

三本の刀を納刀して、俺は恋に触れようとした。そのとき、

 

「やめるのですーっ!」

 

「・・・ん?」

 

誰かが叫びながら俺の前に走り込んで来た。

 

「お、お前、よくもっ!・・・ひっぐ・・・よくも、恋殿を・・・っ!」

 

その娘は泣きそうになりながら、俺に指を指して来る。

 

「・・・よくも殺したですねっ!」

 

「・・・・・・・」

 

この娘はよっぽど恋のことが、大好きなのだろう。でなければ、こんなところまで来るはずがない。

 

「なんとか言ったらどうなのですっ!」

 

「・・・・・・・・・ちんきゅー」

 

「なっ・・・!お前に・・・お前に・・・名前などよばれたくないのです!」

 

「え?・・・いや、あの、今のは俺じゃなくて」

 

「な、ななな・・・っ!自分が殺したことを否定するなんて。なんて・・・さいてーの奴なのです!」

 

「いや、だから、俺じゃなくて。今のは、恋が・・・」

 

「《ブチッ》・・・今なんと・・・言ったのです?」

 

「・・・・・へっ?」

 

「よくも・・・よくも・・・恋殿の真名を・・・っ!」

 

なんかすごくやばい感じだ・・・!?。だって、この娘、体プルプルしてますもの!

 

「恋殿の仇なのですっ!ちんきゅーきっくをおみまい・・・」

 

「・・・・・・・ちんきゅー」

 

恋はその娘の名前を呼びながら、足首をつかんだ。

 

「なっ・・・《ビターンッ!》・・・・ううぅ・・・痛いのです」

 

・・・そりゃ痛いだろ。飛ぼうとして、足掴まれて、顔面もろにうったからな。

 

「恋・・・気分はどうだ?」

 

「・・・体がすごく、痛い。・・・でも。・・・??・・・・生きてる」

 

自分がなんで生きているのか不思議で頭に?を浮かべてる。

 

「・・・立てるか?」

 

「うっ・・・・・無理」

 

なんとか立とうとして力を入れてるみたいだが、無理みたいだ。

 

「待ってろ。今、動けるようにしてやるから」

 

今の少ない氣でも、この場から逃げられるくらいの体力はなんとかなると思い、掌に氣を集め

 

内養功の術を使う。

 

「・・・・・・・あったかい」

 

恋は仰向けになりながら、気持ちよさそうだった。

 

「・・・いつつ。いったいなにが起こったのです・・・?」

 

「・・・・・ちんきゅー」

 

「・・・・・え?・・・恋・・・殿・・・?」

 

恋は返事をするように首を動かす。

 

「!!?・・・恋殿ーーーー!!」

 

ちんきゅーと呼ばれたその娘は、俺とは反対側にいき

 

「・・・生きて・・・生きておられたのですねっ!・・・よかった・・・っ!」

 

「・・・・・・ちんきゅーも・・・・・ねねも無事で・・・よかった」

 

その恋の言葉がとどめになったのだろう。陳宮は両瞳からとめどなく涙がこぼれてきた。

 

戦場の中心で、俺と恋は少しの間、陳宮の涙声を聞いていた。

 

そして―――――。

 

「ご主人様ーーーーっ!」

 

「おにいちゃーーーんっ!」

 

「主っ!」

 

俺を呼ぶ仲間の声も聞こえてきた。

 

 

 

 

 

俺と恋との戦いも終わり、周りで見ていた兵達も時間が動き出したように、ザワついていた。

 

恋の隊の兵達は、自分たちの将が負けたことに信じられず、落胆していた。

 

そんな兵達を、愛紗、鈴々、星。三人の副官が味方兵を連れ、中央に固めるように取り囲んでいった。

 

んで、

 

「ねね達を一つにまとめて、どうしようというのですか?」

 

「ん?・・・どうもしないよ。ただ、逃げるなら一つにまとまって一点突破の方がいいかなって」

 

「・・・・・・・は?」

 

陳宮はとんでもなく変な顔をしていた。

 

「はぁ・・・またご主人様の悪いクセが」

 

「諦めろ愛紗。主はこういう御方なのだ」

 

「でも、その方がお兄ちゃんらしくて、鈴々は好きなのだ」

 

おおぅ。言われてるよ、いろいろと。

 

