からかわれ、ひとしきり笑われた燐は、次の女性の発言に驚愕する事となる。
「そういえば、まだ名乗っておりませんでしたな。姓は趙、名は雲、字は子龍と申します、以後お見知りおきを」
姓に名はいいが字ねえ。姓が趙で名が雲だから趙雲だな。趙雲……趙雲!?
待て待て、落ち着け俺。趙雲っていえば、三國志の顔、戦国でいえば真田幸村みたいなやつだぞ!? と、こんな具合に燐の頭の中は?でいっぱいである。
おそらく三國志を知るもので、趙雲の名を知らないものはいまい。驚愕する理由に十分なり得る。おまけに、その名を口にするのが美少女となればなおさらである。
すっかり固まってしまった燐であるが、女性こと趙雲にとっては、彼の胸中などわかるわけもない。彼女は訝しむような視線を燐へとぶつけてくる。
「私の名に何かおかしなことがありますかな? それとも天では女性の名を聞くと黙る風習でもあるのでしょうか?」
物腰は丁寧だが、端々から不満の色が見てとれる。天というのが気になりはしたが、そんなことはないと否定し、詫びた。
「さっきから謝ってばかりだけど、俺は燐、石灰 燐だ。君の流儀で言うなら姓が石灰で名が燐ってことになるかな。字は持っていないけどね。さっきのは、その知った名前だったからびっくりしたというか」
燐の弁明に趙雲は流し目をくれると、何か得心いったと一つ頷いて見せる。
「ふむ、姓が2文字というのも珍しいですが、字を持たないと……。珍しくはありますが、ないこともないでしょう。それにしても、我が名がそこまで広まっていたとは思えませんが」
その目は嘘ではないが、まだ叩けば誇りがありそうだと値踏みしているかのようであった。
「本当にそれだけなんだ。えーと、子龍さんって読んだ方がいいのかな? 子龍さん、ここはどこか教えてくれないかい?」
「ここは冀州は常山国です。石灰殿は場所も知らずにここにいたと?」
信じられないと趙雲の2つの目は語っていた。質問をはぐらされたという思いもあったのかもしれない。
燐とて第三者であれば、そう思うだろう。とはいっても鏡の力でパラレルの過去に来ましたなんて事実は言えるわけがないが。
そんなことよりも、趙雲が口にしたここが冀州の常山国であるという方が大事だったので、あまり気にしていなかった。
冀州とは古代中国の13州の1つである。そして常山国は趙雲の故郷であった。
あとは、彼女の所属によって時代が把握出来そうなものだが、さっきの3人組の黄色い布でだいたいはわかるというものである。
燐の想像通りならここは後漢末期辺りだろう。
あの乱のことを聞いても良かったのだが、まだ挙兵していない可能性もあるし、これ以上不審がられるのは燐の本意でもない。そう考え、教えてくれてありがとうと感謝することに止めた。
「なんだか煮えきりませんが、立ち話もなんでしょう。近くに邑がありますから、そこへ向かいませぬか? 実は連れもそこへ待たせておりましてな」
「お連れさんがいたのか。こちらとしてはありがたいけど、お金……路金とかないぞ」
一応さっきチビからせしめたものはあるが足りるとも宿代として限らない。
「燐殿は珍しい身なりですしひょっとしたらと思ったのですが。ここはひとつ体で払ってもらうのも良いかもしれませんな」
趙雲の目は人をからかう目になっている。元々整った顔立ちをしているので、似合っている。
元来こういう性格なのかもしれないが、燐の知るあのイケメンと比較するとやはり違和感はあった。名前は一緒だが別人と思うべきなのだろう。性別が違うのだから当然というべきかもしれない。
ともかく、趙雲の連れが待つという邑へ向かうことに。荒野を進みつつ出会う前から波乱に巻き込まれる予感がする燐であった。
お送りしました第3話。
美少女の正体はご想像通りでしたでしょうか?
趙雲との出会いは、彼女がヒロインになるということではないのですが、じゃあなぜ出したかですよね?
それは彼女の故郷が鍵だとだけしかいえません(決まっていないので)
やりたいことは決まってますが、オリキャラが増えます。というか恋姫のヒロインは一刀くんのものですから、燐に惚れさせるとかないと思ってます。
その先はしりませんけれど。
それでは次回、またお目にかかりましょう。
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山賊を蹴散らし、謎の美少女とであった燐。
彼女の正体はいかに。