作られた外史、外史と言えど基本の流れは正史と同じはずだったが、この外史は何か少し違っていた。
その始まりは嵐のように突然のことであった。
仮面ライダー×真・恋姫†無双 蜀編 序章
「ほらぁ~、二人とも早く早く~!」
「お待ち下さい、桃香様。お一人で先行されるのは危険です」
「そうなのだ。こんなお日様一杯のお昼に、流星が落ちてくるなんて、どう考えてもおかしいのだ」
急ぐ桃香という少女をその桃香よりも年下な女の子と、少し年上そうな女の子が止めようとする。
「そうかなぁ~?…関雲長と張翼徳っていう、すっごい女の子たちがそういうなら、そうなのかもだけど…」
「お姉ちゃん、鈴々達を信じるのだ」
「そうです。劉玄徳ともあろうお方が、真っ昼間から妖の類に襲われたとあっては、名折れというだけではすみません」
「うーん……じゃあさ、皆で一緒に行けば怖くないでしょ? だから早くいこ♪」
「はぁ~~~、分かってないのだぁ~~~」
三人は流星が落ちたとされる場所に急いだ。
「流星が落ちたのって…この辺りだよね?」
三人が流星が落ちた辺りを見てみると一人の青年が倒れていた。
「あやー、変なのがいるよ」
「男の人だね。私と同じぐらいの歳かなぁ?」
「二人とも離れて。まだこの者が何者か分かっていないのですから」
劉備と張飛が倒れている青年から離れるように関羽が注意する。
「でも悪い感じはしないのだ」
「ねー。気持ちよさそうに寝てるし。見るからに悪者ーって感じはしないよ? 愛紗ちゃん」
「人を見た目で判断するのは危険です。特に乱世の兆しが見え始めた昨今、このようなところで寝ている輩を…」
「うん……」
青年がうなる。
「っ!? 桃香様下がって!」
「え…ってわぁ!」
「おー、このお兄ちゃん、起きそうだよー。へへー、つんつん……」
「こら、鈴々」
張飛が青年の背中をつつく。
すると青年は寝返りを打ってうつ伏せから仰向けになる。
「っ!? 脅かしおって…」
「………」
「………」
劉備と張飛が関羽を見てにやける。
「な、何ですか二人とも。私の顔に何かついているのですか」
「あー……愛紗ちゃん、もしかして怖いのかな?」
「……そんなこと、あるわけがありません!」
「ふーん」
「な、なんですかその、やっぱり怖いんだー、とでも言いたげな笑いは! 我が名は関羽! 幽州の青龍刀と呼ばれたこの私が、このような些細な事で怖がるなど……」
「アッーーーーーーーーー!」
「ひっ!? な、なんだ鈴々! どうしたというのだ!?」
「お兄ちゃんが目を開けそうなのだ」
「なに!?」
「あはは、やっぱり怖いんだ?」
「そ、そんな事はありませんよ……?」
「何かうるさいな……」
青年が目を開けて、立ち上がる。
すると青年の前には女の子三人が目の前にいた。
「……」
「……」
「……」
「……」
四人は棒立ちになって黙り込む。その沈黙を先に破ったのは青年である。
「どこじゃ、ここはーーーーーーーーーー!?」
青年は頭を抱えて叫ぶ!
「あ、あのぉ~……」
「?」
「えーっと……だ、大丈夫ですかぁ?」
「たぶん大丈夫だ」
「たぶんって……」
「それよりもここはどこだ?」
「へっ?」
「全速力で走ってたら何かにぶつかったようでな、気付くとここだ。だからここはどこだ?」
「………」
「それに三人とも変な格好してるけど、コスプレイベント会場か何か?」
「こすぷれ? いべんと?」
「(意味が通じてないな…)もう一度聞くけど、ここはどこだ?」
「幽州啄群。五台山の麓だ」
「ゆうしゅう、たくぐんね……。全然分からん」
青年は頭をかく。
「それで君たちはどうしてそんな格好してるの?」
「お兄ちゃんこそ、変なかっこなのだ。何かキラキラしてるー」
「ホントだねー。太陽の光を浴びてキラキラしてる。…上等な絹を使ってるのかなー?」
「普通に学校のポリエステル製だ」
「ぽーりーえすーてる?」
(意味が通じてない?)