「・・・・・・なぜ、逃がす?」

 

「理由は二つ。・・・まず一つ目。生き死にだけが戦いの結末の全てじゃないから。・・・二つ目。

これは俺の気持ちだけど、恋には生きて欲しい」

 

「なっ・・・今、ご主人様、呂布の真名を呼びませんでした?」

 

「ああ。本人から良いって言われたから・・・」

 

「なっ!なななななっ!なーー!」

 

「愛紗、少しうるさいぞ」

 

星が愛紗に注意していた。

 

「ぐっ・・・・ご主人様、あとで説明してもらいますからね?」

 

「・・・りょ、りょーかい」

 

そうして俺は愛紗から恋に目を移すと、

 

「・・・・・・・《じぃ~~~・・・》」

 

めっちゃ見られていた。

 

「・・・えっと、うそ言ってるように見える?」

 

「・・・《フルフル》」

 

「恋殿っ!?騙されてはなりませんぞっ!こやつはこうして油断させておいて・・・」

 

「・・・・・大丈夫」

 

「恋殿ぉ~~~~・・・」

 

「ほう・・・あの飛将軍に信じられるとは、さすがは主。・・・くくっ」

 

星が笑いを抑えるように笑っていた。理由は、まぁ愛紗にあるが・・・言わないでおこう。

 

「えっと・・・それじゃあ、さっそくだけど逃げて・・・」

 

「・・・《フルフルッ》」

 

「え・・・いやなの?」

 

「・・・《コクコクッ》」

 

「・・・理由きいてもいい?」

 

「・・・・・一緒がいい」

 

「・・・・・・・へっ?」

「・・・・・・・え?」

「・・・・・・・は?」

 

俺と愛紗と陳宮はそれぞれ変な声をだしてしまいました。

 

「れ、れ、恋殿~~~~~~っ!」

 

「ご、ご、ご主人様~~~~~っ!」

 

「ぎゃああ~~っ!あ、あ、愛紗っ!傷、傷、傷~~~~~!」

 

涙目になりながら、愛紗に叫ぶ。

 

「あっ!?も、申し訳ございません!?」

 

すぐに手を離してくれた愛紗。

 

「ふぅ・・・・。えっと、それってつまり、俺達の仲間になりたいって事?」

 

「そう。・・・ダメ?」

 

そんな透き通ったような瞳で首をかしげて、見ないでくださいっ!?かわいすぎる。

 

「おれは良いけど・・・みんなの意見も聞かないと。とりあえず・・・桃香達と合流しよう」

 

やべ・・・そろそろ意識保ってんも限界になってきた。

 

「そうですな。・・・私は呂布が仲間になるのは賛成だが」

 

「せ、星っ!?」

 

「鈴々も別にいいのだ。強いやつが仲間になるのはいいことだし。鈴々も呂布と戦ってみたいのだ」

 

「鈴々まで!?」

 

「星と鈴々は賛成ね。・・・愛紗。今答えられないなら、桃香たちと合流してから答えを聞くよ」

 

「御意」

 

「よし。それじゃあ、移動しようか」

 

「はっ!それでは皆のもの、移動をかい――――」

 

俺はそこで意識が飛んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

〝休息〟

 

 

 

 

 

〝一刀〟

 

 

 

「・・・・・・ん」

 

俺が最初に目を開けて見たものは、簡易天幕の天井の裏側だった。

 

起きたばかりで意識がはっきりせず、少し苦しい声を出しながら首を動かしていた。

 

「・・・・今は夜か」

 

入り口を見ると隙間から、夜だということがうかがえた。

 

そして、声を出しながら今の状況を確認していく。

 

「えと・・・確か・・・恋と戦い終えて・・・、陳宮という娘が出てきて・・・。恋が仲間になると・・・言い出して、桃香たちに合流・・・・」

 

だめだ・・・。そこから覚えてないや・・・。ってことはそこから倒れたって事か・・・。

 

「よし。・・・だんだんと意識がクリアになっていく」

 

そろそろ体を起こそうと思い、上半身だけ起こそうとすると、

 

「ぐ・・・いつつ。・・・はぁ。上半身起こすのだけで一苦労だな」

 

座った状態のおれは自分の体を見ていく。

 

上半身は包帯が巻かれていて、服の代わりのようになっていた。

 

ズボンは履いてるな。俺の上着の学生服は・・・、あった。畳まれれるけど、ところどころ切り傷があってボロボロだ。この戦いが終わったら、バックに入ってる予備と代えておこう。

 

刀は・・・・近くにあるな。刀は俺の上着のすぐ傍に立てかけられていた。

 

「俺の状態はわかったな。・・・あとは、みんなはどうしてるかな?」

 

さすがに夜だから・・・・っていうか夜ってだけで外の状況がわからない。

 

ここはどこなんだろう?もう虎牢関は抜けたんだろうか?

