マルヴェールの闘技場には噂を聞きつけたアカデミーの生徒も来ていました。ルークの応援席にはローラとジュリーも来ています。控え室の小窓から覗きながらルークは呟きました。
「この試合、勝つわけにはいかないけど、あまり無様な姿はローラには見せたくないし、カッコ良く負ける為には相手が強くないとダメだ」
ルークはいつも勝つ為にどうするか考えて行動していましたが、この日は上手く負ける方法を必死で考えていました。
「普通に考えたらスピードの速いヴィッキーが有利だ。詠唱中に間合いに入られたら厄介だからな…」
ヴィッキーはウォーミングアップの為か控え室の外で素殴りの練習をしています。寸止めされた拳圧だけで、レンガの壁が凹んでいました。
「あんなもん、まともに喰らったら大怪我では済まないぞ?下手したら死ぬかも…」
ヴィッキーが控え室に入りました。気合は十分のようです。手加減しなくても負ける可能性が高いので、ルークも本気で行く事にしました。
「ジュリエッタを賭けて勝負を挑んだ挑戦者はルーク・マルヴェール!あのルシファー・マルヴェールの一人息子で、魔術武闘大会の成績はなんと無敗です」
プレジダンが選手の名前を呼び、控え室から一人ずつ出てお辞儀をします。
「対するはヴィクトール・マルヴェール!あのフォン・マルヴェールの一人息子で、体術武闘大会の成績はなんと無敗です。両者、向き合って?礼をしてください」
「手加減はしないよ?本気で来てね」
「望むところだ!お前をギタギタに叩きのめしてやる」
「ラッサンブレサリューエ!アレッ」
ルークが詠唱中、あっと言う間にヴィッキーが間合いに踏み込んで来ました。ところが目の前に見えない壁のような物が現れて、ヴィッキーの拳はルークまで届かずに止められてしまいます。
「くっ!結界を張ったか…。一発も攻撃が当たらない」
「悪いけどまともに喰らいたくないんでね?」
「魔術師が相手だとやりにくいな…」
「教科書通りだと武闘家の方が魔法使いよりも有利だよ?僕の勝ち目は薄い…」
「それは負けた時の言い訳のつもりか?」
「言い訳じゃない…。事実をありのまま述べてるだけさ?」
「わざと負けようなんて考えるんじゃないぞ?ジュリーの為にお前も本気を出せ!」
「ローラの為なら本気出すんだけどなぁ」
「ジュリーはお前がわざと負けようとしてるって言ってた…」
「あはは!バレてたんだね…」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第68話。