一刀は警備の改善案の書類を華琳に直接に見せに来た。
その時の一刀の答えはどれも「やってみないとわからない」だったが、華琳はその答えの真意に気付いたのだ。
「一刀、一つだけ教えて頂戴。今のこの世界の流れ…あなたの知っている歴史と、どの程度変わっているのかしら?」
その華琳の質問に一刀は正直に答えた。
「正直、全部だな。もともと誤差はあったけど…赤壁で俺達が勝ったから、完全に俺の知っている歴史じゃなくなってる」
「そう。だから?」
「俺がこの世界に来た意味を前から考えてたけど、その理由が分かった気がするんだ」
「私に天下を与えるための、天からの御遣い? その割には、随分と気が多かったように思うけど?」
「当の本人にそんな自覚がなかったからな」
「…とはいえ、あの赤壁で歴史は変わり、私はこうして生きている。大陸の覇権も、もう少しで私のものよ」
「ああ。警備隊の引き継ぎは、凪と真桜に任せた。この世界での俺の役目も、そろそろ終わりだろうな」
「終わった後は、どうなるの?」
華琳が今一番気になることを聞く。
「さあな? いきなり消えるか、夢から覚めるのか、何かの導きで別の世界に行くのか、役立たずの道化として、この世界に残るのか分からないな」
「好きになさい。もし道化として残ったのなら……そうね、側に置いて、慰み者くらいにはしてあげる」
「そいつは嬉しい申し出だな。(だが俺はいなくなるだろうな、それこそディケイドみたいにこの世界は俺を拒絶している可能性があるしな)」
「ただ、どうなったとしても…この光景だけは覚えておきなさい」
「ああ……」
一刀と華琳は城壁から、街を見る。街は華琳が治め、一刀達が守っている。
「あなたが初めてここに来たときにした話、覚えている?」
「胡蝶の夢……か」
「あなたじゃなくても、この世界が夢か現か幻かなんて、この世の誰にも分からないわ。
けれど、あなたがした事は…街にあなたがもたらしたことあなたの働きは、あなたの中に必ず残る。
例えあなたが私達の前から消えたとしても、あなたの真実として。そして、私達の現実としてね」
(それが人の記憶、そして人の時間か……)
「あなたは役目を果たしたの。それは…人として誇るべきことよ」
「そうだな。でも、華琳と会えなくなるのは寂しいぜ」
「そう。でも、戦場で死んだ兵達が志半ばに倒れる事を考えれば、自らの役目を果たしきれたぶん、幸せなのではなくて?」
「幸せなんて、人それぞれだよ。俺は役目を果たすより、華琳と一緒に日常を過ごせるほうが幸せだ」
「そう…、でも昔言ったわよね。そういう世界に生きているのよ、私達…いいえ、私は」
「そうだな…」
「消えるのなら、勝手に消えてしまえばいいわ。後の事は、残った私達に任せておきなさい」
「その時は頼むぜ」
一刀は背を向けて手を振りながらその場を去る。
「…そうよ。あなたが消えても……寂しくなんか、ないんだから」
それから一ヶ月強が過ぎた。
建業を制圧し、軍議が終わった後、一刀は華琳の用事に付き合えといわれた。
「一体、用事って何だろうな…」
そんな時、突然爆発音が庭で聞こえた。
「隊長!」
凪が一刀の側に来る。
「今の音は何だ? 襲撃か?」
「分かりません、しかし、工房から……」
「ってことは……真桜か!」
一刀達が工房に行ってみるとそこにいたのは一刀の予想通り真桜であった。
「酷い有様だな」
「けふっ。けふっ!」
「何で爆発させた?」
「別に好きで爆発させたわけやないで…」
「だろうな」
一刀が爆発した跡を見る。そしてその周りにはばらばらになった工具やら、工房の炉やら……。
「うん?」
一刀はそのばらばらになったものの中に自分が見覚えのものがあると思い、真桜に尋ねた。
「真桜」
「何や? 隊長」
「これはお前の作ってたものか? それとも最初っからその工房の炉に入ってたものか?」
一刀がその拾ったものを真桜に見せる。
「いや、ウチそんなもん入れてへんよ。それに最初っからあったにしても何かこれだけ丈夫やな」
一刀がその拾ったもののすすなどを掃ってみる。そしてきれいになりその真の姿を現した。
「これはラウズアブソーバーじゃないか!」
「らうず?」
「あぶそーばー?」
聞きなれない言葉に凪と真桜はオウム返しをする。