 

俺は疑問を抱えながら、痛む体を起こし立ち上がり、入り口に歩いていく。

 

「いちち・・。戦ってるときはこんなに痛くなかったのになぁ。・・・アドレナリンでも出て痛覚の麻痺ってたかな?」

 

まぁいいや。とにかく外の様子が見たい。そう思い頑張って歩いていく。

 

「《バサ・・・》・・・桃香達は・・・?・・・んー、見えるところにはいないか」

 

外の光景は満天の夜空と、俺たちの軍の簡易天幕が見えるところにたくさんあった。

 

「この様子だともう虎牢関は抜けたみたいだな・・・。あとは、ここの場所と・・・。あ、そうだ。

恋と陳宮はみんなと仲良くなれたのかな?」

 

んー・・・気になる。ものすごく気になる。・・・ここから移動して探すか。

 

そう思い一旦天幕に戻り、上着をはおって、ここから移動した。

 

「あー・・・。やっぱり地味に痛いなぁ・・・。」

 

 

 

 

〝愛紗・星・鈴々・桃香・朱里・雛里・恋・ねね〟

 

 

 

ここは虎牢関と洛陽の中間にあたる場所。

 

連合軍は昨日のうちに虎牢関を抜け、この場所で小休止をしていた。

 

ちなみに虎牢関に一番乗りしたのは孫策軍だった。

 

袁紹軍は劉備軍と前線で戦っていたが、いつのまにか後方に下がり高みの見物をしていた。

 

袁術軍は袁術が蜂蜜水を飲みながら、見物していた。そして孫策の手柄は童のものじゃなどと言っていたらしい。

 

曹操軍は名将・張遼を傘下に加えさらに強くなっていた。

 

そして今、劉備たちは休息のため、晩御飯を食べていた。

 

 

「ほら、恋。こ、これもおいしいぞ」

 

「・・・・・《ハグッ》モグ・・・モグ・・・《パァアァァ・・・》」

 

「い、いかん。可愛すぎる」

 

関羽は最初、呂布が仲間になるのをためらっていたが、劉備が説得しこうして食事を共にしている。

 

そしてその食事がいけなかったのだ。関羽はいつのまにか呂布に骨抜きだった。

 

「はぁ・・・。一番反対していた愛紗がこれとは・・・まったく」

 

「でもでも、愛紗ちゃんの気持ちわかるなぁ~。だって恋ちゃんの食べてる姿、可愛いよ」

 

「こら~~!恋殿はお前らの愛玩動物ではないのです!」

 

「恋には負けてられないのだ!《ハグハグハグッ!》」

 

「あ、あわわ・・・。鈴々ちゃん、そんなに勢いよく食べたら・・・」

 

「ぐっ・・・《ドンドンっ》・・・っ!?」

 

「鈴々ちゃんっ!?こ、これ!お茶です!」

 

劉備たちは楽しいときを過ごしていた。

 

そして、晩御飯が終わり、中心に焚き火をたきながら皆が一服したとき、

 

「・・・ご主人様、そろそろ起きないかな?」

 

劉備が少しうつむきながら言っていた。

 

劉備の言葉に全員が反応する。

 

「そうですね・・・。もう一日半は寝ていますから、そろそろ起きるはずですよ、桃香さま」

 

と諸葛亮が場を明るくするように言う。

 

「・・・・・・ごめんなさい」

 

「恋。謝る事はないぞ。恋も主も武人として相向かい合った。だから謝罪の言葉は主への侮辱になるぞ」

 

「・・・《コクッ》」

 

呂布は趙雲の言葉を本当にわかったように頷く。

 

「ごめんね、恋ちゃん。そういうつもりで言ったんじゃないから」

 

