No.102893

~薫る空~36話(拠点:秋蘭√)

さて、初の秋蘭拠点。
秋蘭結構好きなんだけど、自分で書くのは初めてなのでおかしいところあるかもですが、ヨロシクおねがいします(´・ω・`)

何気にこの二人が魏のカップルで一番バランス良い気がして仕方が無い。

2009-10-24 16:42:22 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:5112   閲覧ユーザー数:4378

 

 ――昼。

 

 皆に与えられた休暇だったが、どうやらそれは琥珀には関係ないらしく。

 

【琥珀】「―――っ」

 

【一刀】「ぐっ」

 

 普段どおり行われた訓練は、今日も一刀が吹き飛ばされたことで終わりを告げた。

 

 どさりと地面に背中をつけて、一刀は大きく息を吐いた。

 

【一刀】「はぁ………またやられた。」

 

【琥珀】「一刀は一個一個無駄がある。だからその間にやられる。」

 

 無駄な動きというなら、琥珀の戦い方だって凄まじいほど無駄がある気がするが、一刀はそれを口にすることは無かった。

 

 琥珀の場合、自身のスピードがずば抜けているために、無駄が無駄にならず斬撃の助走となっている。

 

【一刀】「わかってるんだけどな…」

 

 一刀は空を見上げながら、自分の手を見た。手のひらには見たこと無いような血まめが出来ている。それは一刀がどれだけ鍛錬に勤しんでいるかを表すものだった。

 

【琥珀】「今日は終わり。コハクも休む。」

 

【一刀】「あぁ、ありがとな」

 

 付き合ってくれたことの礼を言うと、琥珀は「ん」とだけ言って一刀の視界から姿を消した。

 

 

 

 

 琥珀が行った後も、一刀はその場に寝そべったままだった。

 

 すぐに結果が出るものではないと分かってはいるが、油断するとすぐに焦れてしまう。どうして上手くやれないのか。

 

 弾かれた剣を持ち直して、その刀身を見つめる。

 

 鉄にしては綺麗に紫がかった剣。綺麗過ぎる刃を見ると、まだこれを扱いきれていないと、一刀は改めて自覚する。

 

 いつの日か、この剣で人を斬る事もあるだろう。その時までには、少なくとも戦えるようにしなくては。それがもうすぐなのか、まだまだ先なのかはわからないが。

 

【一刀】「んしょっと…」

 

 腹筋のトレーニングのように体を起こして、一刀は剣を鞘へと収める。

 

 カチンと軽い音を聞いて、訓練の終わりを確認。

 

【秋蘭】「今日はもう終わりか、北郷」

 

【一刀】「――秋蘭?」

 

 もう一度息を吐いたところで後ろから声をかけれた。振り向いて主を確認すれば、そこにいたのは秋蘭だった。

 

【一刀】「ああ、鍛錬ばかりして動けなくなるようじゃ本末転倒だしね」

 

【秋蘭】「そうだな」

 

 秋蘭は微笑して答えた。

 

【秋蘭】「北郷。暇なら少し付き合ってくれないか」

 

【一刀】「うん?いいけど、どこか行くのか?」

 

 それは珍しく、秋蘭からの誘いだった。

 

【秋蘭】「いや、休むだけさ」

 

 秋蘭はそれだけ言うと、天幕のほうへと歩き出し、おそらく自分のものであろう天幕の中へと入っていった。

 

【一刀】「秋蘭?」

 

 一刀もそれに続いて中へと入る。自分の天幕の中へ誘うという行為に一刀は少しドキッとしてしまった。

 

【秋蘭】「ああ、気にせずに座ってくれ」

 

 頷いて、一刀は天幕の椅子に腰掛けた。

 

 秋蘭は奥のほうで、どうやら茶を用意しているようだった。

 

【一刀】「珍しいね。秋蘭が誘ってくれるなんて」

 

【秋蘭】「なに、姉者も華琳様も今日は忙しくてな。そんな手持ち無沙汰だったところに――」

 

【一刀】「丁度暇そうにしてる俺がいたわけね」

 

【秋蘭】「あぁ」

 

 少し何かを期待していた自分が懐かしくなる。どうやら思惑とは反して、姉や主の代わりといったところのようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 少しして、秋蘭は二人分の茶を机の上に並べた。

 

【秋蘭】「――……。」

 

 秋蘭の手が離れたことを確かめて、俺は茶を口に含んだ。

 

【一刀】「………うまいな」

 

【秋蘭】「そうか」

 

