帰宅後もゲイザーは書斎でタイプライターを打ち続けていました。途中で休憩を挟むとリリムが纏わり付いてきます。
「ねぇ、勇者様ー。ほんのちょっとだけでも良いから、死なない程度に精気を吸うからお願いー」
「残り三年しかないのに精気を吸われたら困ります…」
「だからそれは妖精に頼んで長寿の薬の材料をもらえば良いじゃなぁい?」
「それはできません。私は三年後に向けて準備をしなくてはならない」
「勇者様が死んだらたくさんの人が悲しむのよぉ」
「そうですね。でも本当に悲しむべきなのは、死後に誰も悲しむ人がいない事です。誰も私を必要としなくなった時、私が死んでも誰も悲しまないでしょう」
「どうしてなのぉ?生きる価値のない人間のクズほど妖精を無理やり捕まえて長寿の薬を欲しがるのに、生きていた方が良い勇者様が死を選ぶなんて、私には理解できなぁい!」
「私には魔族のリリムさんの方が理解できませんが…。こんなおじさんを本気で相手にするなんて、人間では考えられませんよ?」
「他の人間の男は私を見たらいやらしい事しか考えないのよぉ。でも勇者様が私を使い魔にした理由は、私が一人ぼっちで洞窟にいたのが可哀想だと思ったからなんでしょ?私には人間の男の考えが手に取るようにわかるから…」
「そうですね…。あなたは私より遥かに年上なのでしょうけど、見た目はお若いので娘のような感覚なのです」
「ジュリーから誘われても手を出さなかったって知ってるわぁ。他の男ならジュリーも食べちゃってると思うのよぉ」
「そんな事をして天界におられるユリアーノ様が知ったらお怒りになりますからね」
「ええ、そう言う男は必ず地獄に落とされるわぁ」
「今も私を天界から下級天使が監視しているのでしょう?」
「あはは!勇者様は監視なんかされてないわよぉ。天界逝き確定だから、何も問題起こさないって太鼓判捺されてるわぁ」
「そうですか…。天界に見放されていたとは思いませんでした」
「だ・か・ら!私といけない事しよっ?誰も見てないしぃ」
「ダメです。妻に知られたら大変な事になる」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第178話。