漫画的男子しばたの生涯一読者■ はなのいろはうつりにけりな 〜雑誌2002年2月は、なぜかはよく分からないけれども新創刊や休刊、リニューアルなど、大きな動きを見せる雑誌が相次いだ。というわけで今回はまず、そういった雑誌の情報から行ってみよう。 「コミックブレイド」4月号 【新創刊】 マッグガーデン
本連載の第20回でも触れたが、昨年後半どうやらゴタゴタがいろいろあったらしく、エニックス系の雑誌(ガンガン、ステンシルなど)の主力作家が次々と連載を終了して注目を集めた。その後、これらの作家陣はおおむねマッグガーデンの「コミックブレイド」と一賽舎の「コミックゼロサム」(3月28日創刊予定)へ移ることになった。 その2誌のうち、まず「コミックブレイド」が2月28日、桜野みねね「まもって守護月天!再逢」を看板に、700ページ超のボリュームで華々しく登場した。女性系の作品が多めで、印象的にはエニックスの少女漫画誌「ステンシル」に近いかなといったところ。「コミックブレイド」を制作するマッグガーデンだが、結局のところ株式の50%をエニックスが取得し、今後も「企画・プロデュース」という形で関与していくことに落ち着いたらしい。このような状況で、今後どれだけ独自色が打ち出していけるか。「コミックゼロサム」ともども、注目が集まるところである。
「ワル蔵」Vol.2 【休刊】 ワニマガジン
前回、創刊の報をお知らせしたばかりだが、第2号であえなく休刊となってしまった。このあたりは、ワニマガジンの一般青年誌に対するノウハウ不足がもろに出てしまった感がある。CD-ROM付きで350円と、なかなか意欲的な創刊劇を見せた雑誌だけに、ちょっと惜しい。 「COLORFUL萬福星」Vol.22 【休刊】 ビブロス
こちらも休刊である。全作品がCGを使って作画されたH漫画雑誌という、なかなかユニークな存在だっただけに惜しまれるところ。執筆陣でも、A10や春沢一といった、非常に完成度の高い達者な絵柄の持ち主や、土くさい暖かみとSF風味を兼ね備えたエロを描く粟岳高弘といった印象深いメンツが揃った雑誌だった。またこのような特徴のあるH漫画雑誌も出てきてほしいものだが。 「コーラス」4月号 【リニューアル】 集英社
大人の女性向け少女漫画雑誌といった趣のある「コーラス」が、2月発売号からリニューアル。その第1号は「コーラス特製ポーチ」がおまけでついて390円。連載陣も大幅に入れ替わっている。表紙の印象からいうと、今までよりも若干俗っぽくなった感じか。さらに3月末発売の5月号からは300円に値下げするということで、全体に間口を広げようとしている様子が伺える。
「OURs LITE」4月号 【リニューアル】 少年画報社
これまでB5中とじだったのが、B5平とじに変更されボリュームアップ。値段的にも380円から580円に上がっているが、その分もりだくさんな内容となった。オリジナリティあふれる若手作家の読切を積極的に掲載し、個人的にはかなり注目している雑誌だったりするのだが、今回のリニューアルでパワーはよりアップしたという印象を持った。リニューアル号では、伸びやかで非常に完成度の高い気持ちのいい絵柄の持ち主である猪原大介+オオシマヒロユキの新連載「UNLOCK」が始まったほか、メルヘンチックで軽やかな作風の持ち主である山名沢湖「迷子になる」などが目についた。また、本連載の22回めで休刊の報をお伝えした「アワーズガール」から、芳崎せいむ「金魚屋古書店出納帳」も移籍してきている。市場としてはニッチだろうけれども、応援したい雑誌である。
「アフタヌーンシーズン増刊」Spring Vol.10 【発売日変更】 講談社
これまでは季刊で発行されていた「アフタヌーンシーズン増刊」だが、次号から偶数月発売の隔月発行に変更される。現在は「アフタヌーン」本誌の誌面が連載をメインした安定志向を強めていて、同誌の新人賞である四季賞系の若手作品の登用が少なくなってきつつあっただけに、そういったフレッシュな戦力を登用しやすい増刊枠の発行ぺースが上がるのは喜ばしいところ。この号でも、そんな作家の一人、もみじ拓の読切「かいじゅうの背番号」が目立った。この作品は、なんの変哲もない幸せな三人家族の父母が、人間の姿形をしているけれども実は怪獣であったという設定のもと、迫害される者の悲哀と家族のドラマを描き、しみじみとした読後感を残す作品に仕上げている。このような読切が掲載される機会が、これからも増えてくるとうれしい。 「マンガ・エロティクスF」Vol.14 【発売日変更】 太田出版 [bk1]
こちらは月刊だったのが隔月刊行となってしまった。これからは偶数月末発行となる。サブカル系の雑誌の中では、最近とみに新鋭の起用が目立ち、雑誌として面白くなっていたが、個性的な作家揃いということもあり月刊ぺースでクオリティを保つのは確かにキツかったかもしれない。昨今のクオリティを維持するためには、刊行ペースが空いちゃうのは仕方ないかなという気はする。なお4月末発売号については、比古地朔弥、志村貴子の新連載、山本直樹、小田扉のレギュラー化、三宅乱丈初登場、南Q太連載再開が予告されている。個性的なメンツが揃っていて、より面白くなりそうな感じではある。 そういえば「マンガ・エロティクスF」の発売日変更により、「ガロ」(青林堂)、「アックス」(青林工藝舎)とともに主要サブカル漫画誌が全部隔月発行になったなーと思っていたら、今度は「ガロ」が3、6、9、12月の季刊発行となるというニュースが飛び込んできた。ガロについては昨年の7月に隔月化されたばかりだったが、約半年で今度は季刊へと後退したことになる。明日はどっちだ。 【次頁】 page 1/3
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