 素っ気無いが、嫌な感じがしないのは彼女が持っている雰囲気によるものだろうか。それでもふと微笑んでいる顔をみると、少し照れてしまう。

 

 俺が飲んでいるのを見て安心したのか、秋蘭も茶を飲み始める。

 

【一刀】「――秋蘭は、俺でよかったのか?」

 

【秋蘭】「うん?」

 

【一刀】「いや、うまいとかそういう感想は言えるけど、退屈じゃないか?」

 

【秋蘭】「退屈だよ」

 

【一刀】「――お、おい…」

 

 ずっこけて椅子から転げ落ちそうになった。

 

【秋蘭】「だが、嫌ではないさ。退屈というのも」

 

【一刀】「………そうか?」

 

【秋蘭】「ああ」

 

 器を置いて、息を吐く。手を机の上に置いたり、足を組み替えたり。

 

 秋蘭の行動一つ一つがさっきから気になってしまう。退屈といわれた以上、何か話してあげたいが自分の不甲斐無さに呆れつつも、俺はこの場の状況を変える事ができない。

 

【秋蘭】「北郷」

 

【一刀】「あ、うん。何?」

 

【秋蘭】「あまり気にするな。そうじろじろ見られるというのもあまり良い気分ではないぞ」

 

【一刀】「ああ!ご、ごめん!」

 

 中●生でもあるまいし、挙動不審になっているところを秋蘭に指摘されてしまった。

 

【秋蘭】「はぁ…………。北郷、一応言っておくが」

 

 秋蘭はそれでもスッキリしない態度の俺に向かって言う。

 

【秋蘭】「私も、それなりに人は選ぶ」

 

【一刀】「…………え」

 

【秋蘭】「別に華琳様や姉者の代わりをしろとは言っていない。それにさっきもいったが、この退屈は嫌いではないよ」

 

【一刀】「………あぁ」

 

 秋蘭が言わんとすることが読みきれず、生返事になってしまった。

 

【秋蘭】「お前はいつも通り、そこに座って付き合ってくれればいい。」

 

【一刀】「あ、そ、そか…」

 

 そこまで言われて、ようやく、一刀は自分がひどく緊張していることに気づいた。思えば秋蘭とこうして二人でいることなんて今まで無かったかもしれない。

 

 

 

 

 残ったお茶を飲んで、俺は小さく深呼吸した。

 

 ため息のようなそれは、どうにか俺の緊張を和らげてくれた。

 

【秋蘭】「……ふふ」

 

【一刀】「ん?」

 

【秋蘭】「いや、一応私も女として見てもらえているんだなと思ってな」

 

【一刀】「な、あ、当たり前だろ!?」

 

【秋蘭】「ふふ。そうか」

 

 なんだかもう遊ばれているような気がして仕方が無かった。

 

 秋蘭の顔が少し赤いような気がするけど、今は一刀自身の顔がそれ以上に赤くなっている。

 

【一刀】「はぁ…」

 

【秋蘭】「ふふ……。」

 

 ただ不思議と、こうして何もしない時間が退屈だとは感じても、嫌なものでなかった。

 

 もう少し味わっていたい。そう思えるような何か。

 

 

 

 

 

 

 それから少し時間が経ち、二人のいる天幕の中は外とはまったく別の世界のように、静かなものだった。

 

【一刀】「ん………」

 

【秋蘭】「うん?」

 

 一刀が小さく声を漏らして、秋蘭はそれに反応する。秋蘭が目線をあげてみると、一刀の頭が周期的に上下動している。

 

 今にも眠ってしまいそうな彼の姿にまたひとつ、笑いがこみ上げてくる。

 

 頬に手をついては、そこから滑り落ち、元に戻してはまた落ちる。そんな繰り返しを目の前で行っている一刀がひどくおかしかった。

 

 口元に手を当てながら、秋蘭はその一部始終を観察していた。

 

 興味深い研究対象を眺めるような視線。

 

【一刀】「ん…………っ!!ごふっ!」

 

【秋蘭】「――っ!……っ!」

 

 手から滑り落ちて、今度はまともに顎が机にぶつかった。

 

 そんなものを見た秋蘭は肩を震わせながら、声を殺している。

 

【一刀】「んぁ………痛……」

 

【秋蘭】「………そんなに眠いのか?」

 

 しかし、顎をぶつけるようなことがあったにもかかわらず、一刀の表情は崩れなかった。ようやく落ち着いた秋蘭が声をかけてみるが、やはり反応はない。眠いというより、もう既に眠っていたのだ。

 

 

 

 

 

【秋蘭】「……………ふむ」

 

