No.99402

真・恋姫†無双~江東の花嫁達・娘達~(父親と本)

minazukiさん

娘編第四弾。
今回は少し人数が多いので注意してください。

前回とはうってかわってかなり明るくなっていますが、少々キャラ達が暴走ぎみ(?)

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2009-10-06 22:51:24 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:16182   閲覧ユーザー数:12181

・ オリジナルキャラクター紹介

 

陸延(りくえん)……一刀と穏の娘で真名が望(ぼう)。

 

          姉妹の中で最強の妄想家であり、母である穏の血を濃く受け継いでいる。

          父親を題材にした斬新な八百一本を数多く作り、同世代、もしくは母親世代から絶大な人気を誇る執筆者。

          ちなみに作品を出す時の偽名は「北陸」。

 

陸抗(りくこう)……一刀と穏の娘で真名が奏(かな)。

 

          望の双子の妹で何事も精通する秀才児。

          だが、姉と共に悠里から渡された本が原因で興味を持ち完璧な作品を二人で作っていく。

          こちらは穏のように豊かな胸を早くから発達させている。

 

魯淑(ろしゅく)……一刀と真雪の娘で真名が美雪(みゆき)。

 

          母の背をもう少しで追い越そうとしている少女。

          悠里にその才能を認められ彼女から八百一本の作品を手がける。

          香里と舞里とは大の仲良しさん。

 

董白(とうはく)……一刀と月の娘で真名は陽(よう)。

 

          母親の月によく似ており、優しい笑顔と家事万能のしっかり者。

          決して怒ることがなく、姉妹にとって観音菩薩のような存在。

          母親とお揃いのメイド服をこよなく愛している。

 

賈穆(かくじゅん)……一刀と詠の娘で真名は恵(けい)。

 

           母親同様、ツンなところがあるが内心では父親が大好きでたまらない。

           陽と同じメイド服を着こなし、お揃いであることが嬉しくてしかたない。

           音々音とは軍人将棋最下位争いをするほどの仲。

 

諸葛格(しょかつかく)……一刀と悠里の娘で真名は脩里(しゅうり)。

 

             真面目で何事にも一生懸命になれるがよほどのことがない限り飽きっぽい性格。

             だが一度集中すると周りで何が起ころうともまったく気にも留めないがそれが時に災いになることも。

             悠里とは違って胸がおしとやかなのが目下悩みの種。

(父親と本)

 

「それではこれより始めたいと思います」

 

 城の一室に設けられた場所に諸葛瑾こと悠里が教壇に立って目の前にいる生徒達にそう言った。

 

「それでは出席を取りますね」

 

 順番に珍しい本に異常なまでの反応をする穏と双子の娘である陸延こと望(ぼう)、陸抗こと奏(かな)。

 

 少しは成長したものの娘に背丈が追いつかれそうな真雪と娘である魯淑こと美雪(みゆき)。

 

 悠里の娘である諸葛格こと脩里(しゅうり)。

 

 聖母のごとく笑顔で座っている月と娘である董白こと陽(よう)。

 

 なぜ自分はここにいるのだといわんばかりに頭を抱えている詠とその娘である賈穆こと恵(けい)。

 

 そしてなぜか蜀の二大軍師である諸葛亮こと朱里と娘である諸葛瞻こと香里(こうり)、龐統こと雛里と娘である龐宏こと舞里(まいり)が参加していた。

 

「全員揃っていますね」

 

 一見、豪華な顔ぶれでありこれから素晴らしい講義が行われるのであろうとその様子を見る者がいれば間違いなくそう思ったであろう。

 

「ではまず始めに今回の総合評価から行いたいと思います」

 

 教壇の横に山積みにされている書物の一冊を手に取り、軽く眼鏡を指で上げてからため息をついた。

 

「香里さんに舞里さん」

 

「「は、はい!」」

 

「前回よりはマシになりましたがこれではすぐに飽きが来てしまいます。もっと基本を抑えてしっかり書きなさい」

 

「「は、はい!」」

 

