生涯一読者
TINAMIX
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■1999年は退屈な年!?

連載第一回めのお題は「1999年の漫画を振り返る」である。

自己紹介も兼ねて断っておくが、筆者は別に漫画業界人ってわけではない。まあライターとして漫画評の原稿を書くこともあるけど、基本的にはタダの読者か、まあせいぜい読者にちょっと毛の生えたくらいのものだと思っていただいて差し支えない。だから今回の原稿も、一読者がいかに1999年の漫画を読んだか、いかに漫画界をとらえたかという視点で書いている。あらかじめご了承いただきたい。

漫画読者的に見て、1999年に何か大きな動きがあったかといえば、とくに大きなことは思いつかない。セールス的に見れば漫画業界にもマイナス成長の波が及び、出版社の倒産や雑誌の休刊など例年になく不景気な話題が多い年ではあった。ただこれらは、休刊雑誌の愛読者にとって痛手ではあったものの、休刊しただけあって読者数もさほど多くはなかったわけで、ドラスティックな変化とはいいにくい。

漫画が売れなくなってきたというのは売る側としては苦しい事情だろうが、買う側としては自分の欲しい本を買っているだけなので、とくに困るわけでもない。売上が落ちていても単行本の出版点数が激減したってわけではないので、読者一人一人が買う本の冊数自体はそう変わっていないはずだ。

ズバ抜けた大ヒット作があったわけでも、画期的な表現形態の勃興があったわけでもない。だから、読者的に見て1999年は「例年以上にいつも通りという印象の強い年」だったといえるのではなかろうか。はたから見ていると退屈にさえ思える1999年の漫画界だった。

しかしそんな中でも、いったん漫画の世界に踏み込んでしまえば、面白い作品はまだまだいっぱい見つかる。一時期よりは大人しくなったとはいえ、漫画界はいまだたくさんの雑誌と数え切れない数の作品を供給し続けている。そして、漫画家は今も腕を磨き続け作品を創り出している。優れた作品が思わぬところに眠っていて、あなたが見つけてくれる日をじっと待っているかもしれない。退屈しているヒマなんて、ないのだ。

では1999年、どんな漫画が面白かったのか。どんな出来事があったのか。筆者が読者として日常的に見てきた1999年の漫画シーンを振り返っていくことにしよう。

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