 すると、秋蘭は立ち上がり、奥のほうへと向かい、少ししてまた戻ってきた。

 

 手にはなにやら糸くずのようなものがあった。

 

【秋蘭】「………ん」

 

 ソレを丸めて。

 

【秋蘭】「そら」

 

 指で弾く。

 

【一刀】「ん……んん…」

 

 糸くずの弾は見事に一刀の額に命中したが、少しの反応で終ってしまった。

 

 秋蘭はその反応を見ると、すぐにまた同じような糸くずをさっきよりも大目に丸めて、飛ばす。

 

【一刀】「………んて………」

 

 それでもやはり眠ったままだった。

 

【秋蘭】「…………次は…」

 

 また、秋蘭は糸を絡めて行く。今までで一番大きな弾をつくり、構える。

 

 ――そのとき。一刀の肘が、机から外れた。

 

 瞬時に、一刀が視界から消えていく。

 

【秋蘭】「…………っと…」

 

 元々椅子の高さが低いのもあり、一刀は眠りから覚める前に、地面へと落ちた。

 

 だが、一刀が落ちたときになるはずの、大きな音も、一刀の声も聞こえない。

 

【一刀】「……………。」

 

【秋蘭】「これは……普通逆ではないのか、北郷。それにまだおきないとは…」

 

 一刀は、秋蘭の胸の中で眠っていた。

 

 完全に落ちようとした瞬間、地面と一刀の間に秋蘭が体を割り込ませていた。

 

【秋蘭】「……………………まぁ、悪くは無いか」

 

 微笑んで、秋蘭は呟いていた。

 

【一刀】「ん………あれ、秋蘭?」

 

 一刀がようやく目を覚ますと、目の前に秋蘭の顔があった。

 

【一刀】「え………え、なん…で?」

 

【秋蘭】「気にするな。これは―――」

 

 秋蘭が事故だと説明しようとした時。

 

 天幕の扉が開く音がした。

 

【春蘭】「秋蘭~~、華琳様が呼んで―――」

 

 そこにはかなりご機嫌な姉がいた。

 

 しかし、姉の機嫌は、天幕の中の様子を見るなりぐんぐん負の方向へと伸びていく。

 

 倒れた椅子。少し荒れた机の上。図らずも抱き合う形の妹と種馬。

 

【秋蘭】「あぁ、すぐに行くよ」

 

【一刀】「え、えーと…とりあえず落ち着け春蘭。な?」

 

【春蘭】「なにが、な?だ…………ほんごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

【一刀】「だ、だから、おちつけえええええええええええええええ!!!」

 

 いつの間にか秋蘭が離れていたことが分かると、春蘭は何処から出したかわからない大剣を抜き出し、一刀へと襲い掛かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

【秋蘭】「ふぅ…………やはり、お前がいると飽きないな。…ふふ」

 

【華琳】「秋蘭」

 

【秋蘭】「華琳様」

 

【華琳】「春蘭にあなたを呼びに行かせたのに遅いから来てみたら…………」

 

 

 

 

 

【春蘭】「貴様は二度しねええええええええええええええええええええええええ!!!」

 

【一刀】「一回だって死んでたまるかああああああ!!」

 

 命のかかった鬼ごっこの舞台は天幕から外へと移り、二人は砂塵を上げるほどの速度で走り回っていた。

 

 

 

【華琳】「まさか一刀といたなんてね。暇はつぶれたかしら?」

 

【秋蘭】「はい。」

 

【華琳】「そう」

 

 いつも通り口元を歪める笑いを見せる華琳。そんな彼女を見て、一刀に少し同情を覚える秋蘭だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき。

 

さて、拠点・秋蘭編でした。

秋蘭って別にお堅いキャラというわけでもなくて、だからといってはっちゃけけすぎるわけでもないし、どう書こうか迷った末にこうなりました。

結論から言うと、一刀は茶飲んで寝ただけですw

ただ、秋蘭との絡みって自分の中ではそういう「普段」っぽいのが一番しっくりきたので(´・ω・`)

 

さて、次ですが、残っているのが、琥珀・華琳・桂花と個人的に華琳は最後にしたいので、琥珀か桂花で悩むトコですが、前回の説明にも書いたとおり、オリキャラの琥珀は基本的にシリアス路線です。でないとキャラが掴めないというのがあると思いますのでw

まぁ、琥珀はあんなキャラクターですのでシリアスになりすぎることは無いと思いますがw

桂花は完全ドタバタになりそ。

まぁ、どちらが先出来上がるかは作者の気分とシナリオ次第ということでw

 

 

ではでは、また次回(`・ω・´)


 
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