官渡の戦いからしばらくたったある日。玉座の間では春蘭、秋蘭、桂花が深刻そうな顔をしていた。
「お前達、どうしたん?」
「おう、北郷。貴様も来い」
「ああ、でどうした?」
「うむ。これなのだが……」
秋蘭が一通の手紙を渡す。
「読めるものなら読んでみなさい」
一刀が桂花の挑発に乗りながら、読むが読めなかった。
「これは何語だ?」
「北郷でも無理か…。何でも、地和語とか言うらしくてな…」
(あんの、あほが……)
一刀は心の中でかなり怒った。
一刀が怒りで震えている時に、季衣と流琉とねねがやって来た。
「あれー? 皆集まってどうしたんですか? 春蘭様ー」
「おお、お前たちか」
「あれ? これ誰が書いたんです? 春蘭様ですか? ちょっと意外……」
「こら。いくら私でも、ここまで意味の通らん文章を書くわけがなかろう。季衣とはいえ、許せる事と許せんことがあるぞ?」
「え? 意味ならちゃんと……ね、季衣?」
流琉が季衣に尋ねると季衣はその手紙を読んでみた。
「うん。『やっほー。地和だぴょーん。みんなげんきー? 地和はとってもとってもとーっても元気だよー』」
その手紙をすらすら読んだ季衣に絶句する、一刀、春蘭、秋蘭、桂花。
「季衣、お前、それが読めるのか!?」
「え? 読めますけど……地和語でしょ?」
「それにしても上手ですな。この辺りの崩し方とか、ホントに地和が書いたみたいですな。
普通、ここまで再現できないはずなのですが……」
ねねが文字に感心していると秋蘭が本人の直筆だと説明し、続きを読んで欲しいという。
「えっと、『実は、次回のぎゃくてぃか☆大☆歌謡天国に、華琳様たちをご招待しちゃいます! 一番の特等席を空けとくから、みんなで来てねー! 地和より。はぁと』」
どうやら招待状だったようであり、その後すぐに華琳が来てこの招待状を説明して、ライブ当日になり、全員武装状態でライブ会場に向かった。
そしてライブ開始前にファンクラブ会長が観客と一緒に盛り上がりを見せる。
「ほわぁああああああああああああ!!」
「ほわぁああああああああああああ!!」
会長と観客が盛り上がり、季衣と流琉も盛り上がる。華琳達はドン引きだった。
「………何?」
「あー。黄巾党の……三姉妹の応援団が最初にやる、応援の掛け声の練習だよ」
「と……鬨の声のようなものか」
「それになるな」
「そ、そう……」
「どうする? 帰る?」
「ば、バカにするつもり? 興行主として招かれた以上、途中で逃げたとあっては言い笑い者だわ!」
華琳の高い誇りのため、華琳は残る。
そして張三姉妹が現れ、それだけでも観客たちは盛り上がる。
その勢いの強さに桂花は倒れてしまった。
「むぅ……。しっかりしろ、桂花。死ぬな。傷は浅いぞ」
「死ぬなーーーーーーー、ケイブァーーーーーーーーーー!!」
一刀が桂花を抱えて叫んだ!