「それに、何だがさっきから、私の知らない言葉ばかりー。お兄さん、一体何者かな?」
「俺は北郷一刀。聖フランチェスカ学園の二年生だ」
その言葉でも三人は名前以外はよく分かってない顔だった。
「で、君たち何者?」
「私は劉備。字は玄徳!」
「鈴々は張飛なのだ!」
「関雲長とは私のことだ」
「…………は?」
一刀は三国志に出てくる人物の名前だと聞いて少し戸惑う。
(………ってことは過去+異世界か。だいたいわかった)
「質問していい?」
劉備が一刀に尋ねる。
「何?」
「お兄さんってどこから来たの? どうしてこんなところで寝ていたの?」
「二つとも分からん」
「うーん……じゃあね、お兄さん、どこの出身?」
「日本だ」
「にほん?」
「……(ま、これが当たり前の答えか…。この時代だと倭になるはずだ。だが俺はこの時代の人間じゃないからそう答えたくはない)」
「ねぇねぇお兄さん。お兄さんってもしかしてこの国の事、何も知らないの?」
「たぶん知らん。俺はこの時代の人間じゃないからな」
「?」
「つまり?」
「俺は過去の世界に来てるってことだ」
「やっぱり……。思ったとおりだよ、愛紗ちゃん! 鈴々ちゃん!」
劉備がなにやらはしゃぐ。
「この国の事を全然知らないし、私達の知らない言葉を使ってるし、それにそれに、何と言っても服が変!」
「うるせえ」
「この人、きっと天の御遣いだよ! この乱世の大陸を平和にするために舞い降りた、愛の天使様なんだよきっと!」
「管輅が言っていた天の御遣い。…あれはエセ占い師の戯言では?」
「うんうん。鈴々もそう思うのだ」
「でも、管輅ちゃん言ってたよ? 東方より飛来する流星は、乱世を治める使者の乗り物だーって」
「ふむ…確かに、その占いからすると、このお方が天の御遣いという事になりますが…」
(乗り物ね……うん?)
一刀が思わずポケットに手を入れるとその何も入っていないはずのポケットに何か入っている感覚を感じる。
(これは…?)
一刀が見ずにその形を触ってみるとなにやら定期券のような四角いものの形だった。
「でも、このお兄ちゃん、何だかぜーんぜん頼りなさそうなのだ」
「うむ。天の御遣いというわりには、英雄たる雰囲気があまり感じられないな」
「…そうでもないかも…」
「え?」
「ちょっと、確認……」
一刀がそのあるはずのないポケットの中身を取り出すと、それは一刀の想像通り定期券入れ。
しかもそれはただの定期入れではない。ライダーパスと言う「仮面ライダー電王」に変身するためのものである。
「なんですかそれは?」
「まあ、見てな」
一刀が構えをすると突然左手にデンオウベルトが現れる。
「にゃっ!?」
「な、ななな」
一刀はお構いなく、ベルトをし、赤いボタンを押す。するとベルトから音が鳴り響く。
「音が聞こえるのだ!?」
「変身」
一刀がパスをベルトの中心を通り過ぎらせるようにする。
「ソードフォーム」
ベルトからまた別の音声がなり、その音声と共に一刀の姿は変わり、仮面ライダー電王ソードフォームと変化した。
「俺、参上!」
一刀がポーズをとる。別にイマジンはついていないがやっておかないといけないと思ってやった。
「なななななな……」
関羽は一刀の突然の変身を見て気絶してしまった。
「愛紗ちゃん!?」
「おおーい、愛紗ーーーーー!?」
「大丈夫かーーーーーー?」
関羽は目を覚ましそうになかった。
「で、これを見て…どう思う?」
「すごく……カッコイイのだ」
「うん、すごく強そう」
「ありがとう」
一刀がベルトを外すとベルトは消えて、一刀の姿が元に戻る。
「まあ、とりあえずはこの子だな」
「う~ん」
皆、倒れてしまった関羽を見る。
関羽をつれて三人は近くの街に行く事にし、着いてしばらくして関羽の意識が戻った。
「それでね、北郷様」
「うん?」
「さっきも説明したとおり、私達は弱い人達が傷つき、無念を抱いて倒れる事に我慢が出来なくなって、少しでも力になれるならって、そう思って今まで旅を続けていたの。
でも三人だけじゃもう、何の力にもなれない。そんな時代になってきてる」
「官ぴの横行、太守の暴政、そして弱い人間が群れをなし、更に弱い人間を叩く。そういった負の連鎖が強大なうねりを帯びて、この大陸を覆っている」
