寝台の上に寝かされている一刀、それを心配そうに見下ろす魏の面々。
「ん・・・・んん・・・・・・ん?どうしてここに・・・」
「あら、目が覚めたみたいね」
「みんなそろってどうしたんだ?」
「なんでもないわ、それじゃあここで解散ね」
その言葉を聞くと全員が部屋から出ていく、若干名が少し残念な顔をしていたのが気になったが、聞く暇もなく出て行った。
「あー何があったんだ?」
一人、つぶやいていると華陀が入ってきた。
「目が覚めたいみたいでよかったな」
「何があったんだ?」
「・・・・一刀、お前は幼児退行してたんだ」
「は?幼児退行?」
「そうだ、それで春蘭に激しく引き廻されたから、その衝撃で戻ったんだろうな」
「ははは・・・・・それ、嘘じゃないよね?」
「勿論、五斗米道(ごっどヴぇいどー)の名にかけて」
さすがに精神的に効いたのかがっくりと肩を落とす。
「・・・・・ん?」
何かを思い出したように考え出す。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ど、どうした」
「いや、今日は用があったのを忘れてた!」
「そ、そうか、頑張れ」
「それじゃあ、またそのうち!」
非常に焦ったように部屋を飛び出し、そのまま市の方へ降りていく。
「完全に忘れかけてた・・・・今日はホワイトデーだ」
もしも、忘れていたことが露見した場合、華琳に何をされるかわかったものではない。
「まだなんとかなるか・・・・?」
先ほどの怖がっていた一刀の印象を持っていた門兵の横をすさまじいスピードで通過した一刀の姿を見て目を丸くしていた。
「さっきの御遣い様だったよな?」
「あぁ、そう見えたが・・・・」
一日で一刀の印象がこうもクルクルと変わってしまったので、門兵の頭の中は大混乱していた。
「おやっさん!大至急あれの準備を!」
「大至急って言われてもな・・・・」
「おねがいします!」
深々と頭を下げられ、困る親父。
「御遣いさま、頭をあげてくだせえ・・・・どれだけ時間がかかるかわからねえが、やってみましょう」
「本当ですか!ありがとうございます!」
「凪、一刀は知らないかしら?」
「隊長ですか?いえ、見ていませんが」
「そう、それならいいわ」
一刀が部屋を飛び出して行って、時間が少々経過したところで様子を見に来た華琳が目にしたのはもぬけの空になった部屋であった。
「まったく、どこに行ったのかしら・・・・べ、別に一刀が心配なわけじゃないんだから」
独り言でつぶやくが、聞いてくれる相手がいない言葉は風に流されていった。
「とりあえず、城の中を探してみましょう」
少し歩いていると、桂花が笑顔で近づいてきた。
「華琳様、どうかなされたのですか?」
「あら、あなたは一刀を知らないかしら?」
「あんな精液人間のことなんて知りません」
「そう、それならいいわ」
用はすんだといわんばかりにその場を後にする。
「か、華琳様・・・・・」
「私より先に一刀を見つけて、私の元へ連れてきたらご褒美をあげるわ」
「はい!おまかせください!」
張り切って華琳とは逆方向に走って行ったが、すぐに躓いて転倒していた。
「大丈夫かしら?」
一方の市の一刀は。
「なんとか、間に合った、親父さんありがとう」
「いえ、御遣い様の手伝いがあってこそですよ」
「それでも、俺一人じゃできないことだから」
「そうですか、そう言われるとうれしいものですね」
「ここに代金は置いていくから」
たわわに膨らんだ袋を机の上に置いていく。
「こんなにもらえませんって」
「いや、もらってくれ」
押し問答が少し続いたが、結局は一刀に押し切られた形で店主は袋を受け取った。
「はぁ、はぁ・・・・」
「あら、一刀どこに行ってたのかしら?」
腕を組み、門の前に仁王立ちしていた華琳から声をかけてくる。
「ちょっと市に用があって」
「それならいいわ、消えてしまったのかと思ったじゃない」
「ごめん・・・・・」
言葉と同時に華琳を抱き寄せる。
「それと、これを・・・・」
華琳の首にかけたのは黄色を基調として作られた首飾りであった。
「これは?」
「バレンタインのお返し」
「ありがとう、大事にするわ」
笑顔は今まで見たなかで一番いい笑顔であった。
「それじゃあ、みんなに渡してくる」
その場での笑顔は一瞬にして憤怒の表情に変わった。
「かぁぁぁずぅぅとぉっぉお!」
配り終えて部屋に戻ると、華琳が部屋の真ん中で仁王立ちしていた。
「あら、遅かったわね」
「か、かかか、華琳」
「今日は寝かさないわよ」
その日の夜に一刀の叫びと華琳の嬌声が聞こえていたという。
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だいぶ予定より遅くなってしまいました、次は三国争乱の更新になると思います・・・・・確証はないですが