今回のチェック期間で目立ったのが、秀作の最終回が相次いだこと。大物作品もけっこう多く印象に残った。ちょうど年度始めの区切りの時期というのもあったかもしれない。というわけでここのところで目立った終了連載を挙げていってみよう。
・「ビッグコミックスピリッツ」 4/16 No.18 (小学館)
・「ヤングサンデー」 4/19 No.18 (小学館)
・「週刊少年チャンピオン」 5/3 No.21 (秋田書店)
・「週刊少年ジャンプ」 4/30 No.20 (集英社)
いとうみきお「ノルマンディーひみつ倶楽部」
[bk1]
などなど。このほか、3月分になってしまうけれども「ヤングサンデー」では3/29 No.15で新井英樹の大作「ザ・ワールド・イズ・マイン」(
→bk1)が完結している。これまでいろいろと楽しませてくれた連載が終わってしまうのは寂しいけれども、その代わり新連載も登場してくるわけだし、何より連載終了時は単行本を揃えるチャンスでもある。この機会にまとめ買いしてみてはいかがだろうか。というわけで単行本の項と同様にbk1へのリンクも張っておいたのでご利用あれ(まだ最終巻は出てないのがほとんどだけれど)。どの作品もオススメなのだけど、この中では、近年まれに見る圧倒的なスケールを持った作品であった「ザ・ワールド・イズ・マイン」、大胆すぎるほどの殺戮描写が快感である「殺し屋イチ」、そして少年らしい腕白さあふれる「おまかせ!ピース電器店」を強くプッシュしておこう。
「刑務所の前」 花輪和一
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「刑務所の前」
花輪和一
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昨年、青林工藝舎から刊行された花輪流獄中記「刑務所の中」(→
bk1)が話題になったことは記憶に新しいところ。「ビッグコミックオリジナル 5月増刊号」5/12(小学館)からスタートした「刑務所の前」はタイトルから連想されるとおり、花輪和一が拳銃不法所持で刑務所にブチ込まれる前のエピソードを描くというもの……だったはずなのだが、なぜかお得意の時代モノになっていたりするからびっくり。こういうあっけらかんとした芸当は花輪和一ならでは。異様な執念で細部まで描き込む画面作りも健在。
「蛮勇引力」 山口貴由
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「蛮勇引力」
山口貴由
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「覚悟のススメ」「悟空道」といったパワフルな作品で知られる山口貴由の新連載が、「ヤングアニマル」4/27 No.8(白泉社)から始まった。これは「神機力」の力により治められた未来都市・神都をひっくり返そうとする男「由井正雪」を主人公とする物語である。神機力Q発電「国常立尊」、徳川神機力産業超重厚層都市「富愕」、神機力都知事「松平伊豆守信綱」などなど、相変わらず気合い入りまくりな文字が並んだ言葉の連続にクラクラする。最初からハッタリがききまくっていて、かなりテンションの高いアクションSF大作になりそうな気配だ。
「日露戦争物語 〜天気晴朗なれども波高し〜」 江川達也
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「日露戦争物語」
江川達也
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物議をかもした「東京大学物語」に続く江川達也の新作は、なんと実録系の戦争モノであった。日露戦争の日本海海戦において作戦参謀を務めた海軍中佐、秋山真之の物語である。かわぐちかいじの「ジパング」もそうだけど、現在日本が不況化にあるせいか、このところ「強い日本」を連想させる軍国モノが盛り上がってきているような気もする。この連載は「ビッグコミックスピリッツ」5/7+14 No.21+22(小学館)から始まったのだが、スピリッツは最近誌面リニューアルが進みつつある。このほかにも柏木ハルコ、今井亮一+ウヒョ助、相原コージらの連載も始まったし、今後もヒラマツ・ミノル、吉田聡、もりやまつる、玉井雪雄、伊藤潤二、柳沢きみおらが登場予定とアナウンスされている。注目しておきたいところだ。
「パンゲアの娘 KUNIE」 ゆうきまさみ
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「パンゲアの娘 KUNIE」
ゆうきまさみ
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最近、しばたはことあるごとに「これからはラブコメがクる」といっているのだが、この作品はとりあえず出だしを見た限りにおいてはかなりラブコメっぽくていい感じである。5年生男子・日向陽(ひなた・あきら)の元に、とっくの昔に死んだと思われていたが実は南の島で長みたいなことをやっていたじーちゃんから、島育ちの孫娘クニエが派遣されてくる。そこから始まる愉快な生活〜という感じの物語である。正直いって本当にラブコメになるのかどうかまだよく分からないんだけど、クニエ、それから陽の女友達のコなど、女の子が魅力的だなとまず思ったのは確かだ。ちなみに本当に「ラブコメがクる」のかどうかは定かでないが、昨年の今ごろのしばたはあちこちで「これからは宇宙モノがクる」などといっていたんで、あんまりアテにはならんような気もする。
「魔法少女猫たると」 介錯
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「魔法少女猫たると」
介錯
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ラブコメの次は「萌え」系作品で行ってみよう。「ウルトラジャンプ」5月号(集英社)から始まった本作品、さて、タイトルはいったいなんと読むでしょう?……といってもフツーは分からないと思うのだ。正解は「まじかるにゃんにゃんたると」。これだけでもかなりすごいのだが、この作品世界では、メインキャラであるにゃんにゃんのたるとがメイド的な服を着た猫耳少女として描かれているのだ! そして語尾は「〜だにゃーの」とくる。介錯といえばこれまでも「鋼鉄天使くるみ」など、ベタなオタクノリの作品で定評があったが、それにしてもここまで開き直ってベタベタにしてくるというのはまったくスゴい。ここまでやってくれると、思わず男として惚れちゃいそうになるくらい立派だと思う。
それでは最後に読切組を2本ほど。
「カッパのお宝」 小池美枝
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「カッパのお宝」
小池美枝
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「ビッグコミックスピリッツ 6/1増刊 山田2号」(小学館)に掲載。最初はイジメられっ子の少年と、彼の世話を焼く同級生の少女の心の触れ合いという感じの、フツーにいい話だと思っていたのだ。絵も端整で行儀が良さそうだったし。ところが結末はかなり意表を衝く展開を見せてくれて「なんじゃこりゃ〜」とビックリさせられた。ネタをバラすのは野暮なんで書かないけど、ちょっと面白いセンスの持ち主だ。
「いよっ おみっちゃん」 山田芳裕
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「いよっ おみっちゃん」
山田芳裕
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「度胸星」の突然の連載終了がまだ記憶に新しい山田芳裕だが、ひさびさに「モーニング」(講談社)に読切で登場。 4/26 No.19、5/3 No.20で読切「いよっ おみっちゃん」前後編が掲載された。山田芳裕としては久しぶりの江戸時代を舞台とした時代モノで、旅から旅への女侍が、とある宿場町を舞台とした抗争の間に割って入る……といった物語。刀で相手を豪快にぶった切る描写のダイナミックさは山田芳裕ならではのもの。粋でいなせでカッコイイのである。
といったわけでまた来月。◆
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