(人の性というか、エゴというか……)
「三人じゃ、もう何も出来なくなってるのだ……」
「でも、そんな事で挫けたくない。無力な私達にだって、何かできる事はあるはず。…だから、北郷様!」
「だいたいわかった。力を貸してくれだろ? そうだったらいいぜ」
「ホントですか!?」
「ああ、さっき見せた電王だがな……」
「?」
「あれは『仮面ライダー』。仮面ライダーは正義と平和と自由のために戦うのが使命。だから協力するぜ。
(俺自身が時間のダイヤ乱してる気がするが……)」
「ありがとうございます! ところでお金は……」
「は? お前ら無いのか?」
そう言うと三人がうなずく。
「仕方ない……」
一刀がベルトをこっそりして青いボタンを押して、すぐにベルトを外してお店の女将を呼ぶ。
「なんだい?」
「すみません、僕達、お金ないのです」
「はぁあ!?」
「ですが、これは意図的にやったのではないのです。
お金を持っていたのですが、どこかに落としたのか、誰かに盗られてしまったのです。
本当に申し訳ないのですが、お金は後日きちんと払いますので、今日のところは勘弁してもらえませんか?」
一刀が口説くように女将に言うと先ほどまで怒り爆発に近い状態の女将が一刀にメロメロな感じになって、とうとう一刀達の無銭飲食を許してしまった。
「……」
「な、何と言う女たらし…」
「仕方ないでしょ。あの状況で脱する方法はあれしか思いつかなかったんだから…」
「でも、お兄ちゃん。さっきまであんな性格じゃなかったのだ」
「ああ、デンオウベルトのおかげかな」
「デンオウベルトってさっき変身するときに見せたあれ?」
「そうそう。あれ四つほど何か色が付いてて押すのがあっただろ? あれを押しておくと変身してなくても
しばらくはその色に合わせた性格になるみたいなんだ」
「じゃあ、最初は赤でさっきは何色だったのだ?」
「さっきは青。他に黄色と紫があるけど、また今度な」
四人が和んでいると先ほどの女将が、お酒を持ってきた。何やら先ほどまでの四人の話を聞いていたようだった。
三人は一刀を主人と決め、四人は劉備の知り合い、公孫賛のところに行くことを決めるがその前に桃園に立ち寄った。
「これが桃園かーすごいねー♪」
「美しい…まさに桃園と言う名にふさわしい美しさです」
四人は盃にお酒を注ぐ。
「そうそうお兄ちゃん」
「なんだ?」
「お兄ちゃんは鈴々達のご主人様になったんだからちゃんと真名で呼んで欲しいのだ!」
「真名?」
「我らが持つ、本当の名前です。家族や親しきものにしか呼ぶことを許さない、神聖なる名」
「その名を持つ人の本質を包み込んだ言葉なの。だから親しい人以外は、例え知っていても口に出してはいけない本当の名前」
「だけどお兄ちゃんになら呼んで欲しいのだ!」
(本当の名前…、ってことは劉備とかは一応の名前だが、真名の前では偽名に近いな)
「我が真名は愛紗」
「鈴々は鈴々!」
「私は桃香!」
「愛紗、鈴々、桃香……。何をすれば良いのかよく分からないが、俺はお前たちの力になる。宜しくな」
「じゃあ、結盟だね!」
そして四人で誓いを果たす。
「我ら四人っ!」
「姓は違えども、姉妹の契りを結びしからは!」
「心を同じくして助け合い、皆で力なき人々を救うのだ!」
「同年、同月、同日に生まれる事を得ずとも!」
「願わくば同年、同月、同日に死せんことを!」
「かん……ぱい!」
こうして仮面ライダー電王の力を得た、一刀と劉備三姉妹の物語は火蓋を切った。
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基本的には真・恋姫†無双の蜀ルートの話ですが、もしも北郷一刀が仮面ライダーの力を手に入れたらという妄想から生まれました。
そして流れも基本的に原作のままですが、仮面ライダーの力があるためセリフや一刀の態度が違うところや話そのものが大きく違うところも出てきたりします。
そのためそんなの嫌だという方は閲覧をご遠慮願います。
先に言いますが一刀が手に入れる仮面ライダーの力は全部で3つです。何が出るかはお楽しみ。