「ああ、これはブレイドをパワーアップさせるための道具だ。これでジャックフォームやキングフォームに変身できるんだ」
「よくは分かりませんが、それは前に春蘭様を助けるのに使ったといわれるハイパーゼクターのようなものでしょうか?」
「ああ、それと同じようなものだ。効果はハイパーゼクターほどじゃないがな」
まさか呉の建業の工房炉の中にあるなんて思いもよらなかった。
一刀はアブソーバーを見つけた喜びでいっぱいだった。
そんな時、遅れて春蘭と秋蘭が来た。
「何があった! 劉備の襲撃か!」
真桜は何があったのかを説明した。なにやら霞の偃月刀の改良をしていたら炉が熱に耐え切れず爆発してまい、
直すにしてもまた同じ事が起こるし、いつもの城にある炉のような改造をしたくても時間がかかり、城に戻ったほうがまだ早いという真桜に秋蘭はあることを言う。
「なら、戻ってくればよい」
「ええの?」
「ウェ? 蜀の攻略って…」
一刀は呉の完全統一が終わったら間髪入れずに蜀への侵攻だと聞いていたので、その発言には驚いた。
その呉の完全統一はあと少しで終わるところにまで差し掛かっている。城に戻るにしても一刀だったらバイクを全速力で飛ばせば、今日明日でつくかもしれないが、他のものではまず無理である。
「華琳様が午後から国元にお戻りになる。その護衛として付いて行けば良い」
「………ウェ?」
「どうした、北郷」
「華琳が国元に戻ってどうした?」
「そうか…もうそんな季節か」
「北郷は華琳様に同行すると聞いていたが……違うのか?」
「なるほど、用事ってそのことか」
一刀は華琳の考えが完全には分かってないが、自分も必要な用事だということだけは分かった。
そして華琳の護衛として、真桜と一刀以外には沙和、季衣、流琉が付いていった。
沙和は新作の服が出るから、それを買いたいとの事で付いてきた。
季衣と流琉は故郷に帰るためであった。途中で本国の親衛隊と合流し、季衣と流琉は一時故郷に帰った。
城についてすぐに真桜は工房へ、沙和は街に出掛けた。
そして一方は華琳に連れられてとある場所に行った。それは城の近くの森であった。
華琳が道の真ん中で止まり、あるものを見る。一刀はその視線の先を見る。
「お墓?」
「ええ。橋玄様の墓よ」
「橋玄?」
「私がまだ駆け出しの役人だった頃、春蘭達と一緒に、とてもお世話になった方よ」
「その割には小さい墓だな」
その墓は小さい石のかけらを積み上げている程度である。
「派手なことの嫌いな方だったの。何度か、私の所で働いて欲しいとお願いにも行ったのだけど…結局、最後まで首を縦に振ってはもらえなかったわ」
「じゃあ、今日は命日なのか?」
「亡くなられたと連絡を受けたのは、もう随分前のことよ。今まで忙しすぎて、挨拶にも来られなかったのだけれど…」
「そんな素振りは見なかったけど…」
「恩師とは言え、他人の死だもの。曹魏の運命を左右するというならまだしも、完全な私用だったしね」
華琳は手を合わせ、目を閉じる。一刀も華琳と一緒に手を合わせ、目を閉じた。
「ねえ一刀。覚えている? あなたと私が初めてあった頃、占い師の話を聞いたことがあった事を」
「ああ、よくな……」
「あの時の占い師も…実を言うと、橋玄様から紹介されていたの。確か名を、許子将と言ったはず」
「つまり最初っからあの占い師を知ってたんだな」
「視察の本来の目的は、許子将に会うことだったの。皆には言ってなかったけれどね。
今では許子将の言うとおり、乱世の奸雄よ。なるほど、言い得て妙だったわね」
「当たるものは当たるんだな」
「確か、一刀も何か言われてなかった?」
「ああ、確か『今持っている力と同じようなものを後二つ手に入れるだろう。一つは赤き鎧に身を包み目に見えぬ速さを手に入れる力。
もう一つは大いなる力でありながらなおも進化し続ける存在の力を……。
それと大局の示すまま、流れに従い、逆らわぬようになしされ。
さもなくば、待ち受けるのは身の破滅。くれぐれも、用心なされよ?』だったな。
あの言葉の最初の言葉はすぐにカブトとアギトの力だって事は聞いてすぐに分かったが、最後に言われたことが……」
その時、ようやく一刀は最後の言葉の意味を理解し、悟った。
(なるほど……、だいたいわかった!)