「戦か! これは、戦なのか!」
「人によってはこれは戦だ。いや、戦以上だ」
「華琳様、この春蘭がついておりますゆえ、ご安心を! ご安心をーっ!」
「ま、まずはあなたが落ち着きなさい。春蘭」
そんな皆とは打って変わって観客と一緒になってノリノリな季衣と流琉。
「ほわーっ! ほわーっ!」
「ほ、ほわー!」
そしてようやく一曲目が始まり、観客のテンションはさらに上がる。
「これが……舞台……」
「大丈夫か? 華琳」
「え、ええ……。けど、何というか……ちょっと怖いわね」
「華琳……」
華琳がいつの間にか一刀の手を握っていた。
「理解できないものは怖いよな。何であれ」
一刀が華琳の手を握り返す。
「一刀………」
「俺が居ててやる…。俺が側に居てやるから……」
「ねえねえ! 華琳様も一緒にやりましょうよ! ほわーーーーーーーーっ!」
季衣がノリノリで華琳を誘う。
「え、ええ……っ? ……やるの?」
「楽しいですよ。ほわー!」
季衣と流琉は楽しむが、華琳は戸惑う。
「一刀、やらないと……ダメ?」
「これも経験だと思って、やってみたら?」
「他人事だと思って……! なら、あなたもやりなさいよ。自分でろくにやらないものを人に押し付けるなんて……」
「何だ、やってよかったのか?」
「え?」
一刀の答えに華琳は疑問を持つ。
「華琳がいたから遠慮してたんだが、やっていいんならやるけど、華琳もやれよ」
「……え、ええ。いいわ。やってみなさい?」
天和達が次の曲を聞きたいか観客の意見を聞き、答えは当然「聞きたい」。
そして地和が歌う事を宣言すると観客は一斉に歓喜を上げる。そして一刀もそれに乗る。
「ほわぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!! ほわぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!! ほぁぁぁぁああああああああああああああああああああああ!!!!」
いつもブレイドで叫んでる叫びよりも凄い叫びが一刀の周りに響く。
「おおー、兄ちゃん、すげー!」
「気合入ってますね」
季衣と流琉も一刀の叫びに驚く。
「こんな感じだ」
「…………」
華琳は完全にドン引きだった。
「俺がやったら、やる約束だよな?」
「あ、当たり前でしょうっ! ほ……」
「ほわーっ!」
「ほわー!」
季衣と流琉に後押しされる華琳。
「ほ、ほわー。………これでいい?」
「まだまだだね」
「あなたにダメ出しされるなんて、ものすごい屈辱だわ。ほ、ほわーーっ!」
「少しはよくなったな」
「北郷っ! 貴様、華琳様に何と言うことをっ!」
「本人は楽しそうにやってるけど……」
「そ……そうなのですか? 華琳様!」
「ま……まあ、ね……」
当の本人はかなり強がってた。
そこに舞台にいる地和が文句を言う。
「ほらーっ。そこ、盛り上がってないねー! もっと気合入れていこうよーっ!」
「うん……俺達か……」
地和が指差すエリアの観客に盛り上げを求めるが、当然狙いは一刀達。
一刀と季衣と流琉しか叫ばないので力が足りない。
その事に観客が反応しだしてしまった。
「盛り上がってない……」
「こいつら、特等席にいるのに……」
「盛り上がってないなんて……」
「今回の特等席、本当なら俺達に回ってくるはずだったのに……」
「盛り上がってないなんて………!」
近くにいる観客の敵意ある目が華琳達を指す。
「ち、ちょっと……一刀……?」
華琳が怯えていた。こんなに怯えている華琳を一刀は見た事がなかった。
「さすがにまずいか……」
一刀がブレイバックルにカードを入れてベルトにする。
(華琳を怯えさせてるからな……、悪いけど……)
「貴様らぁぁぁぁぁああぁぁぁああああ!」
春蘭の怒りの叫びが会場全体に鳴り響く。
「烏合の集まりだと思っていればいい気になりおって! 下がれ下がれ下郎ども!」
「このお方をどなたと心得る!」
その春蘭と秋蘭の言ったフレーズに一刀は条件反射的に言う。
「畏れ多くも先の副将軍……」
「副将軍って誰よ」
「この状況じゃ、華琳しかいないでしょ」
「空気読めよ、北郷」
「十分読んだ」
「お前は少し黙ってろ」
春蘭と秋蘭、華琳にぼろくそ言われてしまった一刀。
「このお方をどなたと心得る! 許昌太守、曹孟徳さまにあらせられるぞ!」
「頭が高い! 控えおろう!」
「ははぁぁぁぁ」
一刀が華琳に向かって土下座した。
「だから何でそんなことするの?」
「いや、俺の世界ではそんな言葉言われたら条件反射的にこれやらないとな……」
「なら、さっきの副将軍と言ったのも条件反射か?」
