毎度毎度読み逃してしまった人には申し訳ないんだけど、今回もまた単行本未収録作品いきます。すんませんねえ。
「ビッグコミックオリジナル 9月増刊号」(小学館)からスタート。花輪和一はそれまでこの増刊枠で「和一怪奇おかし話」という、昔ばなしに題材をとった、奇妙な宇宙人的生物がからむシリーズ連載をしていたんだけど、それよりも今回のシリーズはホラー風味が増している。第1回めは、地震で避難勧告が出た村に隠れて居残りツチノコ探しを続ける親子の物語。床下に隠れて這いつくばり、自らがツチノコへと変化していってしまう親子の姿がグロテスクかつどこかユーモラスである。ちなみに「和一怪奇おかし話」のほうは今秋単行本化されるらしい。これは楽しみ。
「ビッグコミックオリジナル」9/5 No.17(小学館)に前編が掲載。プロ野球界No.1キャッチャーを目指す若手キャッチャーの物語。「ヨリが跳ぶ」「REGGIE」と、迫力のある描写でスポーツものには定評のあるヒラマツ・ミノルの作品だけあって、さすがに面白い。投手の手からボールが放たれて、キャッチャーミットにバシッと収まる。そういった一連の動きが迫力たっぷりに描写されている。9月5日発売号で後編が掲載予定。この原稿アップ時点で後編掲載号がまだ書店にあるかもしれないので、その出来栄えは自分の目で確認していただきたい。
「いつかきっと」は「CUTiE comic」10月号(宝島社)、「海にかえったあじの君」は「Cookie」10月号(集英社)にそれぞれ掲載。いわみえいこといえば、CUTiE comicのショートギャグ的な作品の印象が強いが、時折描く泣かせ系の作品がとてもいい。「いつかきっと」は足が不自由で車椅子での生活を余儀なくされている兄とその妹の物語。母が兄ばかりかまうのでふてくされていた妹だったが、やはり兄を思いやる気持ちがそれに勝る。子供ならではの屈託のなさが逆に涙を誘う。それから「海にかえったあじの君」は、Cookieの新人賞受賞作である。小学3年生のてるよし君と、いつも一緒にいた親友あじの君の友情を、儚くそして優しく描いた物語。一見たどたどしい絵柄だけど、その素朴さにかえってやられてしまうのだ。この2作に関してもCUTiE comicとCookieの発売日がそれぞれ24日と26日なので、この原稿がアップされた時点ならばまだ書店で掲載誌を入手することが可能かも。
「ヤングマガジン」9/4 No.38(講談社)から連載スタートした作品。成績はいいけど、女装趣味にハマりつつある優等生の少年が主人公。謎めいた少女に女装癖という弱みを握られ、何やら怪しげなたくらみにからめとられていくが……といった感じの出だし。まだ物語としては序盤も序盤といったところなのだが、濃いめの味付けで、ハラハラドキドキな展開を見せており、ぐいぐい読者を引き込む力を持っている。先が楽しみな連載である。
前回、楽しみにしている作品が多いと述べた「モーニング」(講談社)だが、8/17 No.36に第5話が掲載されたこの作品もその一つである。音信不通の状態で宇宙空間に投げ出され生死の境をさまよった主人公が、その恐怖心から「空間喪失症」という厄介な症状を抱え込み苦悩する。素晴らしいだけでなく恐ろしい空間でもある宇宙と、人間である自分との関係を、彼は改めて問い直すことになる。今回はとくに宇宙というものとまっすぐに向かい合っていて、感動的な物語となった。今後「プラネテス」は隔月連載となることが決まっている。モーニングの巻末のアンケートに『「プラネテス」の単行本について何かご要望があれば、ご自由にお書きください』といった設問があったことなどから見て、単行本化も近そうな雰囲気である。出たらぜひ買おう。宇宙好きには文句なくオススメ。そのほかの人にももちろん。
モーニング 8/24+31 No.37+38合併号に掲載された読切。匂いに非常に敏感な歯科医の女性と、彼女が出会った匂いを操る不思議な料理人の物語。嗅覚にこだわり、その奥深い世界を描写しつつ、しっかりとした人間ドラマに仕上げている。作画、それから読者を引き込んで読ませる演出テクニックもしっかりしていて完成度の高い作品。この料理人を主人公にシリーズ連載にしても面白そうだ。