漫画的男子しばたの生涯一読者
TINAMIX
漫画的男子しばたの生涯一読者
しばたたかひろ

■例のアレ、読みましたか? 〜雑誌

今回は5月の漫画から。で、5月といえばやっぱり例のアレの話から。

コミックバンチ (新潮社)
コミックバンチ
「コミックバンチ」
創刊号
新潮社
前回、まだ読んでもいないのに思わず書いてしまった週刊コミックバンチ。さすがに近年まれに見る大型創刊劇だっただけあって、かなり注目を集めたようだ。読者の中にも、そろそろ「毎週火曜=バンチ」という図式が定着してきた人はけっこういるのではなかろうか。第1号の売れ行きは実売で8割前後と報道されており、滑り出しとしてはかなり優秀といえそうだ。

筆者も実際に読んでみたが、個人的な感想としては想像以上に面白かった。とくに創刊号は、原哲夫「蒼天の拳」(監修・武論尊)、北条司「Angel Heart」、今泉伸二「リプレイJ」(原案・ケン グリムウッド)、おおつぼマキ「貧民の食卓」、作:柴田練三郎+漫画:柳川喜弘「眠狂四郎」、次原隆二「Restore Garage 251」、渡辺保弘「ワイルドリーガー」と、7本しか作品が掲載されていないのにどの作品も読みごたえがあって、その他の青年誌と比べてもボリューム感はむしろ上回るようにさえ思えた。その後、こせきこうじ「現在大無職 再就職活動中 山下たろ〜くん」などの新連載も次々と始まって作品数は増えているが、第一話から「練れている」作品が多い。作家と編集者がしっかり打ち合わせて、全力を傾注して作っているんだろうなあということが誌面からビシバシ伝わってくる。実績のある作家は多いが、いずれも手癖で描いてないという印象を受けた。思った以上にどの作品も「読める」のだ。

ただし、創刊前からの懸念としてあったとおり、旧少年ジャンプ系列の作品のリバイバルといった雰囲気があるのは事実。また、創刊プレゼントにゴルフクラブやドン・ペリニヨンがあったりと、ジャンプ600万部世代の二十代後半〜三十代前半をメインターゲットとしているりには、いささか脂っこい=オヤジくさい雰囲気が充満している。その世代の読者だと、も少し爽やか・元気なもののほうが好まれそうな気がするんだがどうだろうか。どちらかといえば「青年誌」というよりも「劇画誌」というほうがイメージ的にぴったりくる。そういった点から見ると、今後この雑誌がどの程度市場に受け入れられるか、なんとも微妙だなと思えてしまう。

とはいえ、コミックバンチが元気をなくしつつあった漫画界に、一つデッカい石を投げ込んだ存在であることは疑いない。創刊号で発表された、賞金総額1億円グランプリ5000万円で読者投票で受賞者を決める漫画賞もインパクトがあった。コミックバンチ自体が成功するかどうかはともかく、この創刊劇に刺激されて漫画界全体の競争意欲が高まり、活性化してくれれば読者としても非常にありがたい。そういった起爆剤的な役割も含め、いろいろな意味でバンチにはこれからも期待していきたい。

GOTTA (小学館)
GOTTA
「GOTTA」
7月号
小学館
こちらは7月号であえなく休刊となってしまった。創刊が1999年の12月だったので約1年半でおしまいになったわけだが、個人的には非常に惜しい雑誌だったと思っている。それはGOTTAが、近年では珍しく中学・高校生を中心とした若年齢層にハッキリとターゲットを絞って創刊された雑誌だったからだ。

ここ数年の創刊誌を見ていると、二十代後半〜三十代前半のいわゆる「コアな漫画世代」という横つながり、もしくは年齢層は限定せずジャンルで的を絞る縦つながりを狙った雑誌が多かった。また既存の雑誌でも前出のコアな漫画世代の成長とともに対象年齢を上げていく傾向が見られる。しかし、これでは若い世代にはアピールしにくい。いつまでも既存読者をメインターゲットにし続け、新しい読者を育てようとしなければ、漫画界全体が先細りになっていくのは目に見えている。すべての既存読者がいつまでも現役でいられるわけではないのだから。それだけにこの雑誌は根気強く続けてほしかった。まあ確かに誌面を見てみると、希代の怪傑作、原哲夫+高橋克彦「阿弖流為II世」(本連載第11回で紹介。→bk1)が終わって以来、いまいち元気がなかったのは確かで、仕方ないかなという気はするんだけど……。