「わかってる。・・・桃香はやさしい。月と詠を助けてくれるって、・・・言ってくれた」

 

劉備は呂布と約束していた。呂布から董卓は洛陽で何も悪いことはしていないと真実を伝えられ、それならと。

 

今現在その助ける方法を考えているのだが、中々思い浮かばずにいた。

 

「(ご主人様に、話して一緒に考えてもらおう。ご主人様ならきっと助けるっていうよね♪)」

 

「・・・桃香様?聞いておられますか?」

 

「へ?・・・な、なに?愛紗ちゃん」

 

「ですから、ご主人様の様子を見てきますと言っているのですが」

 

「あ、うん。わかったよ、愛紗ちゃん。ご主人様のことお願いね。私、朱里ちゃんと雛里ちゃんとで、どうやって董卓さんを助けるか。もう少し考えてるから」

 

「御意。わかりました」

(やはり桃香さまとご主人様は、似ておられる)

 

「恋も一緒に考える・・・」

 

「れ、恋殿・・・。わかりました。ならば、ねねも力を貸しますぞ~!」

 

「恋ちゃん、ねねちゃん・・・。うん、一緒に考えよう!」

 

そうして関羽は一人で一刀の様子を見に行こうとするが、

 

「鈴々も一緒に行くのだ!」

 

「私も行くぞ、愛紗」

 

趙雲と張飛が名乗りをあげた。

 

「大勢で行ったらご主人様に迷惑だろうが・・・!」

 

「だったら、愛紗が残ればいいのだ。鈴々は絶対に譲らないのだ!」

 

「なっ・・・鈴々っ!?」

 

「諦めろ、愛紗。心配なのはお主だけではないのだから」

 

「星・・・。そうだな。・・・わかった。鈴々、あまり騒がしくするなよ」

 

「わかったのだ」

 

三人は一緒に一刀のところへとむかうのだった。

 

少し歩き、一刀の簡易天幕の前まで来た三人。

 

「失礼します。ご主人様」

 

起きているかもしれないと思い、一応挨拶する関羽。

 

「《バサッ》・・・ご主人様、おき・・・!?」

 

「どうした愛紗?そんなにおどろい・・・?。おや?主の姿がいないな」

 

「お兄ちゃん、一体どこに行ったのだ?」

 

「まったくあんな怪我でどこに行ってしまわれたのだ!?ご主人様は!?」

 

とりあえず三人は天幕の外に出る。

 

「星!鈴々!ご主人様を探すぞ!・・・見つけたらタダじゃおきませんからね!ご・主・人・様ぁ~!」

 

「うわ~・・・。愛紗が本気で怒ってるのだ」

 

「しかたあるまいよ、鈴々。今回ばかりは主が悪い」

 

「行くぞ!二人とも」

 

「応なのだ!」

 

「ああ」

 

三人はそれぞれ別々のほうへと探しに行った。

 

 

 

 

〝一刀〟

 

 

 

「桃香~。愛紗~。みんなぁ~。・・・おかしいな?全然いないぞ」

 

一刀は痛む体を動かしながらヨロヨロと桃香たちとは別の方向に歩いていた。

 

「(月明かりで明るいけど、少し目がかすんで遠くのものがよく見えないや)」

 

 

一刀は―――――孫策軍の陣地で、みんなの名前を呼びながら歩き回っていた。

 

そして一刀に、桜色の髪をした胸の大きな女性がどんどんと近づいていっていた。

 

「みんな~。隠れてないで出てきてくれよー」

 

陣地がちがうことも、背後から来ている人のことも、まったく気づかない一刀だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〝洛陽へ〟

 

 

 

 

 

 

 

〝一刀〟

 

 

「・・・なんだろ?なーんか後ろから妙な視線を感じる・・・?」

 

俺は後ろが気になり、振り返ると、

 

「や♪、元気?北郷一刀くん」

 

「うお!?って、いつつっ!」

 

俺はいきなり出てきた孫策さんに驚き、咄嗟に動いてしまい傷が痛み出す。

 

「あんまり元気そうじゃなさそうだね、一刀」

 

「そ、孫策さん・・・。いきなり出てこないでくださいよ」

 

痛さでしゃがみこんでいた俺は、のろのろと起き上がる。

 