一刀は先日、華琳に言ったこの世界での自分の役目の事を思い出し、それとあわせてようやく理解した。
(大局ってのは歴史そのものだ。つまり歴史どおりに動いて、歴史に逆らうなって事か…。
となると俺が最初にやった事は恋や月を仲間にした事と春蘭の目をかばった事。
あの時の疲れはクロックアップの疲れじゃなかったんだな。
今思えば定軍山やアギトの時もそうだ。秋蘭を助ける時に馬超の槍にキックした時、
足じゃなくて体の奥が何か痛みがあった。そう言う事か…あの占い師め……)
その時の一刀は少しだが許子将を憎んだ。
(本当に俺は世界の破壊者になった気分だよ。だったら俺はこの世界の破壊者をやってやる!
ディケイドじゃなくても破壊者にはなれる。例え俺が消えようともな……)
「一刀?」
華琳は突然黙り込んだ、一刀を心配して声をかける。
「大丈夫だ。最後の言葉を考えてただけさ」
「………そう。橋玄さまへの報告も終わった事だし、帰りましょうか」
「ああ。でも、その前に少し俺も寄りたいところが出来たから、行っていいかな?」
「私も一緒にいったほうがいいかしら?」
「いや、俺一人しか行けないところだ」
「……そう」
「なに、すぐ帰るさ」
そう言って一刀は森の方に行き、華琳がいない事を確認してカブトに変身。
そして前にはハイパーゼクターが現れる。
「ハイパーキャストオフ」
「Hyper Cast Off」
カブトはハイパーフォームへと変化した。
「Change Hyper Beetle」
「ハイパークロックアップ」
「Hyper Clock up」
一刀はその場から姿を消すが、その消えたのは一瞬であり、すぐに姿を現わした。
「Hyper Clock over」
一刀はカブトの変身を解いて華琳の所に戻り、一刀と華琳は帰路につく。
その間、一刀は考える。
(許子将、それにこの世界。俺が間違った事をしているのなら、俺は間違った事をし続ける!
俺は俺の道を行く! 華琳のために!!)
おまけ
作者「いよいよ、終わりに近づいてきたぜ。仮面ライダー×真・恋姫†無双 魏編 第10章」
一刀「ラウズアブソーバーをあんな形で出すなんてな…」
作者「次回に唐突に出したらなんか変だしな。強引だけどあんな感じにした」
一刀「俺が最後ハイパークロックアップしたけど、あれって何の意味が…」
作者「答えを言ってるようなものだが、前回の事と関わってることだな」
一刀「どれの事だよ?」
作者「文章をよく読んだらそれはおのずと分かるはず……」
一刀「読者次第か……」
作者「さあね、次回はいよいよラストバトル突入。さあ一刀の運命はいかに!?
投稿は明日になるかな」
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基本的には真・恋姫†無双の魏ルートの話ですが、もしも北郷一刀が仮面ライダーの力を手に入れたらという妄想から生まれました。
そして流れも基本的に原作のままですが、仮面ライダーの力があるためセリフや一刀の態度が違うところや話そのものが大きく違うところも出てきたりします。
そのためそんなの嫌だという方は閲覧をご遠慮願います。
今回は変身はしても戦わず、仮面ライダーに関することは中盤と最後の方しかありません。しかし先にも書いたように台詞が原作と違う部分もございます。それを了承の上で閲覧することをお願いします。ではお楽しみ。