漫画的男子しばたの生涯一読者■ぼくはいもうと 〜単行本「恋風」1巻 吉田基已 講談社 [bk1][Amzn]
このところの「妹ブーム」の勢いはものすごい。元々はエロ漫画方面から出てきた流れだとは思うが、それが一般誌にまで及んでいる。その中でも飛びっ切り強力なのがこの作品。子供のころ、親が離婚したことで離れ離れになっていた兄・耕四郎と妹・七夏が、重何年かぶりに再会し突如一緒に住むことになる。しかしなかなか七夏のことを妹として意識できない耕四郎は、愛くるしい七夏の姿に悶々とし続ける……というお話。この作品の肝はこの妹が可愛すぎるくらいに可愛いことだ。ちんまりとした容姿と警戒心のない無防備な姿に思わず知らず胸がキュンとなってしまう。とはいえ「妹萌え」という点を抜かしてもこの作品はいい。自然をはじめとして作画で、細やかな情緒を美しく描き出している。 (「イブニング」で連載中) 「魔法のエンジェルグリグリビューティ」
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「魔法のエンジェルグリグリビューティ」 和六里ハル |
なんかものすごく単純に楽しい作品。鼻血を吹いちゃうくらいかわいい美少年・紅扇ビューティと巨乳な天使・フェイスが出会い、天使の輪っかがビューティにくっついてしまう。それが縁でフェイスはビューティの家に転がり込み、ビューティも天使と悪魔の争いに巻き込まれていく……といった感じでお話は展開。何よりいいのは、ビューティがやたらと可愛かったり、めがねっ娘の天使・マウスさんがHで恥ずかしい格好をさせられたりと、端から端までサービス満点なこと。バタバタ忙しく最後まで突っ走っていくストーリーも楽しく、しっかりエンターテインメントしている。
「ロケハン」 陽気婢 |
自主制作映画を作っている二人組が地方へロケハンに繰り出したところ、そこでAVの撮影隊と遭遇し、それが縁となって展開する青春ラブコメといった感じ。お話的にはまとまってないところもけっこうあるんだけど、陽気婢の非常に柔らかい作画が見ているだけで気持ちいい。地元の郵便局のおねーさんとか、ちょっと地味めの女の子の可愛さを描かせたらこの人は天下一品だと思う。
「七人のナナ」1巻 作:今川泰宏 画:国広あづさ |
アニメとのメディアミックス。平凡な女の子・鈴木ナナが魔法のクリスタルの力で7人に分裂。7人はそれぞれちょっとずつ性格が違うものの、クラスメートの神近くんが好きということは共通。そんなこんなでナナたちが入り乱れて、賑やかな学園生活が展開されていく。ぷにぷにした絵柄は好感度が高く、ドタバタした展開も単純に面白い。アニメのほうは「ケロロ軍曹」などの吉崎観音がキャラクターデザインだが、こちらはこちらでまた味がある。 (「週刊少年チャンピオン」で連載中)
「アベノ橋 魔法☆商店街」1巻 画:出口竜正 作:GAINAX 脚本:あかほりさとる |
こちらもアニメなどとのメディアミックス。漫画のほうは「アフタヌーン」(講談社)で連載されている鶴田謙二版と並行し、出口竜正版もある。再開発で失われようとしているアベノ橋商店街を惜しむ少女アルミと少年サッシの二人組が、さまざまなマジカルワールドを行き来しながら、それぞれの世界でのアベノ橋で冒険を繰り広げるといったストーリー。出口竜正は前作の「女大太郎」でも抜群に元気良くノリノリな作風を発揮していたが、それはこちらでも健在。お話もカラッと明るく馬鹿馬鹿しくて素直に面白がれる。 (「マガジンZ」で連載中)
「焼きたて!!ジャぱん」1巻 橋口たかし |
少年漫画らしい勢いに満ちた料理漫画。日本人にとっての主食なり得るパン、名付けて「ジャぱん」を作るため、少年パン職人が奮闘するという作品。馬にそのパンを食わしたら思わず「馬味ー(ウマー)」と叫んだりする大げさな演出が味。やりすぎな感じがしないでもないけど、少年漫画はこのくらいハッタリが利いてるほうがいいかも。 (「週刊少年サンデー」で連載中)
「臥夢螺館」1巻 福山庸治 |
1993〜1994年に「モーニング」にシリーズ掲載された作品が、Webに掲載場所を移し連載を続け、榎本俊二「しりももSHAKE」と共に、CD-ROM付きの新単行本シリーズe-mangaコミックスの第1弾として発売された。この物語は「天使」と呼ばれる人間の内部に潜り込み、その精神を食い荒らしていく不可思議な存在が、人間社会全体に拡散していく様子を描いたホラー風味のミステリアスな作品である。真っ白けで不気味な表情の天使たちは真剣に不気味だが、緊張感に満ちた展開する物語世界なかなかにカッコイイ。 (Webマガジン「e-manga」で連載中)
「自殺サークル」 古屋兎丸 |
監督・脚本:園子温の映画「自殺サークル」を元に古屋兎丸が描き下ろした165ページの単行本。女子高生が手をつないで電車に飛び込むという集団自殺のシーンから始まり、その中でただ一人生き残った少女・小夜の親友である京子が、自殺サークルの中心人物である光子の謎に迫っていくという筋立て。現代日本を舞台としたサイコホラー風味の作品となっておりミステリアスかつヒキが強い。
「象の怒り」 吉田戦車 |
ある日突然高い知能を獲得した象たちが、人間たちに牙と鼻をむけ始め、世界を制圧。それに対し、スパイの夏助が孤軍奮闘するというスパイvs.象という構図のアクション漫画。吉田戦車には珍しく1巻まるまるのストーリーものとなっている。要するに内容的にはスパイアクションなんだけど、夏助はファックスが大好きで、敵の拠点に侵入中も妹や弟にファックスを送りつけたりと、ヘンなところで妙に間が抜けている。なんだか非常にまったりほのぼのした味のある一作。
「お花畑で会いましょう」 増田剛 |
エロ漫画方面では「うらまっく」名義で活躍中の増田剛が、薬物中毒という重いテーマに真っ向から挑んだ力作。新進気鋭の画家・裕一郎が、知り合った女性・幸子は実は薬物中毒にあることが判明。彼女の理不尽な感情の爆発に振り回される裕一郎だが、そんな中でも二人はしっかりと愛を築き上げていく。丹念にエピソードを積み上げていき、暖かな読後感のラストまで描ききっている。これまでも短編を中心に完成度の高い作品を描き続けてきた増田剛だが、一つ長編を描き上げたことは新たな一歩を踏み出すいいきっかけになるんではないかと思う。なお3月には「うらまっく」名義の単行本、「穴があいてる」(実業之日本社:bk1/Amzn)も発売されている。 【次頁】
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