「いきなりって・・・、ここ私の陣地なんだから、一刀のほうがおかしいんじゃないの?。こんなところウロウロして」

 

「私のって・・・。そんなわけ―――」

 

「一刀、あの旗見える?」

 

孫策さんはここから見える旗を指差す。

 

「えっと・・・・」

 

俺はその指を追うように、目線を旗のほうへともっていく。

 

「・・・・・・・・あ」

 

まだ少しぼやける視界で何とか見ようと頑張り、ようやく見えて気づく。

 

「わかった?ここは私の陣地♪。間違ってるのは一刀の方」

 

孫策さんはニコニコ顔で詰め寄ってくる。

 

「その、すいませんでした。今すぐ出て行きますから」

 

そう言ってその場から立ち去ろうとするが、

 

「ダーメ♪ちょうど退屈してたとこなの。少し付き合ってよね、一刀。そうしたら無断で入ってきたこと

無かったことにしてあげるから」

 

豊満な胸を背中に押し当て、抱きついてくる孫策さん。

 

「っ!?。―――わ、わかりました!わかりましたから、離れてください!痛い上に、背中がぁ!背中がぁ!?」

 

ムニュムニュと背中で形をかえる胸を意識しないように頑張る。・・・傷の痛みがなかったら、確実にやばかったな。

 

・・・いろんな意味で。

 

「それじゃあ、冥琳に見つからないうちに早く行きましょ。ほらほら」

 

「わっと!?引っ張らないでくださいよ!?」

 

傷は痛んだが、笑顔の孫策さんの顔を見ていたらあまり気にならなかった。

 

 

 

 

 

〝愛紗・星・鈴々〟

 

 

「星!鈴々!そっちはどうだった!?」

 

「ダメなのだ。全然見当たらないのだ」

 

「こちらも見つからなかった」

 

「・・・そうか。・・・一体どこにおられるというのだ?」

 

関羽は少し焦っていた。あの傷でそう遠くへはいけないはず。なのにこれだけ探していないとなると、

 

拉致されたのではないか。そう考えていた。

 

「やはり桃香さまに言ったほうがいいのだろうか?」

 

「鈴々はその方がいいと思うのだ。みんなで考えたほうが早いとおもうのだ」

 

「・・・そうだな。人数は多いほうがいいかも知れん」

 

三人の意見は一致し、劉備たちのところへと移動する。

 

 

 

 

 

 

〝一刀〟

 

 

「なんでこんなことに・・・」

 

いや理由はわかってる。俺がウロウロと歩いていたせいだ。自業自得なのはよく分かっているが、なんで

 

「・・・なんで増えてるわけ?」

 

俺は孫策さんに連れられ、陣から少し離れた岩場の上に来ていた。そして、孫策さんがどこからか持ってきた酒で

 

月見酒をしていたのだが、いつのまにか周りには孫策さん以外の人が来ていた。

 

まぁ少し楽しいからいいけど・・・。目もだんだんと戻ってきたし・・・。

 

「ちょっと、祭。それは私の酒よ。あんまりガブガブ飲まないでよね」

 

「なーにケチくさいことを言っているのだ、策殿。酒はみんなの物じゃ。ごくっ・・・ごくっ・・・ぷはぁ~~っ」」

 

「穏~。祭が私をいじめるんだけど、こらしめてくれない?」

 

「無茶言わないでくださいよぉ~。私がこらしめられちゃいますよぉ~」

 

「それじゃあ、思春~」

 

「・・・無理です」

 

目を瞑りながら、即答する甘寧。

 

「なら」

 

と俺に視線をむけてくる孫策さん。いやそんな目で見つめられても・・・。まだ会って間もない人に、物申せと?。

 

「・・・無理です」

 

なんとなく甘寧の真似をしてみる。

 

「貴様。今私の真似をしただろう?」

 

怒ったようにキッっと睨んでくる甘寧。どうやらお堅い人のようだ。視線に殺気がこもってるもの。

 

「いきなり思春ちゃんに、からんでいくとはおもしろい人ですねぇ~」

 

・・・・・・はっ!?い、いかん。つい視線が揺れる二つの山にいってしまう。

 

「一刀、今穏の胸見てたでしょ?」

 

「・・・見てないです」

 

