「びっくりにょ」
ゴールデンウィーク最中の5月3日、4日の2日間、「東京ビッグサイト」で開かれた「デジキャラフェスティバル」は、秋葉原をはじめ全国でキャラクターショップ「ゲーマーズ」を展開している企画会社、ブロッコリーが主催して開いたキャラクターグッズの即売会。出版社やゲーム会社がブースを出して、今が旬なときめいてたりラブってたりするキャラクターの関連グッズを展示・即売していたけれど、中で一番の賑わいを見せていたのが当の「ゲーマーズ」だった。
人気のひとつが、ブロッコリー自体が企画・発売しているトレーディングカードの「アクエリアンエイジ」。有名無名のイラストレーターを多数起用して描いてもらったイラストによって飾られたカードを使って対戦する、米国から来た「マジック・ザ・ギャザリング」の流れを汲むゲームカードだけれど、何百もある種類のカードを全て集めたいというコレクター、というかオタクの心理を見事についた戦略もあってか、イベント限定カードなり、イベント先行発売カードといったものを買いに集まって来た人が、2日目の昼過ぎでもブースをぐるりと取り囲んでいた。
そしてもう1つが……そう「デ・ジ・キャラット」。深夜のアニメの合間に流れていたCMでネコ耳メイド服で頭に鈴をつけたいかにもな格好で、「まってるにょ」などといかにもなセリフをほざいて……じゃない話しておられたキャラクターを覚えている人も多いだろう。覚えているなんてものじゃなく、耳について離れないという人もいるかもしれない、それほどまでにインパクト抜群なキャラクターだった。
「証券よさらば、キャラクターよこんにちわ」
この「デ・ジ・キャラット」、略して「でじこ」を企画したのもブロッコリー。キャラクター市場の成長ぶりに目をつけて、山一証券という、当時は4大証券の1角にあった巨大企業から転じてブロッコリーを設立した木谷高明社長が、よそのキャラクターを貸してもらっているだけでは、人気の高低や権利者の出方に左右される可能性があるからと、自前のキャラクター育成を画策したのが1年半ほど前。以後、CMに出し提供しているアニメ番組の中に押し込みつつグッズを作りまくって売りまくり、ついには去年の冬にテレビアニメ化まで果たしてしまった。アニメは夏にも新作が公開されるとかで、冗談ではなく日本を代表するアニメキャラクターに育ってしまったにょ、驚いたにょ、信じられないにょ。
山一証券のその後の運命を見ると、木谷社長の証券市場からキャラクター市場への転身は現在の会社の成長ぶりから見ると大成功だったことになる。あるいは日本の産業構造が、大企業主導型で続いて来て、そんな企業の活動を資本市場からの資金調達という形で支える証券会社も含めて賑わっていた形から、行き詰まりを迎え、より知的財産を生かす方向へと転換していこうとする中で、キャラクターという日本が誇る知的財産に注目が集まったのだと言えるのかもしれない。
そんな折りもおり、山一証券の崩壊を告げる記者会見で「社員は悪くないんです」と大泣きした当時の社長、野澤正平氏までもがキャラクター関連のベンチャー企業に転身して会長を務めるようになったのも何かの因縁か。その会社、シリコンコンテンツ(→関連サイト)が行うのは、キャラクターをデジタル化したコンテンツを、コピーされることがないよう安心して配信できるようにするシステムの提供で、栄えある第1弾として名乗りを上げたのが、正真正銘日本を代表するキャラクターである「ハローキティ」を持つサンリオだった。
5月12日に多摩センターにあり「サンリオピューロランド」で開かれた記者会見に笑顔で登場した野澤会長。直前に出た経済誌「プレジデント」でのインタビューでは、電車で見かけたキャラクターに「これだ!」と思った野澤会長が「あれいいね」と言ったら「あれはキティとゆー有名なキャラクターですっ」と社員に呆れらたエピソードも掲載されていたし、会見でも質問に頓珍漢な答えをしてたりして、流石にITのことはまだ分かってないよう。それでも世間がスタートしたばかりのベンチャー企業のビジネスに注目するのは、「涙の会見」で世間から恥さらしだと非難された野澤会長の人柄あってのもの。分かってなさも1つの看板で、そこを糸口にプレゼンテーションを始めれば、ビジネススキーム自体はそれなりにしっかりしたものだから、何とかなっていくんだろう。2度目の「社員は悪くありません」はやらなくて済みそう、かな。
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