リリムは急にしおらしくなって、いじいじ円を描くように指を動かしながら言いました。

「私…勇者様が大好きなのに、勇者様があまりにも美味しそうだから、食べたくなっちゃって辛いのよぉ」

「愛した者の寿命を縮めてしまうなんて、私が魔族なら耐えられないでしょうね…」

「私の知り合いで人間に恋をしたインキュバスが悩んでたわぁ。寿命を奪って死なせちゃったから…」

「アーク殿は私が見たところ、ナターシャの寿命は奪っていないようでしたが、アーク殿も魔族ではなかったのですか？」

「パパは元天使だからパパとまぐわえば魔力をいっぱいもらえるわぁ。だからパパの鍵を狙ってる女がたくさんいるのぉ」

「なるほど、ナターシャの魔力が高いのはその為だったのか…」

「ママの前世のリリスが強大な魔力を手に入れたのだってパパとまぐわったからよぉ？」

「アーク殿の魔力は底を尽きないのですか？」

「パパの魔力は無限に溢れ出てるらしくって、ママが吸収してるからパパは爆発しないで済んでるのよぉ」

「うーん、プラスとマイナスの作用が働いていて均衡を保っているのか…」

「ママがあの強大な魔力でパパを誑かしたって噂が立ってるけど、全然逆よぉ？パパがメロメロにされた時、ママはただの人間だったから、魔力なんてほとんどなかったんだもん！」

「ただの人間であるリリスに、なぜ天界で最も優秀だと言われた天使であるルシフェルが、惹かれたのでしょうか？」

「そんなの私にもわかんなぁい。愛は理屈じゃないから！」

「ふむ、ルークがアウローラに惹かれてる理由もルシフェルと同じ気がしますが…」

「ローラはルークとまぐわえば強大な魔力を手に入れるでしょうねぇ」

「そうか…。私の死後アウローラの事が少し心配になってきた」

「だったら勇者様も寿命延ばしちゃおうよぉ」

「それは何があっても絶対にできません」

…つづく