もう一回チャレンジ精神で甘寧の真似をしてみる。

 

「・・・殺す」

 

いつの間に後ろに回られ、剣を喉元に突きつけられていた。

 

「これやめんか思春。せっかくの酒がまずくなるではないか」

 

「しかし、黄蓋殿ここまでバカにされては・・っ」

 

「北郷はただ、お前と話したかっただけじゃ。そうであろう?北郷」

 

「・・・そうです」

 

「ぐっ・・・貴様っ!」

 

「一刀、それぐらいでやめとかないと、本当に殺されちゃうわよ?」

 

孫策さんがケタケタと笑いながら、言ってくる。

 

「いやだってさ、話かけてもあんまり答えてくれないし、笑わないしさ。どうしたら表情を変えられるかなと考えていたら、こんな方法を思いついて」

 

「なぜ会ったばかりの貴様と話さなければならないんだ?それに笑わないのは私の勝手だ」

 

「そうかも知れないけど、こうして会ったのも何かの縁だしさ。少しぐらいは話してくれても・・・」

 

「無理だな」

 

「無理だな」

 

言うと思ったので、同時に言ってみる。

 

「・・・もう我慢の限界だ。貴様を殺す」

 

甘寧が赤い顔をして、剣を正面から向けてくる。

 

「あーあ。思春を怒らせちゃった。私しーらない」

 

「穏も知りませんからねぇ~」

 

「ワシも知らんが・・・、おもしろそうじゃのう。ごくっ・・・ごくっ」

 

なんとか鉄仮面みたいな表情を崩すことはできたが、命がピンチになってしまった。

 

さすがにやりすぎか・・・。反省。

 

「貴様が怪我人だろうともはや関係ない。・・・私を侮辱したこと後悔するがいい」

 

俺から少し間合いを取り、本気で構えてくる甘寧。

 

・・・あれ?なんか本気でやばくない?刀も持ってきてないし・・・生命の危機だ。

 

「どうするの、一刀?これは謝ったってダメかもね♪」

 

孫策さーーん!?そんな無邪気な笑顔をしないでください!?自分が悪いとわかっていても、

 

今の状況でその笑顔は見たくありませんっ!。

 

「・・・俺は・・・。俺はこんなところで死ぬわけにはいかないんだっ!」

 

いてて・・・。大声だすとやっぱりまだ痛い。

 

「おお。かっこいいわよ、一刀」

 

まだ痛む体をなんとか頑張りながら、立ち上がり無手で構える。

 

刀が無いのはちと苦しいが・・・・でも、そんな事言ってられない。

 

「すぅー・・・、はぁー・・・」

 

目を瞑りながら、集中していく。

 

「どうやら手加減は必要ないらしいな・・・では」

 

甘寧も武人の顔になり、集中していく。

 

「おおー。いやはや、これは本当におもしろくなってきたのう」

 

「・・・いいんですか?雪蓮さま。このまま戦わせちゃってぇ?」

 

「いいんじゃない?私も一刀の戦う姿、見てみたかったのよね」

 

孫策さんはあっけらかんと陸遜にかえしていた。

 

 

 

「・・・っ!」

 

剣を逆手持ちにした甘寧が俺の首目掛けて、剣を振ってくる。

 

「ふっ!」

 

その攻撃を手で剣の側面を当て、軌道を変え、外させる。

 

「なに・・・っ!?」

 

驚いた甘寧だったが、すぐに次の攻撃がやってきた。

 

「・・・・・っ!!」

 

「ふっ!ほっ!はっ!よっ!」

 

甘寧の武器はそんなに長くない剣なので、切り替えしが早く、連続攻撃がスムーズにやってくる。

 

「(なぜだ!?なぜ一発もあたらないんだ!?)」

 

俺はこんな体なので無駄な力は使わず、甘寧の攻撃をただ受け流すことだけに集中する。

 

「(右!左斜め下!上!。――――よし。ここまではいい感じで動けているな)」

 

甘寧も確かに強い。が、先日、恋と戦った所為か・・・?攻撃がそんなに早く見えない。

 

まぁ多分、目の慣れが元に戻ったらこの攻撃も速く見えるんだろうな。

 

そんなことを考えながら戦っていると、

 

「貴様!さっきから受け流してばかりで、なぜ攻撃してこないっ?」

 

