■不幸の聖書
「で、この漫画って結局どうなのよ?」
そう聞かれたら、こう答える。
一度でも、「自分は不幸な子供だ」と思ったことのある人には、大お薦め。「不幸がないことが不幸」、そんな幸せな人(というよりは不幸に対して鈍感な人)には、あえてこの漫画は薦めません。
なぜ、崩壊家庭漫画や擬似家族漫画が存在するか? それは家庭の不幸という、第三者にはどうしようもない悲劇が現実に存在するからだ。だからといって、多少仲のいい友人にも相談できない。相談したってわかりっこない。だから崩壊家庭漫画は、読者の心を掴む。自分が言語化すらできない不幸を、物語のかたちを借りて見せてくれるのだから。
冒頭に書いたTくんは、この「聖書」を読んだことがあったのだろうか?
そういえば、ケンカの後で彼が見せる寂しげな表情、あれは不幸に敏感な子供特有の表情だったのではないだろうか?
今度、夢の中で会ったとき、聞かなければいけない。◆ >>次頁はみだしコラム
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