漫画的男子しばたの生涯一読者
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漫画的男子しばたの生涯一読者

■まずはおまけの話から 〜雑誌

最近、漫画界では「おまけ」が流行中である。少女漫画雑誌ではこれまでもおまけつきは珍しくなかったのだが、これが青年誌や少年誌にも及び始めた。この流れに先鞭をつけたのは講談社だ。8月に創刊した「イブニング」やCLAMP「ちょびっツ」初回限定版単行本などの好調を受け、各社がおまけつき本に積極的に取り組むようになってきたのだ。付いてくるものとしてはストラップ、マウスパッドといったこの手のおまけとしては「よくあるもの」が主流だが、中には佐々木倫子「Heaven?」(小学館)のなべつかみや、後述するIKKIコミックス松本大洋「ナンバーファイブ」(小学館)初回特装版のフィギュアなど、風変わりなものまで出現し始めた。

作:GAINAX+画:貞本義行「新世紀エヴァンゲリオン」7巻の場合は、クリスマスバージョンとしてフィギュア付きの限定版が発売されるが、フィギュアにはアスカ版とレイ版が存在し、マニアとしては両方買わなければ……という状況になっている。雑誌でも「ウルトラジャンプ」(集英社)の2002年1月号がマウスパッドを付けたり、ワニマガジンが2002年1月15日に創刊する予定の「ワル蔵」ではデジタル画集CD-ROMが付属すると予告されている。おまけブームはますます加速する様相を見せているのだ。

個人的には、こういう傾向は正直あんまりうれしくない。わざわざ初回限定版を求めて書店を歩き回ったり予約したりといった手間をかけるのも面倒だし、何か出版社の仕掛けに躍らされているみたいで面白くない。キャラクターもののマウスパッドなんて、表面がつるつる滑って使いにくいし、何枚も持っててもしょうがないし。それよりも内容で勝負してよ……とは思う。

とはいえ、このところの漫画業界を見ていると、マニア系ではとくに、オリジナルテレカの通販をしたりグッズなどのサイドビジネスを手がけている雑誌が目立つ。おそらく制作側も本来は漫画そのもので勝負したいという気持ちはあるだろうが、読者層の固定化が進み市場が停滞している現在、付録で読者にインパクトを与えるとともに、付加価値をつけて起爆剤としたいという意向も理解できる。また、読者サービスの一環としてグッズをつけるという気持ちも分かる。雑誌については、おまけを付けたからといって値段を上げているわけではない。単行本も初回限定版でなく普及版を買えば余分な費用はかからない。それでもなお、なんとなく、なんとなくだが釈然としない気持ちは残るのも確かなのである。このおまけブームが今後さらにエスカレートするのか、一般的に定着するのか、それとも一時の現象で終わるのか。注目していきたいと思う。

……とまあ前置きが長くなったけど、ここからはいつもどおり本題である2001年11月の漫画チェックに入ります。

ソニー・マガジンズがコミックから撤退。バーズ、ルチルは幻冬舎コミックスへ
コミックバーズ
「コミックバーズ」
幻冬舎コミックス
これまで「コミックバーズ」「ルチル」などの雑誌を発行していたソニー・マガジンズが、11月をもってコミック部門から撤退することとなった。といってもこれらの雑誌がなくなるわけではなく、新会社である幻冬舎コミックスへ編集部ごと移籍することが決まっている。12月からこれまでと同様のぺースで「コミックバーズ」「ルチル」は発売されることとなっているし、単行本の発行も幻冬舎コミックスにしっかり引き継がれているので、読者としてはとりあえず一安心といったところだ。

思い起こせば「コミックバーズ」や「ルチル」は、1999年3月のスコラ倒産により、編集部ごとの移籍をすでに一度経験している。そもそも編集部ごと別出版社へ移籍するケース自体珍しいのに、それを二度も経験しているというのは異例中の異例である。「コミックバーズ」自体、スコラ時代に休刊した「コミックバーガー」の連載を引き継いで創刊された雑誌であり、こういうふうになってくると何かもうたたられているんじゃないかとさえ思えてきてしまう。ここは一つ、出版社を移ったのを契機に誌名を変えて完全リニューアルしてゲン直しでもしたほうがいいんじゃないかなーなどと、ついつい思ってしまったりもする。

「今市子大総集篇(アワーズガール No.5)」 (少年画報社)
アワーズガール No.5
「アワーズガール」 No.5
少年画報社
新感覚少女漫画雑誌としてスタートした「アワーズガール」だが、5号めは今までとは打って変わって「今市子大総集篇」という形で発行された。読者コーナーの編集部コメントによれば2002年の発行は決まっていないそうで、「未完の作品は何かの形で皆さんの目に届くようにしたい」とのこと。このコメントから、どうやらこれが最終号となってしまうらしいことが伺える。特集されている今市子だけでなく、繊細な作風の藤原薫、ホラー系の新鋭・呪みちる、ラブコメ魂を満喫させてくれる犬上すくねなど個性派の多かった雑誌だけに惜しい。
「漫画世代」 No.1 (辰巳出版)
漫画世代 No.1
「漫画世代」 No.1
辰巳出版
こちらは景気の良い話題……になってくれるといいんだけど。中高年齢層をターゲットにした新漫画雑誌が創刊。第1号の執筆陣は、三山のぼる+嶋本周、石井さだよし+剣名舞、宮尾たけ史+やまざきみき、つくしの真、川島ビリッジ、坂辺周一、なすの庸一、岩田和久+森山祐介、多岐かいし+粕谷秀夫、エリオット後藤、山本直樹、小平小平。全体的に30歳代後半〜50歳代向けの雑誌をきっちりまとめようとしている様子は伺えるが、もう少しむちゃくちゃなことをする、イキのいい作品があってもいいかなという気はする。 >>次頁
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