「ん?・・・いや俺攻撃する気ないし」

 

「な、なん・・・だと!?。貴様、まだ私を侮辱するのかっ?」

 

「・・・勘違いするな。俺もこんな体だ。できるだけ体に負担かけないように戦っているだけで

別に甘寧を侮辱しているわけじゃない」

 

「(負担をかけないようにだとっ?ならば私の実力は手負いのこいつ以下ということなのか?・・・くそっ!こんなことでは、・・・蓮華さまを守ることさえできないじゃないか・・・。)」

 

・・・どうしたんだ急に?いきなり動きが止まった。なにか考え事をしているように見える。

 

「すぅー・・・はぁー・・・。・・・やめだ」

 

「・・・?。いきなりどうしたんだ?」

 

「どうやら貴様の方が実力は上のようだ。戦っていてそれがよくわかった。・・・礼をいう」

 

「ほんとにどうしたんだよ?さっきまで侮辱されたーって怒ってたはず・・・」

 

「確かに怒っていた。が、貴様と戦い、自分がまだまだ未熟であることがわかった。だからもういい」

 

・・・ん?今、少しだけ笑った・・・か?

 

「(こいつと戦えてよかった。実践で自分の未熟さに気づいていたら、その時には私は殺され、蓮華さまも守れなかっただろう)」

 

「よくわからないが、満足そうな顔してるしよかったよ」

 

「なっ・・・」

(こいつ・・・自分が戦っていた相手に、なんで笑顔で話しかけられるんだ?)

 

いやー。なんとかなるもんだな。今回は武器もなかったから、正直にいうと少し怖かったんだよね・・・。

 

って、もう結構な時間経ってるんじゃないのか?んー、そろそろ戻るか・・・。

 

「孫策さーん!俺、そろそろ帰ります!」

 

いつつ・・・。大声出すと痛い。少し離れていた孫策さんに伝える。

 

「えー!・・・しょうがないなぁ。まっ、そろそろ潮時かもね」

 

「・・・?」

 

俺は孫策さんが、俺とは違う方向を見てるのでそっちに視線を向けると、

 

「雪蓮ーーーー!」

 

周瑜さんがこっちに歩いてきていた。

 

「・・・まずいのぅ。冥琳じゃ・・・」

 

「一刀さーん、早く行ったほうがいいですよぉー。今日はとても楽しかったですぅ~」

 

「北郷!また来い!お前の戦いっぷりを見て気に入った、また酒を一緒に飲もう!」

 

二人がこちらに手を振っていたので、俺も二人に軽く手を振ってかえす。

 

そして、

 

「・・・北郷一刀。・・・またな」

 

「あ・・・初めて名前呼んでくれたね」

 

「名前を呼んだくらいでそんなうれしそうな顔をするなっ!?」

 

「うれしいんだから、しょうがないよ」

 

「フン・・・さっさと行け」

 

「おう」

 

俺はゆっくりと歩いて、自分の陣地へと帰っていく。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ふぅ。やっと自分の陣に戻ってこれた」

 

動いたせいで、疲れたのか。早く横になりたくて自分の天幕を目指す。

 

しばらく歩いていると、他の天幕とは違う天幕が見えてきた。

 

「やっと横になれ・・・・ん?」

 

その天幕をよく見ると、入り口付近には桃香達が居た。・・・やっと見つけたよ。

 

「おーい!みんなー!」

 

やっと見つけたことにうれしくなり、痛む体を無視し大声を上げる。

 

 

 

 

 

〝愛紗・星・鈴々・桃香・朱里・雛里・恋・ねね・一刀〟

 

 

 

「おーい!みんなー!」

 

「・・・!?ご、ご主人様!?」

 

関羽は一刀の姿を見て、安堵する。だが、さんざん心配させられた怒りがドンドンと沸いてきていた。

 

そして、劉備も関羽たちから話を聞いて心配していた一人。なので、あんな笑顔でこちらに向かって

きても、『人の気も知らないでー!』と怒りが沸いてきていた。

 

呂布と陳宮以外の他のみんなは、怒っていた。

 

「・・・ご主人様」

 

「おっ、恋じゃないか。・・・俺が言うのもなんだけど、怪我はもういいのか?」

 

「(コク)・・・大丈夫」

 

