No.1163999

あるゲームドランカー(VR中毒者)の孤独な死

新人さん

僕の好きなSF作家ウィリアム・ギブスンは1948年の3月17日が誕生日だ。仕事をするよりも、大学でよい成績を維持して、手厚い学資補助を受ける方が簡単であることに気が付いたギブスンは、ブリティッシュ・コロンビア大学に入学し、1977年に本人いわく「退屈な英語の学士号」を取得している。ギブスンは大変頭が良かったそうだが、数学だけは出来なかったようだ。SF作家には数学や物理学などを基礎に未来を予測する学者タイプと、空想にふけって自由な発想を飛躍させていく夢想家タイプに分かれるような気がする。たぶんギブスンは後者の方だったんだと考えるが、彼の書いた80年代のSFは、電脳空間、仮想空間、サイバーパンクなどと言われたように、ネットワーク上で人々が現実世界のように交流を持ったり、社会的な営みを行ったりして、だんだん現実と混同していく感覚になる。異世界物でゲームの世界に入り込むのは、今の流行りだが、ギブスンから始まっているような気がする。コンピューターと人間の能力が結び付き、オンラインの仮想空間は今や当たり前だが、それはギブスンの得意な世界だったのだ。1980年代には既にVRから現実世界へ戻れなくなり、廃人同然となるジャンキーの様子も書かれている。現代人はそれを危惧する有識者もいるようだ。もうじき、1DKでリクライニングカウチソファーに寝そべり、ヘッドセットを付けたまま干からびてしまったミイラが発見されるかも知れない。警察は自殺と判断するのだろうか?それともゲーム会社による殺人事件とするのか?きっと故人の脳内では異世界を旅して現実世界への帰りかたが分からなくなったのかも知れない。『 お客様への御注意 ‐ 事故多発中につき、VRご利用の際はタイマーをセットするのをお忘れなきよう御願い致します。』という注意書が貼付される日は近い。

2025-03-17 16:19:29 投稿 / 978×734ピクセル

 
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