 厳しい評価を下す悠里に畏まる香里と舞里。

 

「朱里、雛里。次世代を担う者にもっとよい知恵を授けなければなりませんよ。そうでなければ良き作品などできません」

 

「「わ、わかりました」」

 

 まさか自分達にも矛先が向けられるとは思っていなかった朱里と雛里は申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「次、陽さんと恵さんですが」

 

 新たな書物を手にとって見開いていく悠里。

 

「悪くありませんが、少し独創性が強すぎて周りに反発しています。もう少し落ち着きを持たせなさい」

 

「「はい!」」

 

 元気に答える陽と恵。

 

 そんな娘達を微笑ましく見守る月と頭を抱えている詠。

 

「まったく、勉強会かと思えばただの趣味の会じゃない」

 

 文句を言いつつも参加している詠に月は楽しそうに答える。

 

「詠ちゃん、何かをするってことはいいことだと思うけど?」

「陽があそこのはわわとあわわみたいになってもいいわけ?」

 

「朱里ちゃんと雛里ちゃんのような立派な人になれるのであれば私は問題ないけど?」

 

「立派ねぇ~……」

 

 確かに蜀の重臣でありその才能は詠も認めるところだが、その天才がなぜこのような趣味を持っているのか理解できなかった。

 

「美雪さんと脩里」

 

「「はい」」

 

「貴女達は前回に比べて飛躍的に上達しました。この調子で頑張ってください」

 

「「はい!」」

 

 これまでの二組に比べて高評価を下した悠里に対して美雪と修理は嬉しそうに手を合わせていた。

 

「二人とも凄いでしゅ。悠里ちゃんが褒めるなんてどんな作品を作ったのでしゅか?」

 

「「えへへっ」」

 

 照れくさそうにする二人。

 

「さて、問題は望さんと奏さんですが」

 

 山積みにされている書物の大半がこの陸姉妹によって構築されたものだった。

 

 母親とは違った意味で危険なサラブレットとして成長をしている望。

 

 そして何事も一生懸命に頑張っている奏。

 

 この二人が手を組めばあっという間に作品が出来上がり、また新作を次々と作っていくという特殊な才能を発揮していた。

 

「これだけの才能であればすぐに私を抜くことも出来るでしょうが、残念ながら一つ問題はあります」

 

 二人の書いた書物をある程度開いてから止めてそのページを全員に廻した。

 

 そのページを何度も繰り返して読む者、少し読んだだけ顔を紅くする者、興奮を抑えることができずに悶える者、頭を抱える者、それぞれがそれぞれの反応を示した。

 

「確かに私は題材に制限をした覚えはありません。が、これだけはさすがにどうなのかご本人に聞いたところ、勘弁してくださいだそうです」

 

 どこかの執務室から豪快なくしゃみが聞こえてきたが、今はそれど頃の話ではなかった。

 

「望さん、奏さん」

 

「「はい」」

 

「なぜこのような作品を毎回作っているのか説明をしてくれますか?」

 

 発情しかけている穏から馴れた手つきで本を回収し、それを取り戻そうと両手を伸ばしている穏を無視して教壇に戻る悠里。

 

「それは簡単です。いつも題材となる光景を見ているからです。それを見ていると自然と頭に思い描けるのです」

 

 望は自分の感じるままに、思うがままに描いた結果が創作意欲を刺激したということになる。

 

「奏さんはどうしてなのか説明できますか?」

 

「姉上の発想には私が及ばないものがあります。ですから、出来るだけ誰にでも分かりやすいように書いただけです」

 

 何かを取り組む時、計画的に動き、また臨機応変のできるある意味秀才児である奏は姉である望の考えていることを誰よりも理解していた。

「なるほど。さすがは穏さんとあの人の娘さんですね。だからといって自分の父親を題材にするのはどうかと思いますよ?」

 

 これまで数多くの作品を手がけてきた悠里にとってあまりにも斬新過ぎる姉妹の発想に思わず読みふけっているのは内緒だった。

 