CUTiE comic (宝島社)
CUTiE comic
「CUTiE comic」
7月号
宝島社
こちらも7月号をもって休刊。CUTiE comicといえば、この手の、少女を卒業したくらいの女性向けのハイクオリティ漫画雑誌のハシリとなったエポックメーキングな存在だっただけに、突然の休刊は驚きだった。確かにここしばらく、小野塚カホリ、南Q太、魚喃キリコといった、この手の女性向け雑誌のメジャーどころは掲載されなくなっていたものの、その分、成長途上にある若手作家を多数登用していた。個人的にはメジャーどころを多数起用した雑誌は、ほかに似たような雑誌が増えてきていたので、かえって休刊直前のCUTiE comicのほうが面白かったとさえ思っていたので非常に残念。CUTiE comic掲載作家の今後の動向も気になるところ。その中でも本連載第12回で単行本を紹介した羽海野チカには注目していたが、どうやら7月7日発売予定の「YOUNG YOU」(集英社)に読切が掲載されるようである。
Zipper comic (祥伝社)
Zipper comic
「Zipper comic」
6+7月号
祥伝社
CUTiE comic休刊の後を受けて……というわけでもないだろうけれど、これまで不定期刊行だったのが、5月に発売された6+7月号から隔月刊行になった。CUTiE comicが拓いたこの路線の正当な後継者とでもいうべき誌面だが、6+7月号についていえば、ビッグネームと若手のバランスがちょうどいい具合にとれていて新鮮味もあり、なかなか面白く読める誌面となっていた。この号の漫画執筆陣は朔田浩美、宇仁田ゆみ、藤末さくら、吉本蜂矢、小野塚カホリ、桜沢エリカ、栗生つぶら、三原ミツカズ、高瀬志帆、藤原薫、南Q太。
ガロ 青林堂
ガロ
「ガロ」
6月号
青林堂
隔月発行になったといえばこの雑誌もそう。今度から奇数月10日発売となるとの告知があった。といってもZipper comicが不定期→隔月と発行頻度が上がったのに対し、ガロは月刊→隔月刊と発行ぺースが落ちている。かつて何度も危機的状況を迎え、一時的な休刊も経験してきている雑誌なので心配。杞憂で終わらせてくれるといいんだけど。
COMIC CUE イースト・プレス [bk1]
COMIC CUE
「COMIC CUE」
Vol.100
イースト・プレス
久々に出たと思ったら一気にリニューアルされた。前に出た号がVol.9だったのに、今回は10〜99を一気に飛ばしてVol.100に。判型もB5平とじからA4平とじと大きくなり、薄めのムック的な装丁になった。中身も変わっており、フルカラーページが半分以上を占める。今回の執筆陣は、groovisions、ばばかよ、朝倉世界一、100%オレンジ、吉田戦車、サトウナオコ、かわかみじゅんこ、しりあがり寿、寺田克也、タカノ綾、水谷さるころ、中河いさみ、やまだないと、本秀康、魚喃キリコ、黒田硫黄、おおひなたごう、南Q太、古屋兎丸、Nendo graphics(草野剛)、大畑信太郎、西島大介、とり・みき、和田ラヂヲ×大竹信朗、小松崎茂、横山裕一、地下沢中也、水野純子。ページ数的に短い作品が多いが、さまざまな作家の個性的な彩色が見られるのは楽しいし、全般にとてもオシャレな雑誌となっている。
error 美術出版社 [bk1:Vol.00/Vol.01
error
「error」
Vol.01
美術出版社
漫画雑誌の中でもアート色の強さでいったらまさにトップランクといえる雑誌がコレ。第12回めで準備号となるVol.00を取り上げたが、今回のVol.01で本格創刊となる。描画テクニック解説にスポットを当てる情報誌「コミッカーズ」の別冊であるだけに、執筆陣の作画レベルは非常に高い。今回は福島敦子、田中達之、平凡、丹地陽子、中澤一登、D、ベジアン、前嶋重機、ヨコタカツミ、kumiko、春平、シュイッテン&ペータースの漫画を掲載。それからピンナップがDKともりおかしんいち、表紙は森本晃司。Vol.00で予告のあった谷口ジロー+メビウス「イカル」の続編はまだ始まっていないが、漫画のアート的な側面に興味のある人には一読の価値ありだ。 >>次頁
page 1/3
==========
ホームに戻る
インデックスに戻る
*
前ページへ
次ページへ