漫画的男子しばたの生涯一読者
TINAMIX

漫画的男子しばたの生涯一読者

■リイドよさらば(爆) 〜雑誌

今回はまずサブカル系雑誌2冊の話題から行ってみよう。

「アリエス」 (青林工藝舎) [bk1]
アリエス
「アリエス」
青林工藝舎
隔月発行のサブカル誌「アックス」の初の増刊号。「アックスの友」と銘打たれているが、基本的には「アックス」の連載作品とは独立した読切がメインである。執筆陣は、漫画が丸尾末広、成田朱希、吉田光彦、松井たまき、大越孝太郎、谷弘兒、河合克夫、萩原利夫、春礼六、宮西計三、早見純。さらにコラムで睦月影郎、蜂巣敦(挿絵・逆柱いみり)、にむらじゅんこ、唐沢俊一、鈴木漁生(挿絵・三本美治)、イラストで花輪和一、佐伯俊男、山本タカトが参加している。その筋のマニアならば垂涎のラインナップといえる。内容的にもかなりハイレベル。丸尾、宮西、早見……といった大御所的作家だけでなく、異常に長い睫毛を持ったキャラの造形がグロい萩原利夫あたりも非常にインパクトがある。全体に耽美的で、「妖しいオトナのお楽しみ」という雰囲気。
「マンガ・エロティクス 2001年冬」 (太田出版) [bk1]
エロティクス
「マンガ・エロティクス 2001年冬」
太田出版
「マンガ・エロティクス」といえば以前は定期刊行されていた雑誌だったが、最近では毎月発行の「マンガ・エロティクスF」ができたこともあり、もう出ないものだとばかり思っていた。それがいきなり、1年ぶりに発行された。今回は漫画執筆陣として、古屋兎丸、塔山森、町田ひらく、駕籠真太郎、華倫変、松本耳子、やまだないと、町野変丸、小木曽幸穂、葭路豆子、藤田直哉、福山庸治、卯月妙子と、筆者的に見て非常に豪華なメンツが揃った。TINAMIXでもインタビューが掲載されたことのある古屋兎丸、風格さえ感じさせるエロの天才・山本直樹=森山塔=塔山森。町田ひらくの透明感と苦み、それから駕籠真太郎のサイコでクールなブラックジョークなどなど、見どころは非常にたくさん。さらに個人的にヒットだったのが、華倫変「酒とばらの日々」。酔っ払っていなければ生きていけない女性の、ズタボロでもの哀しい生き様を描いた良作である。憂いと諦念と、そして細やかな情念と暖かみを同時に感じさせる作風に心動かされる。

この本も含めて、エロティクス系列は最近とみに充実度が高まってきたなと感じる。「マンガ・エロティクスF」は月刊ぺースの発行となり毎月コンスタントに連載陣が力を発揮しているうえ、ちょくちょく若手作家を起用している点も見逃せない。他ではなかなか見られない個性的な作家陣を継続して起用できる器が用意されたことで、地力がついてきたという印象である。また「マンガ・エロティクス」のほうは今や増刊的な存在となったが、こちらは力をためて一気に気合いの入った作品を投入するといった感じで充実ぶりを見せた。月刊誌と不定期誌が、うまく相互補完できているように見受けられる。まあそれが売れ行きに即つながるかどうかは知らないが、個人的には毎号非常に楽しみに読んでいる。この調子をこれからも維持していってもらいたい。

「リイドコミック爆」12月号(休刊号) (リイド社)
リイドコミック爆
「リイドコミック爆 12月号」
リイド社
本連載の第14回でお伝えしたとおり、今年3月、「リイドコミック」がリニューアルして誕生した「リイドコミック爆」だが、8号で休刊となった。すべての作品を新規で起こすなど、起死回生のリニューアル策に賭けたわけだが、あえなく散ってしまったという形だ。ただ、この雑誌で一つ救われるのは、掲載作品のほとんどが単行本化されること。リニューアル号ですべての作品が新連載だったため、現時点でどの作品ももうちょっと描き足しをすれば単行本にまとまる分量になるくらいまでページ数がたまってきていたのが不幸中の幸いだった。とくに東南アジア的な風物の名手・深谷陽の「ガディスランギ」(20002年1月下旬予定)、気合いバリバリヤンキー漫画の雄・石山東吉「カマキリン」(2002年2月下旬、「オフィス北極星」の中山昌亮「レネゲイド」(2002年3月上旬)あたりは楽しみだ。現時点では、長らく続いた「リイドコミック」ブランドの雑誌が消滅したことになる。それはちょっと寂しいことだが、きちんと単行本化の予定を示してきれいに幕を引いてくれたことには感謝したい。 >>次頁
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