「で、でも楽ちゃんに奏ちゃんの作品は評判ですよ」

 

 悠里達が何度か朱里達のいる蜀へ訪問したときに、陸姉妹の書いた八百一本を読んで自分達にはないものを全身で感じた。

 

 そして密かにそれを量産して庶民の書庫市に出展したところ、即完売の偉業を成し遂げ悠里には黙って新作などを送ってもらっていた。

 

「朱里、評判が良いというのはどういうことですか?」

 

 だがそれも自分のうっかり発言によって暴露してしまった朱里は「はわわ」と慌て始めた。

 

「まったく、貴女には少しお仕置きが必要ですね」

 

「はわわ!?」

 

 実の姉である悠里の恐ろしさを誰よりも理解している朱里にとってはまさに刑の執行を申し渡された気分だった。

 

「悠里さん~、あまり朱里ちゃん達をいじめるとかわいそうですよ~」

 

 いつの間にか発情が収まった穏は朱里達の擁護に回る。

 

「仕方ありませんね。今回は不問としましょう」

 

 その言葉に朱里と雛里はホッと息をつき安堵しようとしたが、悠里がそう簡単に許すはずがなかった。

 

「ただし、次に同じようなことをしたらしっかりとお仕置きをしますからそのつもりで」

 

「はわわ「あわわ」!?」

 

 母親になっても容姿がまったく変わることのない二人は手を合わせて震えた。

 

「それでは私達は少しお話がありますので脩里達は屋敷に戻ってしっかりと勉強をしておいてくださいね」

 

「「「「「「「「は~い」」」」」」」

 

 母親達に丁寧に挨拶をして出て行く子供達。

 

「みなさん、凄くいい子ですね」

 

 お茶を用意する悠里は自分達の娘達が成長していく姿を微笑ましく思えてならない。

 

「でも一刀くんのように優しさを持っているのが私としては嬉しい限りです」

 

「そうでしゅね」

 

「一刀さんだからその優しさが望ちゃんと奏ちゃんに受け継がれているんですよ~」

 

 穏は双子が産まれた時の喜びを今でも忘れることのない大切な思い出になっていた。

 

「お義兄さまは私達にたくさんの幸せをくださりました。だから私達もお義兄さまに幸せになってもらいたいです」

 

 月は自分の命を救ってくれただけではなく愛してくれ、娘も産めた喜びを全身で感じていた。

 

「月がそういうのであればボクは言うことなんかないわね」

 

 照れくさそうにツンを出す詠に誰もが微笑んだ。

 屋敷に戻った子供達は悠里と脩里の部屋に集まって、陸姉妹が人数分の新作を出して読んでいた。

 

「望ちゃんと奏ちゃんの作品はすごいです」

 

 まだまだ幼さが残る彼女達は顔を紅くして真剣に読んでいる姿はなんとも摩訶不思議なものを感じさせていた。

 

「でもどうしておとうさまなのですか?」

 

 陽は自分達の父親を題材にしようとは思いもしなかっただけに、望と奏が何を考えているのか知りたかった。

 

「そんなの決まっています。おとうさんが大好きだからです」

 

 大好きだからこそ自分達の身近にその形を作っておきたかった二人は自然と力を入れるようになっていた。

 

「その気持ちわかります。ちちは優しくてよく恵達と遊んでくれます」

 

 早莎と明怜の一件以来、一刀は仕事に差し障りのない程度に休みを取るようになり、その時間を娘達と過ごすことに使っていた。

 

 たくさんの娘達に囲まれて過ごす休日は一刀にとっても日頃の疲れが吹き飛ぶほどのものだった。

 

 そのおかげで愛妻達からは少し拗ねられることもあった。

 

「そんなおとうさんだからこそ私は本にしたのです」

 

 細かいところを手直ししたりした秦は両手で自分達が書いた書物を抱きしめて頬を紅く染めていく。

 

「羨ましいです」

 

 香里はふとそんな言葉を漏らした。

 

「香里ちゃん、どうしたのですか?」

 