「その通り」
「はぁ……、天の世界とは一体どんなものなのだろうか……」
三人が少し呆れているとその三人のかっこよさに見惚れる季衣、流琉、いつの間にか起きた桂花。
しかし地和や観客は止まらない。
「ええい、皆の者、やれ、やれ、やれーーーーーーい! やってしまえーーーーーーーーっ!」
地和がどこかの悪代官みたいに言うと観客もそれに乗る。
「大黄巾党の力を見せてやるぜーーーーーーー!」
「お前達より、あいつらのノリいいな。あっちの味方して良い?」
「ダメよ」
一刀が地和達に味方しようとするのを止める華琳。
「くそっ、本当に来やがった。こいつらっ!」
「ふん。この曹孟徳に楯突こうなど、何という身の程知らず。春蘭、秋蘭、構わないから、やーーーーっておしまいっ!」
「「はっ!」」
「アラホラ……」
「何をふざけているの? 一刀」
華琳がご立腹の様子だが、一刀は真剣に答える。
「やーーーーっておしまいって言われたアラホラサッサーで返すのが礼儀なんだよ! 変身!」
「ターンアップ」
一刀が観客の方に向かってターンアップハンドルを引いてリーダーを裏返し、リーダーからオリハルコンエレメントが現れ、
観客を数十名吹き飛ばして、一刀はオリハルコンエレメントに向かって走り、ブレイドに変身した。
「ほわあああああああああ! ほわああああああああああ!!」
「ウェェェェェェェェェェエエエエエエエェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエイ!!」
こうして仮面ライダーブレイドと魏の将軍達VS大黄巾党の戦いが勃発した。
季衣と流琉だけでなく、春蘭、秋蘭まで叫び声が「ほわぁぁぁああああああ!」になってた。
一刀はずっと「ウェエエエエエエエエイ!」とブレイドの叫び声を忘れなかった。
戦って少し経ってから外から、霞や凪や恋達が到着し、さらに場は乱れる。
「ねね、来たか……。いくぞ!」
「はいです!」
ブレイドとねねがそれぞれの位置で高くジャンプする。
「ライダー……」
「ちんきゅー……」
「「ダブルキッーーーーーーーーーーーク!!」」
二人のキックがそれぞれ自分達の前にいた観客を多数巻き込む。そんなのが一刻ほど続き、戦いは終わった。
「うぅ、喉が痛い」
春蘭がいつも以上に叫んだので喉を痛めた。
「まったく。何だったんだ、あれは」
「お前たちが盛り上がらないからさ」
一刀が戦場跡を眺めながら言う。
「あれで盛り上がれと言うのか!?」
「それがライブってものだよ」
「そうそう。でも、ごめーん」
そこに張三姉妹三人がやって来た。
「ほわぁぁぁぁぁ!」
春蘭はまだ抜けきってなかった。
その後、とりあえず三姉妹は華琳達に謝罪した。
おまけ
作者「今回の拠点物語はどうだったかな?」
一刀「タイトルが何かえらい事になってるが…」
作者「もうすぐ出る仮面ライダーディケイドの劇場版にあわせてみた。だが俺は謝らない!」
一刀「謝るとは思ってないよ」
作者「それと次回からは期待されている蜀編の始まりだ! 皆期待してるようだけど、期待されすぎると俺が困るぜ」
一刀「何でだ?」
作者「魏編でも言ってるけど、俺の書く本編は基本が原作と同じなんだ。だからそこに仮面ライダーの力を少し加えただけで、大きく変わるわけではない。まあ一部変わるところもあるけど…」
一刀「でも正直な感想は?」
作者「期待されているのは嬉しい! でもそれを潰しそうで怖い。正直、俺の筆力だと…」
一刀「それでもお前は書くんだろ?」
作者「ああ、例え孤独でも命ある限り戦うのが仮面ライダーだからな。俺も孤独でも作品を読んでもらえる限り書くさ」
一刀「そうか…」
作者「というわけで、蜀編の序章は夜にでも投稿しようかと思っています。それと何度も言ってますが、魏編の拠点は本編中でも投稿するかもです…。それではまた!」
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基本的には真・恋姫†無双の魏ルートの話ですが、もしも北郷一刀が仮面ライダーの力を手に入れたらという妄想から生まれました。
そして流れも基本的に原作のままですが、仮面ライダーの力があるためセリフや一刀の態度が違うところや話そのものが大きく違うところも出てきたりします。
そのためそんなの嫌だという方は閲覧をご遠慮願います。
それと今回はいつもよりも話は短く、仮面ライダーに関することはあまりありません。しかし先にも書いたように台詞が原作と違う部分もございます。それを了承の上で閲覧することをお願いします。ではお楽しみ。