洛陽へと辿り着いた董卓軍の凱旋を、住民たちは喝采をもって迎えた。
手を振ったり、笑顔を向けたりと住民に応える董卓軍の面々。
一方、その光景を目にした他の軍の者達の反応は様々で・・・・・・
「人気の割には、街は荒れておるようじゃのう」
辺りを見回しつつ呟く袁術。
「復興途中って事でしょうね。御使いさんの言ってた推測が、真実味を帯びてきましたね」
「・・・・・・」
「美羽様?」
「七乃。あの御使い・・・・・・北郷と言ったかのう?」
「ええ」
「あの男、妾達の所に置いてみてはどうかのう?」
「そうですねえ。御使いかどうかはともかく、役に立つ人間なのは確かだと思いますけど・・・・・・」
「何か気になるのか?」
「いえ、天の御使いだからとあれやこれやと口を出されると、やり辛くなるんじゃないかと・・・・・・」
「ふむ。それもそうじゃな。では、孫策達と同じように必要な時だけ呼ぶ事にするかのう」
「それがいいかと・・・・・・」
「随分な人気ね。一刀の言ってた通り、董卓は悪人じゃあ無かったって事かしら?」
「民から慕われている以上、圧制者でない事は確かだろうな」
「良かった。ただ悪人に加担しただけなんてオチだったら目も当てられなかったわ」
ほっとする雪蓮。
それに対し、冥琳の表情は硬かった。
「まだ善人と決まった訳でもないがな・・・・・・」
「まあ、その辺はもうすぐ分かるでしょ」
「そうだな」
「華琳様。これはやはり・・・・・・」
荀彧の言葉に頷く曹操。
「董卓が悪逆非道というのは、虚言だったという事ね。まあ、今更驚くこともないでしょう。私達はその可能性も考慮に入れた上で、連合に参加したのだから」
「はい・・・・・・」
「今となっては見通しが甘かったとしか言えないわね。連合内からの裏切りを予測できず、麗羽の馬鹿さ加減も見誤ったのだから・・・・・・」
「くそっ!袁紹めがあのような下策を取らなければ・・・・・・」
「春蘭。もしもの話をしても仕方ないわ。私達はこうして敗者となった。これからどのような処罰が下ろうと、後は受け入れるだけよ」
「華琳様・・・・・・」
「ど、どういうこと?」
「この状況はいったい・・・・・・」
「みんな喜んでるのだ」
状況が呑み込めない様子の劉備、関羽、張飛。
一方、孔明と鳳統は厳しい表情で現状を分析しているようだった。
「・・・・・・朱里ちゃん」
「うん、そう言う事だったんだね・・・・・・」
「何か分かったの?朱里ちゃん」
主からの問いに孔明は返答を一瞬迷ったが、おずおずと口を開いた。
「言いにくい事なのですが、桃香様。おそらく、董卓が悪逆非道と言う話は、虚言だったのではないかと」
「う、嘘・・・・・・」
「それが真実なら、我々は・・・・・・」
「何のために、戦ったのだ?」
・・・・・・
城下を抜け、洛陽王宮へやってきた一行。
董卓軍の将達に連れられ、袁術と張勲、そして孫策軍と反董卓連合の将達は謁見の間へとやってきた。
扉を開き、謁見の間へ踏み入る一行。
そこに待っていたのは、整列した衛兵達、玉座の左右に控える賈詡と華雄、そして、帝の代理として玉座に鎮座する董卓であった。
董卓を初めて目にした董卓軍以外の者達は、驚きを禁じ得なかった。
その姿は悪逆非道などとはとても思えない、小柄で儚げな美少女だったからだ。
「董卓様の御前である!頭が高い!」
賈詡の叱咤に、呆気に取られていた者達は膝を折り、頭を垂れた。
「恋、ねね、霞。良く困難な任務を果たしてくれたわね。ご苦労様」
「・・・・・・こくっ」
「当然の事をしたまでなのです」
「そういうこっちゃ」
賈詡のねぎらいの言葉に各々返答する三人。
「それと・・・・・・袁術、孫策。此度の戦の活躍は聞いているわ。それ相応の報酬を約束しましょう」
「はっ!」
「ありがたき幸せ・・・・・・」
孫策はともかく、袁術は内心思うところはあったろうが、さすがにこのような場で礼を失することは無かった。
「さて・・・・・・袁紹。諸侯たちを集めて反董卓連合軍を結成。我らに無用の戦を仕掛け、あまつさえ戦場での非道な所業・・・・・・覚悟は出来てるんでしょうね?」
「私は悪くありませんわ」
「・・・・・・何ですって?」
「私は悪くないと言ったのです」
袁紹の発言に、その場にいた者達は耳を疑った。