 どことなく羨ましそうにする香里と舞里をほかの子供達が不思議そうに見る。

 

「だって天の御遣い様が父上様なんて羨ましいです」

 

 自分達の立派な父親であることは違いなかったが、子供ゆえにどこかで劣等感などを感じていた。

 

 それは蜀だけではなく魏もそうだった。

 

「香里ちゃん、それは違うと思いますよ」

 

 陽は別に自分達の父親が天の御遣いだからという理由で好きなのではないと優しく言った。

 

「私達はおとうさまが天の御遣いであろうとも、そうでなくてもこの大好きだって気持ちは変わりませんよ」

 

「どうしてですか?」

 

 舞里には陽の言いたいことがよく分からなかった。

 

 彼女や香里の父親も優しく自分達のことを愛してくれていることは十分にわかっていたし、本心から嬉しいと思っていた。

 

 だが、どこかで羨ましいという気持ちがあるのもまた事実だった。

 

「私達はおとうさまとおかあさま達の娘だからです。それに羨ましいといったけど、天の御遣いの娘だって見られる時が一番辛いのです」

 

 優れた両親には優れた子が産まれる。

 

 そのような過剰な期待がどこからか注がれ、それがかえって陽達に重圧となって押しつぶしてくることもある。

 何度かそういうことがあり、自分は産まれてこなければよかったと思うこともあったがそれらから守ってくれたのは誰でもない父親である一刀だった。

 

『天の御遣いの娘だからって言っても他の家族と何が違うのか、俺にはよく分からないよ』

 

『俺はこの子達がみんなの子供達と分け隔たりなく元気に育ってくれればそれでいい。将来のことはこの子達が大きくなれば自分達で決めるから、今から期待なんてしても仕方ないさ』

 

 親バカでありながらもきちんと娘達のことを考えている一刀のその言葉に多くの者は納得してくれた。

 

『悪いことをしたら叱ってくれてもいい。でも天の御遣いを父親に持っているなんていう言い方だけはしないで欲しいんだ』

 

 それまで『天の御遣いの娘』という重圧に包まれていた陽達はそれ以降、そういう目では見られなくなった。

 

 陽が語り終わると香里と舞里は申し訳なさそうな顔をする。

 

「それに香里ちゃんと舞里ちゃんは私達が天の御遣いの娘だから仲良くしてくれているのですか?」

 

「「そんなことないです!」」

 

 これまで何度もお泊り会などをして自分達にとって大切な友達である陽達をそんな目で一度たりともみたことなどない。

 

「だったら何も羨ましいことないですよ」

 

 優しく微笑む陽は母親である月のように他者を包み込んでいく。

 

「正直にいえば、私は香里ちゃんや舞里ちゃんが羨ましい時があるんですよ」

 

「どうしてですか?」

 

「だっておとうさまを独占できるんですよ?」

 

「「あっ」」

 

 陽達にはその独占というものがどれほど大変なものなのか幼いながら理解していた。

 

 みんなでいること自体は楽しいのだが、やはり独占したいという気持ちもあった。

 

「だからお互いさまです」

 

 陽だけではない。

 

 一刀の娘である脩里達も同じ気持ちだった。

 

 そういう意味では楽と奏は本の中で自分達が独占できると思って作品と作っていた。

 

「陽ちゃんの言うとおりです」

 

 香里と舞里は自分達の考えがどれほど小さいものだったか、ようやく理解でき、そして陽達に申し訳ない気持ちになった。

 

「大丈夫です。私達はみんなお友達ですから」

 

 姉妹であり友達である素晴らしさ。

 

 そこにも一刀が求めた平和というものがあった。

 

「だから今度の新作はこうしましょう」

 

 円陣のごとく顔を寄せ合って内緒話を始める陽達。

 

「あねうえ、それは素晴らしい考えです」

 

「それならばちちをそれぞれが独占できます!」

 

 恵も納得のいく内容にそれぞれが色めき立つ。

 

「悠里さまにも満足してもらえると思いますよ」

 

