漫画的男子しばたの生涯一読者
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漫画的男子しばたの生涯一読者

■2001年の雑誌を振り返りながら

遅ればせながら新年あけましておめでとうございまーす! 今年もガンガン漫画を読んでいきたいと思いますんで、2002年もよろしくおつき合いいただけますと幸いでありますっ!!

というわけで、年明け一発目は昨年の12月の漫画から。2002年最初ということで本当は「2001年回顧」とかでもしたほうがいいと思うんだけど、実のところ昨年は2000年よりもなぜか漫画を読む量が増えてしまって、どうにも頭が整理できていなかったりする。申しわけない。とりあえず単行本や読切までは手が回っていないので、手始めに雑誌シーンだけ軽く振り返ることにしたいと思う。

総じて2001年は、出版界の不況ぶりが多方面から読者サイドにも実感として伝わってきた1年だったといえると思う。なんでも2001年は、出版界全体での雑誌休刊数が過去最高だったらしい。そういったことを考えていると鬱々とした気持ちになってくるが、期待したくなるような話題も多少はあった。その中でとくに印象的だったのが、「コミックバンチ」(新潮社)と「イブニング」(講談社)という二つの大型創刊劇。

とくに「コミックバンチ」は第15回、16回で連続して取り上げたのでそちらを参照してほしいが、漫画界としては久々の週刊誌の創刊ということもあり大きく注目を集めた。その後はさすがに創刊時の勢いはなくなったようだが、業界に大きな一石を投じたことは確かだ(バンチ創刊当時、新連載攻勢などで誌面強化を図ったライバル誌もけっこうあった)。それから「イブニング」は第19回で取り上げたが、こちらは月刊誌ながら、2分冊での発行やマウスパッドや携帯ストラップなどのおまけをつけるといった戦略でインパクトを与えた。おまけ戦術については前回で述べたとおり、イブニング以来ちょっとしたブームになりつつある。出版不況というのはまぎれもない事実ではあるけれども、このあたりの雑誌を見ていると、まだ誰も試していない新たなやりようも、もしかしたらあるのかもしれないと思わされるものがあった。

もう一つ楽しみに見ていたのが、「ビッグコミックスピリッツ」系(小学館)の雑誌。本誌が新人作家を精力的に起用し連載陣も安定していたのに加え、増刊枠でも2000年末に創刊された「IKKI」「山田x号」が健在。さらには第17回でも紹介したとおり2001年6月には新人競作増刊の「新僧」も加わり、それぞれの雑誌が異なる持ち味を発揮していた。とくに「コミックは、未だ黎明期である」というキャッチフレーズの元、個性的なメンツをズラリと並べた「IKKI」はコミックスシリーズも発刊され、「コミックバンチ」「イブニング」と共に、2001年を代表する雑誌の一つだったといっていいと思う。

その一方で、過去の名作を復活させるリバイバルブームも目立った1年だった。作品単位での復活もいろいろ見られたが、リバイバル専門の雑誌まで創刊されたのは驚きだった。第15回で紹介した1冊まるまる再録雑誌「コミック特盛」(ホーム社)、美内すずえ「ガラスの仮面」再録雑誌の「月刊ガラスの仮面」、それから新作ではあるけれども基本的には旧作の続編系作品中心の「コミック伝説マガジン」(実業之日本社)。このあたりは、不況の影響もあり保守的になりつつある現在の漫画界の状況を表しているといえそうだ。

そういえば、ここまでで名前が出てきた雑誌はおおむね青年誌である。これは筆者の読書傾向のせいでもあるのだけれど、少年・少女誌にはかばかしい動きがなかったというのも事実。少子化、娯楽の多用化、携帯電話に金銭および時間をとられている若者事情などなど、漫画界が若年齢層の新規読者を獲得するのが難しくなっている事情も伺わせる。2002年はこのような閉塞状況を打破できるような雑誌、そして新しい戦略が少しなりとも見えてくるといいのだけれども。まあ何にせよ沈んでいたって始まらない。読者としては読み続けていくことしかないし、読むべき漫画は一人の人間ではチェックしきれないくらいたくさんある。というわけで2002年もがんばりましょー。

またしても前置きが長く、しかも景気の悪い話題になってしまったが、2001年12月創刊の雑誌も1冊紹介しておこう。

「恋愛天国」VOL.1 (竹書房)
恋愛天国
「恋愛天国」VOL.1
竹書房
判が普通より小さめのA5で分厚い平とじ、Hシーンありの女性向け雑誌。最近この手の小型で分厚い女性向け漫画雑誌が増えているのか、書店でも目立つようになってきた。個人的にはカラッと明るくてマイペースな楽しい作品を描く大久保ニューと、きれいにまとまった幸せなラブストーリーの描き手である池部ハナ子が目当てだったのだが、そのほかの作品もけっこう楽しめるものが多かった。藤堂はくるのフレッシュでイキの良い読後感、山田可南のスッキリとして暖かみのある画風、笹鳥小町、雛木しずからも健闘。なかなか先が楽しみな1冊。 >>次頁
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