漫画的男子しばたの生涯一読者
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■イブニングの夜明け!? 〜雑誌

今年の8月は暑かった〜、という印象はあるんだけど、実際のところそんな暑くなかった日が案外多く、そういえば今年の夏コミケ(すみません。今年も行ってないです)は涼しかったという感想もけっこう耳にした。そんな中、アツい新創刊雑誌が出てきたのでまずはその話題から。

「イブニング」9月号 (講談社)
イブニング
イブニング
講談社
8月の雑誌で最も大きな話題といえばコレでしょう。講談社から、「モーニング」「アフタヌーン」に続いて「イブニング」が創刊。今年の4月発売号が最終号となった「モーニング新マグナム増刊」をベースに、「モーニング」系の作品や新作などを加えての新創刊となった。

「イブニング」は毎月19日発売の月刊誌だが、今年でいえば新潮社の「コミックバンチ」に次ぐくらいの大型創刊という印象。何せ創刊時の気合いの入れようがハンパじゃなかった。まず、B5中とじ2分冊で、なおかつビニール詰めという形態は前代未聞(これは創刊号だけで以降は1冊となる)。さらに創刊号は、店頭に机を出して販売していた書店も多かったようで、書店売りの分についてはクリアファイルやキーホルダーなどが特別付録として用意されていた。モーニング本誌でも毎号、倉田真由美による「イブニング」応援漫画を掲載するなどしてバックアップ。その甲斐あって、創刊号は実売率90%を上回る好調な売れ行きを記録したらしい。

イブニング

2分冊900ページ超という大ボリュームで執筆陣も豪華。以下のような面々の作品が掲載されている。

弘兼憲史、佐藤マコト、片山まさゆき、作:田島隆+画:東風孝広、三宅乱丈、水島新司、秋月りす、木葉功一、杉作、作:田中誠一+画:所十三、吉田基已、富田安紀良、高倉あつこ、いとう耐、高橋のぼる、小林まこと、さだやす圭、正木秀尚、小田原ドラゴン、三田紀房、惣領冬実、安田弘之、、風間やんわり、郷田マモラ、伊藤理佐、作:西村ミツル+画:吉開寛二、浜口乃理子、鈴木あつむ

目玉となる作品は弘兼憲史「ヤング島耕作」やさだやす圭「ああ播磨灘外伝」など、モーニングのヒット作の外伝的なものが多いものの、吉田基已「恋風」のような新鋭による注目作もあるし、ジャンルの面から見ても偏りはなく、足りない点が見当たらない。さすがに豪華メンツが揃っているだけに、創刊号だというのに非常に安定感のある面白さだった。個人的には、予告を見た時点であまり目新しい作品がなさそうだったのでさほど過大な期待はかけていなかったのだが、予想よりもだいぶ面白く感じた。

とはいえ気になる点もあって、まずは表紙にある「オール読み切り」という売り文句。続き物作品もけっこうあるので、これはちょっと違和感がある。まあ女性向け漫画雑誌では「その号その号で読み切ってほしい」みたいな意味で「読み切り」という言葉を連載に対しても使っているところが多かったりするんだけど、男性向け漫画雑誌ではあんまりなじみのない表現なのでこれは避けてほしかった。それからもう一つ、2分冊のどちらを先に読むべきか分かりにくかった。作:田島隆+画:東風孝広「極悪がんぼ」は、2冊に分かれて前後編が載っているので、順番はしっかり示してほしかったところ。いちおう表紙にA、Bの表記はあるものの、文字が小さくて見逃してしまいがちだった。

実際のところ、読んでもあんまり新雑誌ならではのワクワク感はない。斬新でもない。「モーニング」が濃度を落とさないまま2冊になったという感はある(「モーニング」自体が濃い雑誌ではあるんだけど)。とはいえ、クオリティは高かったし安心して楽しめた。この質を落とさずに、もう少し新鮮味のある作品が増えていってくれればなあと思う。とりあえず結論としては、間違いなく「買い」ではある。

「RELEASE」No.1 (蒼馬社)
RELEASE
RELEASE
蒼馬社
こちらも新雑誌なんだけど、なんか妙な味わいのある本。雑誌のキャッチコピーは「アチドルコミック」。なんじゃそりゃと思う人も多いだろうけど、「アーティスト&アイドル」の略であるらしい。アイドル漫画というと、昔からちょっぴりヘンな感覚の本が多いんだが、この本もそういう漫画で埋まっている。取り上げられているアチドルは、モーニング娘。、浜崎あゆみ、ゆず、DA PUMP、PIERROT、CASCADE、ELT、aiko、GLAY、LA’rc〜en〜Ciel、Kafka(オリジナルヴァーチャルバンドであるらしい)。この中ではなんといっても「モーニング娘。プリティ・コレクション」が飛ばしている。始まって数ページで、モーニング娘。の1998年8月以降の主な出来事が文字ベースでずらーっ羅列される見開きがあったり、漫画としてはずいぶん間違った感じなのがスゴイ。しかも現在のメンバー・ユニット構成、メンバーの入れ替わり履歴、登場CM一覧なんかもやってて、思いもよらず勉強になってしまった。
発行元の蒼馬社は、このほかにも宇多田ヒカルやGLAYなどの実録コミックスである「ヤングサクセスシリーズ」という単行本シリーズも出している。その手の漫画が(いろいろな意味で)好きな人は要チェックだ!
「ヤングキング 9/30増刊 やんちゃ」 (少年画報社)
ヤングキング 9/30増刊 やんちゃ
ヤングキング 9/30増刊 やんちゃ
少年画報社
「ヤングキング」といえば、ヤンキー系の作品の割合が多いことでも有名。というわけでこの増刊はその手の漫画ばかり集めた「ツッパリ増刊」。とはいっても、ガチンコでハードに喧嘩したり暴走したりしてる漫画ばかりではなくて、わりとまったりした感じ。この号で気になったのは、吉本蜂矢「デビューマン」、それからずいぶん昔に「週刊少年チャンピオン」で「らんぽう」を描いていた内崎まさとしが登場していたこと。なお、少年画報社では今冬、この増刊シリーズの第2弾「ふざけるな」を発売するとのこと。
「メガフリーク」10月号 (FOX出版)
メガフリーク
メガフリーク
FOX出版
漫画マニア系書店として名高い「とらのあな」の出版部門であるFOX出版が、同人系などから新鋭作家を登用して2000年6月に創刊した雑誌だったのだが、残念ながら休刊となってしまった。インディーズコミックシーンを盛り上げようという心意気は買えるものがあったけれど、このご時世では休刊もやむなしといったところか。むしろ健闘といえる部類だった気がする。大島とわ、粟岳高弘ら、面白い人材もちらほらいただけに、掲載作品の続きがどこかで読めるといいなあと思う。あと余談ながら、表紙に「今号が最終号です。ありがとうございました。」ときちんと記すあたりは、読者に筋を通してくれた感じがして清々しい気持ちになれた。>>次頁
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