「ようやく・・・ようやくたどり着きました・・・」
その少女は前方の町を見つめながら呟いた。
「長かった・・・本当に長かった・・・あの日から2年・・・」
あの日、自分の肉親を戦で亡くし、自身の主君もまた戦死した。
彼女はそれは自らの力不足だと感じた。
だから彼女は強くなった。
今度こそ自分の主君を守るため、そして自分の父の敵を討つために。
「それにしても・・・」
が、今はまず解決せねばならない問題がある。それは・・・
「おなか・・・すきました・・・・」
なにか食べ物をえることである。
「ん~!終わった~!」
執務を終えた俺は大きく伸びをする。
あの黄巾党との戦いから一ヵ月後、俺達は戦後処理等に勤しみながら束の間の平和を楽しんでいた。
まあ束の間であるのは間違いないだろう。なにしろこれから群雄割拠の時代に突入していくのはほぼ確定事項だし、それに黄巾の乱の後の大事件といえば・・・。
「霊帝の死と、袁紹の宦官大虐殺、そして反董卓連合、か・・・」
そう、霊帝の死と共におこる跡継ぎ問題と袁紹の行う宦官殲滅、そして董卓による専横である、が
「もしも前の世界の月と同じなら、ちょっと洛陽で暴政なんて想像つかないんだよな~」
前の外史の月は虫も殺せないような優しい女の子だった。
もしもこの外史でも同じような性格なら、とてもじゃないが洛陽で暴政なんて行うはずがない。でも、
「・・・まあ、その時がくるまで分からないか」
俺はそう考えてそれ以上悩むのをやめた。実際この世界の月が前の外史の月とまったく同じとは限らないし。そのときになったら雪蓮に頼んで洛陽に偵察でもさせてもらうか・・・。
それにしても反董卓連合か・・・。たしか史実では袁紹によって召集させられるんだけど・・・。前の世界でもそうだったけどこの世界も史実と同じところがあるのなら、可能性としてはありえそうだな・・・。
俺がそんな思考に浸っていると、突如ドアをノックする音が聞こえた。
「はい、どちらさまでしょう」
ノックの音に俺は返事する。まあノックなんてするのはおそらく
「ご主人様、少しよろしいでしょうか?」
「ああ、愛紗、どうぞ」
やっぱり愛紗だ。まあドアノックするの愛紗しかいないし。
雪蓮や祭さんはいきなり入ってくるし、そのほかの人達は外から声をかけてくる。
ちなみに愛紗とは俺が気絶から起きた後、仲直りをした。
本当に疲れたよ・・・。孫栄さんの言うとおり俺を気絶させたことを後悔しており、
俺が目を覚ますや否や俺に抱きついて泣き叫び、挙句の果てには切腹しようとしたからな~。急いで止めたけど。で、その一部始終を雪蓮達に見られていてからかわれたからまた切腹しようとして・・・。気絶から復活したばかりなのに一番俺が疲れさせられたよ・・・。
まあ夜に愛紗をたっぷりかわいがれたから別にいいんだけどね。愛紗も満足してたし。
まあそれはともかくとして、一体愛紗は何の用だろう?
「ご主人様、もう仕事を終えられておられたとは。さすがです」
「まあ簡単な内容だったしね、ところで愛紗は俺になにか用?まさか冥琳に頼まれて新しい仕事を持ってきたとか?」
「いえ、実は・・・その・・・」
愛紗は顔を赤らめながら途切れ途切れに言葉を紡ぎ出す。
?どうしたんだ、一体?
「あの・・・今日・・・この後一緒に町にでも行きませんか?」
ん?これってもしかしてデートのお誘い?