「でもおとうさんに知られたらまず「俺がどうしたって?」……え?」

 

 一斉に陽達は声のするほうを見ると書物を抱える一刀と氷蓮、それに彩琳が立っていた。

「お、おとうさま、どうしてこちらに?」

 

 唖然とする中で陽がなんとか声を出せたが、一刀達のほうはといえばどことなく呆れていた。

 

「あんた達がしっかり勉強しているか見てこいって言われたの」

 

「悠里様の言うとおりでしたけどね」

 

 不適な笑みを浮かべる氷蓮と眼鏡を指で軽く押し上げてため息を漏らす彩琳。

 

「みんなで内緒話はしてもいいけど、一つ答えてもらってもいいかな?」

 

「な、なんでしょうか?」

 

「どうして君達の本に俺が出てきているのかな?」

 

 氷蓮が一冊の本を取り出して一刀の名前の載っているページを堂々と見せびらかす。

 

 当然、それを書いた望と奏はビクッと身体を震わせ他の者はどう答えたらいいのか困っていた。

 

「まぁ俺としては書いてくれるのは嬉しいけど、さすがに内容がねぇ……」

 

「そういうわけだから、今日は特別にパパと私達がみっちりと勉強を見てあげるわ♪」

 

「覚悟してくださいね」

 

 二人の姉は妹達にとって大好きだという気持ちと同時に恐怖を感じるものがあった。

 

 特に父親がらみになると自分達以上に独占力を発揮するため、妹達は一致団結しなければ互角の戦いすら出来なかった。

 

「あ、そうだ、香里ちゃんと舞里ちゃんもしっかり勉強するようにって朱里達から頼まれたから逃げたらだめだぞ」

 

「まわわ「さわわ」」

 

「変な声出してもダメだからね」

 

 しっかりと逃げ場を封鎖された香里と舞里は先ほどまでの羨ましさなど消えて、自分達の優しい父親を思い浮かべた。

 

「ところでおとうさま」

 

「うん?」

 

「その、お仕事は大丈夫なのですか?」

 

 普段であればまだ政務中であり屋敷に戻ってくることはなかっただけに、ここにいること自体が不思議でならない陽。

 

「ああ、今日の分はもう終わったし、前からの案件もなんとか解決できたからね。久しぶりにみんなの勉強を見てあげるよ」

 

「ちち、それは少し無茶が過ぎると思いますよ?」

 

「あのな、仮にも父親だぞ。勉強ぐらいみてやれるよ」

 

 娘達からすれば確かに大都督としては優秀な父親でも勉強に関しては未だに穏や亞莎よりしなければならないことは多かった。

 

「ではちちに質問します」

 恵の質問に次々と答えていく一刀に娘達は目を丸くしていた。

 

「信じられません、あのちちがここまで頭がいいとは思いもしませんでした」

 

「おいおい、俺だって毎日遊んでいるわけじゃないぞ」

 

 余裕の笑みを浮かべる一刀。

 

「でも、パパ」

 

「うん?」

 

「パパが勉強しているとき気のせいか、次の日ってやつれてない?」

 

「気のせいにしておいてくれ」

 

「「…………」」

 

 氷蓮と彩琳はため息をもらし、事情のわかっていない妹達は全員「?」顔だった。

 

「それよりもだ、明日は休みだから今日は勉強をして、明日はみんなででかけるぞ」

 

「本当ですか?」

 

 久しぶりの全員でのお出かけに目を輝かせる陽達。

 

「本当よ。ただし、一生懸命しなければお留守番だからそのつもりで頑張りなさい」

 

 氷蓮は口ではそう言いながらも全員で出かけることを楽しみにしていた。

 

「そういうわけですから父上が持っておられます、この課題を済ませてください」

 

 一冊ずつ本を手渡して全員にいきわたると一刀達を交えて陽達は用意された課題に手に付けていく。

 

「香里ちゃんと舞里ちゃんも一緒にいこう」

 

「よろしいのですか?」

 