「この期に及んで・・・・・・恥ずかしくないの?」
怒りと言うより呆れた様子で問いかける賈詡。
「私はただ、帝をないがしろにし、非道の限りをつくすあなた達を成敗するために戦ったのです。恥じることなど何もありませんわ!」
あまりにも堂々とした袁紹の台詞に、自分の立場が分かっているのかと思わずにはいられない一同だった。
「なら聞かせてくれないかしら?私達が非道を行ったなどと、そもそも誰から聞いたのか」
「誰も何も、天下万民が言っているのです!」
「天下万民・・・・・・はっ」
袁紹の発言を賈詡は鼻で笑い飛ばした。
「何ですの!?その態度は!」
「あんたの天下万民は、何太后の事を言うのかしらね?」
その名前を聞いた途端、今まで強気な態度を崩さなかった袁紹の表情が凍り付いた。
何太后。
かつては霊帝の寵愛を受け、劉弁と言う子まで成し、その地位は揺るがないだろうと思われたが、何進、十常侍といった後ろ盾がいなくなり、帝には劉協が即位。
後見人となった董卓が執政を取り仕切るようになってからは権勢も衰え、酒に溺れた生活を送っていた。
「あんたが何太后からの密命を受けて動いてたことは調べがついてるのよ」
「あ・・・・・・う・・・・・・」
「我々を討ち滅ぼし、再び権力を手中に治めようという魂胆だったようね。まあ、我々が倒されていれば上手くいっていたかもしれないけど・・・・・・」
「しょ、証拠はあるんですの!?」
精一杯の強がりを見せる袁紹。
「連合軍敗北の報が届いた途端、何太后配下の者達から密告が相次いでね。それをもとに調べてみたら出るわ出るわ。何ならここに持ってきてあげましょうか?」
「ぐっ・・・・・・」
「観念なさい。何太后も既に牢の中。あんたを助けるものはもういないのよ」
「そんな・・・・・・」
絶望し、その場にへたりこむ袁紹。
「連れて行きなさい」
すっかりおとなしくなった袁紹は、文醜、顔良と共に牢へと連行されていった。
その後、残った反董卓連合の者達は此度の責任による沙汰を城外で待つことになり、その日の謁見は終了。
袁術、孫策軍の将達は割り当てられた部屋で休息を取る事となったのであった・・・・・・
割り当てられた一室に、呉の面々は集まっていた。
「まさか何太后が裏で糸を引いてたなんてね。冥琳、もしかして気付いてたりした?」
「可能性の一つとしては考えていたが、確証は無かったな」
「まあ、董卓に味方して反董卓連合軍に勝利するという目的は達したんですから、その辺りはいいんじゃないですかぁ?」
「そうじゃな。それよりも、これからどうするかの方が重要じゃろう」
祭の言葉に頷く呉の将一同。
「ところで、一刀がいないようだけど?」
「一刀様なら、厠に行くと言ってました」
「あ~・・・・・・恥ずかしい」
廊下を歩きつつ、一人呟く一刀。
袁紹自身の陰謀だと決めてかかっていた一刀にとって、此度の真実は顔から火が出るほど恥ずかしいものだった。
「少し頭冷やしてから戻ろう」
そう言いながら、宮廷内を歩いていた一刀。
「お~い」
そんな一刀に、手を振りつつ張遼が近づいてきた。
「ちょうどいいところで会ったわ」
「何か用か?」
「月・・・・・・ウチらの大将、董卓が呼んどるで?」
「俺を?」
「せや。此度の戦の陰の功労者やし、直々に礼を言いたいそうやで」
「称賛されるような事はしちゃいないよ。端的に言えば、俺は連合軍を裏切るという話を持ち掛けた卑劣な奴だからな」
「まあ、連合軍からすればそうかもしれへんけど、ウチらにとってはれっきとした功労者や。それに、説得された時の話を大将にしたら興味深々でなあ。来てくれへんか?」
「・・・・・・用もないのに、せっかくのお招きを断るのも無礼か。分かった。行こう」
「よっしゃ。こっちや」
どうも、アキナスです。
またえらく間が空き、今年も終わろうという中での投稿です。
書きたい書きたいと思いながらも筆が進まず、もどかしい日々が続いております。
とりあえず初心に返り、他の方々のssを読みながらモチベーションを高めていければと思っていますが・・・・・・
では、また次回・・・・・・
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洛陽にて浮かび上がる真実・・・・・・