まあ仕事は全部片付けたし大丈夫だろ。後で冥琳に報告すればいいし。
それにしても
「珍しいな~、愛紗」
「なにがですか?」
「愛紗からデートに誘うの」
「!!」
俺の言葉に愛紗は再び顔を赤らめる。う~ん、かわいいな~。
「べ、別にいいではありませんか///わ、私だってたまにはご主人様を誘いたいのですよ///」
「ははっ、分かった分かった、じゃあさっそく行こうか」
「は、はい!!」
俺が愛紗にそううながすと、愛紗は顔を真っ赤にしながら返事をした。
そこまで緊張しなくてもいいのに・・・。
そして愛紗と一緒に部屋を出て廊下を進んでいると、書物を運んでいる冥琳に出会った。
「おや?北郷殿、関平と一緒にどちらに行かれるので?」
「ああ冥琳、ちょうど仕事が終わったからちょっと関平と町に行こうと思ってね」
その言葉を聞いた冥琳はどこか面白そうなものを見つけたような笑みを浮かべた。
「なるほど、関平と逢引か、いや、仕事を終わらせたのならば私はなにも言わない。
後で確認しておこう」
「なっ!?め、冥琳!!」
冥琳の言葉に愛紗は顔を赤くする。
ちなみに以前愛紗は雪蓮と冥琳に殿と付けていたのだが雪蓮と冥琳が普通に呼んでくれと言ったので今は普通に呼び捨てにしている。
「ふふ、では二人とも楽しんで来られよ、私はこの書類の処理があるので」
「あ~まあ、ありがとう冥琳」
今更だけど冥琳って結構人をからかうのが好きなのかな・・・。
前の世界のイメージとは違うな。
まあとりあえず許可も出たんだし行くか。
「それじゃあ行こうか、愛紗」
「ふえ・・?は、はいいいい!!」
俺の言葉に愛紗は顔を赤らめながら返事を返す。
ホント、緊張しなくてもいいのに・・・。まあいいけど。
そして俺は現在愛紗と町にいる。
今日も町は活気に溢れている。
まあこれも冥琳や六花さんや藍里の政務の手腕が優れているからだろう。
雪蓮は・・・、いつも政務さぼっているから関係ないか。
「賑わってるな~今日も」
「そうですね、やはり民のことも考えて政を行っているからでしょうね」
俺の言葉に愛紗は頷きながらそう答えた。
その顔はどこか嬉しげであった。
「なんか愛紗、嬉しそうだね」
「はい、やはり民がこのように平和に暮らしているのをみると、私も嬉しくなってきます」
「ああ、俺もそう思うよ」
愛紗の言葉に、俺も笑いながらそう返した。
この町の光景を見ていると、俺が以前王として幽州を治めていたころを思い出す。
あのときの俺は、何も力がなかった。
愛紗達のような武力もなければ、朱里のような智もない。
あるのは天の御使いという肩書きだけだった。
この肩書きのせいで、多くの人々が戦に向かい、死んでいった。
それでも、守りきれたものもあった。
大切な仲間達の笑顔。俺を慕ってくれる人々の笑顔。
その笑顔に、俺はいつも励まされ、勇気をもらってきたんだ。
その気持ちは、きっと愛紗も一緒だろう。
それは今、この時も同じだ。
だから俺は、愛紗と共に、雪蓮達を助けてこの国を守っていこう、そう改めて決意した。
「愛紗」
「はい、ご主人様」
俺が愛紗に声をかけると、愛紗はこっちを振り向く。
「この人達の笑顔、守っていこうな」
「もちろんです」
俺の言葉に愛紗は笑顔でそう答えた。
その笑顔は本当に綺麗で、思わず見惚れてしまった。
「あの・・・すみません・・」
と、突然声がしたので横を向いた。
そこには一人の女の子が立っていた。
その子は金髪で翡翠のような深い緑色の瞳をしたまるでフランス人形のような綺麗な顔をしている。
背は、大体明命と同じくらいだろうか。
一見するとどこかの貴族のお嬢様に間違えそうだ。
が、その背中には長い長剣が差している。それに身なりも結構みすぼらしい。
「?なにかな?」
その子が俺に何か聞きたそうな顔をしていたので俺は彼女にそう言って促した。
「あの、孫策様のお屋敷って、どちらにありましたっけ?」
女の子は俺にそう尋ねてくる。雪蓮の屋敷?雪蓮の知り合いか?
刺客っぽくないし・・・。でもかなり腕は立ちそうだな・・・。
「ああ、この通りをまっすぐいけば着くけど・・」
「そうですか!ありがとうございます!」
「あ・・・ちょ・・・」
俺の言葉を聴いたその子は笑顔で俺に礼をいうやいなや、すぐに駆け出して行ってしまった。
「行っちゃったな、愛紗」
「ええ、しかしあの娘、相当できますね」
「ああ、俺もそうおも・・「ドサッ」・・・え?」
俺がしゃべっていると、突然そのこは仰向けにぶっ倒れた。
「!愛紗!」
「はい!ご主人様!」
俺は愛紗と共に女の子の所に向かった。
女の子を抱き起こすと、そのこは苦しそうに顔をしかめていた。
「ちょっ、君!大丈夫!?」
「大丈夫か!?すぐに医者を呼ぶからな!」
俺と愛紗が声をかけると、女の子はなにやらぼそぼそと呟いた。
「ん?何?何か話したいことがあるの?」
俺はそう女の子に話しかけると女の子の口に耳を寄せた。
すると女の子のぼそぼそとした声が聞こえてきた。
「・・・お・・・」
「お?」
「・・・・お腹が・・・すきました・・・」
「はい?」
女の子の言葉に俺は一瞬呆然とした。
あとがき
はい、というわけで久しぶりの更新であります~。
今回はオリキャラの登場というわけで、まあ気に入っていただけるかどうか。
まあとにかく励みになりますのでコメントをどしどし書いてください!お願いします!
ではまたいつか~。
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久々の更新になります~!!
いや~大学のほうが忙しくて申し訳ありません~!!
とりあえず新展開・・・かもしれません。
どうぞお楽しみを。