 自分達は遊びに来ているだけなのに家族団らんの邪魔にならないのだろうかと思ったが、そんなことは一刀にとってどうでもいい理由だった。

 

「かまわないさ。陽達だって二人がいてくれると嬉しいだろうから」

 

 すでに朱里や雛里にも話は通しているため何の問題もなかった。

 

「「あ、ありがとうございます」」

 

 礼儀正しくお礼を言う二人。

 

「氷蓮、彩琳」

 

「なに「はい」?」

 

「お茶を用意してくるからみんなをちゃんと見ていてくれよ」

 

 二人は頷き、それを確認した一刀は部屋を出て行った。

 

 気配が完全に消えるのを確認した氷蓮はVサインを出すとそれまで本を開いていた陽達は一斉に閉じて軽く息をついた。

 

「姉上?」

 

 一人状況が飲み込めない彩琳。

 

「いいのいいの。パパが戻ってきたらすぐに再開すればいいだけよ♪それよりも今回の新作を読ませて♪」

 

 氷蓮は嬉しそうに妹達から新作の本を渡してもらうとまじまじとその内容を読んだ。

 

「あ、姉上」

 注意を促しながらも本の中身を読んでしまう彩琳。

 

 そして顔を紅くしていく。

 

「あんた達……今回もまた凄い内容ね」

 

「望、奏、これは少しやりすぎです」

 

 顔を真っ赤にして注意する彩琳だがまったくもって説得力が感じられなかった。

 

「私にはこのように……は、恥ずかしいものは書けません」

 

「あんたはパパを思って紅くなるぐらいが精一杯よね」

 

 一刀の役に立ちたいとい建前と一緒にいつもお顔を見ていたいという本音の彩琳だが、ただ一人の姉である氷蓮にはお見通しだった。

 

「でも彩琳おねえさまはそれだけおとうさまのことが大好きなのですよね?」

 

「当たり前です。父上の娘でよかったといつも思っています」

 

 学問を頑張るのも普段の自宅でも一刀に褒めてもらおうと一生懸命に家事などをこなしていた。

 

「じゃあ、実際にここに書かれている事を想像したりしたの?」

 

「あ、あ、姉上!?」

 

 本心を衝かれて慌てる彩琳に氷蓮達は笑い出す。

 

「安心しなさい。みんな同じことを考えているわよ」

 

 もはや爆弾発言としか思えない言葉の連続に彩琳は思わず泣きたくなりそうになった。

 

「賑やかだな」

 

 そこへ一刀が戻ってきた。

 

「彩琳、顔が紅いけど体調悪いのか?」

 

 お茶や茶菓子を載せたおぼんを机の上に置いて彩琳の額に手を当てた。

 

「ち、ち、ち、ち、ち、ち……」

 

「少し熱いな。あれなら部屋まで連れて行くぞ?」

 

「え、あ、は、はい…………おねがいします!」

 

 そう言って遠慮がちに彩琳は両手を広げて目を閉じる。

 

 一刀はそんな娘を苦笑しながらお姫様抱っこをする。

 

「「「「「「いいな~~~~~」」」」」」

 

 真っ赤になってお姫様抱っこをされる彩琳の表情はもはや天にも昇りそうなほど幸せが溢れていた。

 

「すぐ戻るから、勉強をしておくんだぞ」

 

 彩琳を連れて再び部屋を出て行った一刀を見送った娘達はそれぞれの頭の中でお姫様抱っこをされる自分を想像していた。

 

「はいはい、その辺にしてそろそろ真面目にしないとパパに雷を落とされるわよ」

 

 適度なところで切り上げさせ、氷蓮は妹達に勉強するように促した。

 

「続きはまた夜にね♪」

 

「「「「「「「「は~い」」」」」」」」

 

 憧れの的である氷蓮の言葉に素直に従う妹達はその後の勉強を一生懸命した。

 夜になると仕事から戻ってきた蓮華達も加わって賑やかな夕餉になった。

 まさに大家族であり、笑いが絶えることはなかった。

 

