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「あら、流琉・・・・・」
「華琳様、先にクッキーを渡しておきましたよ」
先手を取ったことで、勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
2人の間で激しい火花が飛び散る。
平静を保っているように見えるが、コメカミには青筋が浮かんでいる。
「ねーちっちゃいお姉ちゃん、もうないの?」
「ごめんね、もうないの・・・・」
「えーまだ食べたいー!」
手足をバタバタと激しく動かし、駄々をこね始める非常にシュールな光景である。
「一刀、これを食べてみない?」
差し出されたのは、華琳が考案しようやく完成させた菓子であった。
「わ~」
一目見ただけでキラキラと目を輝かせ、食べたくてうずうずしている。
「はい、あ~ん」
匙サイズの蓮華ですくい、一刀に差し出す。
それを何のためらいもなく、齧り付く。
「ん~おいしー!もっと!あ~ん」
もっとくれと、口をあけることで華琳に督促する。
「あらあら、はい」
餌付けのように食べさせ、流琉に勝ち誇ったような笑みを返す。
「あ~」
「はい、おいしい?」
「うん!とってもおいしい」
その笑みはその場に居たものを引き付ける、とびっきりの物であった。
「一刀!」「一刀君!」
そのタイミングを見計らったように、他の者が雪崩れ込んでくる。
「お前達!いい加減にしないか!」
「!」
声を荒げたのは、意外にも秋蘭であった。
「一刀が怖がっているぞ」
全員の目に映ったのは、秋蘭の裾を握り震えている一刀の姿であった。
その光景は全員の保護欲を駆り立てるものであった。
「全く・・・・・なぁ、一刀」
頭を撫でながら落ち着くように促している。
「一刀、ごめんね」
あやまる華琳を見て、何を思ったのか華琳に抱きついた。
「華琳お姉ちゃんはなんでそんなに悲しい顔をしてるの?」
「え?そ、そんなことはないわよ」
取り繕っても、子供の目は欺くことができないのか、黙り込んでしまった。
「ねえ、どうしたの?」
他の面々の顔を見渡すが、皆が皆目線をそらす。
「・・・・・・」
全員が答えないことに腹を立てたのか、一刀は立ち上がり何処かに走っていく。
「一刀!」
「一刀君!」
全員の判断が遅れ、すでに一刀は遠くへ行っている。
「あなた達、追いなさい!捕まえたものはそのまま一刀と一緒に居ていいわ!」
華琳の発言により、全員の目の色が変わる。
「どけどけ!」
「どきや!」
「どきなさいよ!」
全員が先を争いながら、我先にと駆け出す。
「私も行こうかしら」
「華琳様!」
「春蘭、一刀を捕まえることができたら今晩可愛がってあげるわ」
その言葉で、春蘭に火がついたのかものすごい勢いで走りだした。
「あぁ、やっぱり姉者は可愛いな」
「あら、秋蘭は行かなくていいのかしら?」
「私は十分楽しませていただいたので」
「そう、それならいいわ」
「強いて言えば、もうすこし一緒に居ることが出来ればよかったとは、思いますが」
少し、頬を染めながら言葉を紡ぐ。
「そう、そろそろ決着がつきそうね」
先の方で数人が空を舞っている、どうやら春蘭に吹き飛ばされたらしい。
「見つけたぁ・・・・」
鋭い隻眼に睨みつけられて、一刀は立ちすくんだ。
「ほら、捕まえた」
「ひっ!」
先ほどの印象が残っていたのか、腕の中で暴れ始める。
「こら、おとなしくしないか」
「ヤダヤダ!秋蘭お姉ちゃん助けて!」
「ん?秋蘭を知ってるのか」
「え?」
「秋蘭は私の妹だ」
「秋蘭お姉ちゃんの、お姉ちゃん?」
肯定と言わんばかりに頷く。
「暴れてごめんなさい」
自分の間違いと理解したのか、すぐに謝った。
「よし、行こう」
手を握って走りだしたが、春蘭の頭の中は華琳からのご褒美でいっぱいのため本気で走りだした。
勿論のこと、そのスピードについていけるわけもなく、引きずられる格好となった。
「春蘭、あなた・・・・・」
褒めてくれと言わんばかりに胸をそらしている。
その手を握っている一刀はボロ雑巾になってしまっている。
「あ・・・・・・」
戦火は広がり続け、ついに帝都は炎上している、火を止めることができるものの帰還までもうわずかである。
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明日はホワイトデーですが、明日は先輩の結婚式なので更新できないので、15日に更新します。