TINAMIX REVIEW
TINAMIX
【刺青●TATTOO】

■エド・ハーディと世界のクロスカルチャー■

ダグのお父さんはエド・ハーディといって、世界的に高名な彫師さんだ。でも彼は、お父さんのショップで働くんじゃなくて、「ストリート・ショップ」っていうジャンルのお店で働くことを選んだ。アメリカのタトゥーシーンでは、完全予約制のショップとは別に、一見の飛び込みの客を専門に彫る、ストリートショップって呼ばれるタイプのお店がある。こうしたお店では通りすがりの客がメインだから、いろんなタイプのタトゥーが彫れなくちゃいけない。ダグは勉強のために、あえてホノルルのストリート・ショップからキャリアをスタートしたんだね。

でも、彼がこうした幅広いタトゥーと触れあいたいと思った背景には、やっぱりお父さんのエド・ハーディの影響があると思う。というのも、ニュースクールという新しい流れを発掘したのもエド・ハーディなら、日本の和彫りやトライバル・タトゥーなど、世界中の伝統的なタトゥーを欧米圏に紹介したのも彼。実はエド・ハーディは彫師さんでありながら「タトゥータイム」っていう雑誌を創刊したパブリシャーで、この雑誌を通じてタトゥーの世界を大きく広げていった人なんだ。それも、決して中途半端なつまみ食いじゃない。例えば、三代目彫りよしさんっていう、日本を代表する彫師さんがいる。この方は横浜で『文身歴史資料館』(文身ってのは刺青のこと)って博物館をやってる方でもあるんだけど、この方があまりの博識ぶりにびっくりしたってくらい、エド・ハーディは日本の和彫りに詳しいらしいんだね。そんなお父さんからダグが受けた影響は相当に大きかったらしくて、ダグ自身もこの【FIG.12】みたいな作品を彫っている。

それから、どうもダグの話を聞いてると、今ではアメリカのクロスカルチャー化は相当に進んでて、何か特定のトライブが忌避されたり差別されたり、ってことが無いみたいなんだね。彫師の中にもロカビリーの奴やらモヒカンの奴やらボーダーやらオタクやら、いろんな奴がいるわけだし、なんでオタクだけ差別して色眼鏡で見るの? みたいな感じらしい。

「第一、タトゥーイストは絵を描かなくちゃいけないから、意外に文化系のインドア派が多いんだよ。オタク・カルチャーが好きな彫師は珍しくないと思うよ」。

……なんてことも言ってたな、彼は。


さらにダグによると、「Hook Ups」の登場以来、スケボーファンとアニメファンってのが次第に強く結びついてきてるらしいんだ。「Hook Ups」ってのは以前にもTINAMIXで紹介した、【FIG.13】みたいなスケボー・ブランドだね。これがきっかけになって、アメリカのスケボー・シーンとオタカルチャーは、相当にハイブリッド化してきてるんだ。例えば【FIG.11】のベルダンディの下に、十字架みたいなのが彫ってあるでしょ? これはスケボーのブランドで「Independant」ってブランドのロゴなんだよね。そんなわけで、アメリカのクロスカルチャーは着々と育ってるわけ。最初に紹介したヒデロウ君も、こうした世界的なクロスカルチャーの流れのなかにある、ってわけだ。なんてったって、【FIG.14】みたいな図柄を彫っちゃう人なんだから(笑)。



最初の方でヒデロウ君がバイカーもやってるってことは書いたけど、このこと一つとっても彼がどんなに自由な発想をしてるかっていうのがよく判るだろ? 本来イカツいタトゥーを好むバイカーの中にいながら、彼はピースフルでユーモラスなタトゥーが大好きなんだから。 >>次頁

page 4/5

==========
ホームに戻る
インデックスに戻る
*
前ページへ
次ページへ