 湯も順番に浸かっていき綺麗さっぱりになった後は陽達八人の子供達は部屋に特別に用意された寝台をくっつけてもらった。

 

 その中には一刀も混じっており、彼の前には可愛らしい夜着を身につけた陽達が正座をして話を聞いていた。

 

「というわけでシンデレラは王子様と末永く幸せに暮らしましたとさ」

 

 今日の話はシンデレラだった。

 

 誰もが憧れるシンデレラと王子様に胸をときめかせていた。

 

「おとうさま」

 

「なんだい、陽?」

 

「私でもそのしんでれらになれるでしょうか?」

 

「なれるとも。あとは王子様だけど………それは俺が認めないとなれないからな」

 

 愛娘をどこの馬の骨かわからない奴にくれてやるものかと意気込む一刀。

 

「大丈夫です。私はずっとおとうさまのもとにいますから」

 

 父親としては嬉しい言葉で一刀は陽の頭を優しく撫でる。

 

「私もちちのもとから離れるつもりはありません」

 

「私もです」

 

 次々と一刀と一緒にいることを言っていく娘達に一刀は嬉しくて堪らなかった。

 

「ありがとう。でも、本当に好きな人ができたらその人と一緒に生きていくんだぞ」

 

 それが父親として娘を見送る役目なんだと一刀は思っていた。

 

「おとうさん」

 

「うん?」

 

「おとうさんを題材にしてごめんなさい」

 

 望と奏は申し訳なそうに謝ってきた。

 

「もう気にしていないよ。できればもう少し内容を抑えてくれると有難いな」

 

「書いても……いいのですか?」

 

「ダメとは言わないよ。ただ、次からは一番に読ませてくれるかな?それで決めるから」

 

 禁止されなかった二人は嬉しくて思わず一刀に抱きついた。

 

「おとうさん、ありがとうございます」

 

「これからもしっかり書きます」

 

「うんうん…………え?」

 

 何かとんでもない事を言われたような気がしたが娘達が喜ぶ姿を見て諦めることにした。

 

「さあ、明日はピクニックだからそろそろ寝るんだ」

 

「「「「「「「「は~~~~~い」」」」」」」」

 

 陽達は仲良く並べた寝台にもぐりこんでいき、明日の楽しみを思いながら眠る準備をしていく。

 

「おやすみ」

 

 一刀は一人一人の額にお休みの口付けをしてから部屋を出て行った。

 

「おとうさま……」

 

「ちち……」

 

「おとうさん……」

 

 娘達は口付けをされた額に手を当てて幸せそうな表情を浮かべた。

 

「今夜はきっといい夢が見れますね」

 

「もちろんです」

 

 姉の氷蓮や彩琳のように成長した自分達と父親である一刀の姿を思い浮かべながら娘達は眠りについていった。

 

(また新作が思い浮かんじゃった)

 

 その中で一人別のことを考えていた望に気づいた奏はわからないようにため息をついた。

 

 そしてその夜の夢はまさに彼女達にとって至福そのものだったため、翌朝になって起こしにきた華雄が見たのは鼻血を流して嬉しそうに眠っている彼女達だった。

 

「おとうさま~♪」

 

 夢の中での彼女達は一刀を独占していたことは言うまでもない。

(座談)

 

水無月:娘編も四回目に突入しました~。

 

雪蓮 :今回は今までより多いわね?

 

水無月:アンケートを見ていて全員は今の時点ではさすがに難しいと思ったのでとりあえずこのあたりでってことになりました。

 

冥琳 :しかし、次世代を担う者達としてはいささか不安が残るような気もするが?

 

水無月:そこはお母さん達が頑張るしか!

 

雪蓮 :まだ出ていない娘もいるのよね?

 

水無月:アンケートにも名前が挙がらなかった人は救済処置を!と考えています。

 

冥琳 :まさかそのために今回、多く出したのかしら?

 

水無月:な、なんのことでしょう?

 

雪蓮 :まぁ呆れられないようにしっかり頑張りなさい。

 

水無月:というわけで次回もマタよろしくお願いします。


 
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