「・・・そっか。・・・よかった。てか、ご主人様って?」

 

「・・・?・・・ご主人様」

 

呂布は不思議そうに、一刀を指さす。

 

「ま、呼び方なんて好きなものでいっか・・・。」

 

「お前、恋殿になれなれしいのです!」

 

いつから居たのか、陳宮が俺と恋のあいだに立っていた。

 

「陳宮か。・・・見たところ仲間になってくれたみたいだね。これからよろしく」

 

そう言って一刀は手を差し出す。

 

「フン・・・一応よろしくしてやるのです」

 

陳宮はその手をしっかりとにぎった。

 

「ねね。真名」

 

「わ、わかっているのです、恋殿。・・・こほん。真名は音々音。呼ぶことを許してやるのです」

 

「ああ。・・・ありがとう。大切に呼ばせてもらうよ」

 

「・・・フン」

 

「(さてとこれでひと段落だな・・・。って、なんで二人以外、こっちをジト目で見てるの?)」

 

「(うー。ずるいよぉ、二人だけ。私もご主人様とお喋りしたいよぉ・・・。けど、ここで許しちゃったらいけないんだよね!)」

 

「桃香ー?」

 

「つーん・・・」

 

「えと・・・あ、愛紗ー?」

 

「・・・なんですか?ご主人様」

 

重い声で答える関羽。そして顔は笑顔だった。

 

「ひっ!?・・・な、なんでもありません」

 

「・・・主」

 

趙雲は一刀に耳打ちする。

 

「な、何?星」

 

「今回ばかりは、私も庇えませんからご覚悟めされよ」

 

「・・・やっぱり、勝手にいなくなったこと怒ってる?」

 

「当たり前に怒っているのだ!」

 

「いやでも、聞いてくれよみんなっ!。俺はみんなのことを探して・・・」

 

「例えそうだとしても、心配かけたことに変わりありませんから、ダメです」

 

「しゅ、朱里~」

 

「そ、そんな声をだしてもダメですから」

 

「雛里まで・・・」

 

「では、ご主人様。もういいですね?」

 

「う・・・・はい」

 

一刀は覚悟を決め、みんなに身をゆだねることにする。

 

「で、俺はこれからなにをされるのでしょうか?」

 

「はい。今晩は我々全員と一緒に同じ天幕で寝てもらいます」

 

「はい・・・・・・って、え?」

 

一刀は驚いたようにもう一度聞く。

 

「あの、それはいったいどうゆう・・・」

 

「皆で話しあった結果、ご主人様を一人にすると勝手にいなくなるということになりまして、ですから、皆で同じところへ寝ていれば、看病もでき一石二鳥というわけです。・・・反論は認めませんからね、ご主人様」

 

「・・・・はい」

 

「ご主人様と一緒・・・」

 

「鈴々、お兄ちゃんの隣がいいのだー」

 

「私もご主人様の隣がいいー」

 

「鈴々!?桃香さま!?これはあくまでご主人様の監視みたいなもので、そんな・・・」

 

「もういいよ、愛紗ちゃん。怒り続けてると疲れるだけだよ。それにご主人様はどこに行こうと、最後には絶対、私たちのところに戻ってきてくれるもん」

 

「桃香さま・・・」

 

「愛紗・・・今回は本当にすまなかった」

 

一刀は深く頭をさげる。

 

「・・・はぁ。わかりました。ですが・・・もう、勝手に居なくならないでください」

 

「・・・ああ」

 

一刀は関羽の少し震えている声に深く反省し頷く。

 

「それでは、寝る並び方ですけど・・・」

 

と諸葛亮が話を進める。

 

「(あ、あれ?なんでまだ一緒に寝ることになってるの?)」

 

「ご主人様・・・《キュ・・・》」

 

鳳統は軽く一刀の腰に掴み、上目で一刀をみる。

 

「(・・・ま、いっか。こんな日があっても)」

 

一刀はそう思い、流れにまかせることにした。

 

そしてガヤガヤと話合い、次の日の朝までみんなで同じ天幕で寝ることになった。

 

 

誰が一刀の隣で寝たのかは想像におまかせします―――――。

 

 

 

そして次の日、連合軍は出発し、ついに洛陽へとついたのだった。

 

 

 

 

 

 

 


 
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