ルリの繭はしばらく孵りそうにないので、クレスに任せてジンとイノンドはセルフィーユに一旦、帰還する事にしました。
「この前、妖精が言ってたけど、ルリが孵化した時、最初に見た者を好きになったりとかしないだろな?」
「インプリンティングですな。鳥が最初に見た者を親と思い込んで慕うと言う」
「だったら最初に俺を見たらルリは…いや、そんな方法で惚れさせても意味がない」
「浮気草の汁を使わないとダメみたいな事を言っておられましたよね」
「俺はルリが本心から俺の事を好きになって欲しいと思ってるんだ。そんな魔法の草の力を借りて、思い通りにしたいわけじゃないよ」
「私もジンジャー殿に同意です」
ジンとイノンドはセルフィーユ王子に呼び出されて謁見の間に行きます。ユーカリ姫も一緒に来ていました。王子の隣の玉座に腰掛けています。
「ユーカリ、久々にディル・イノンドに会えて嬉しいか?」
「別に?何が言いたいのかわからないわ」
「ジンジャー・エールは余のお気に入りなのじゃ。メリッサを倒すようにと余から刺客を何人も送ったが誰一人倒せなかったと言うのに、もっと早くに騎士団に迎え入れるべきだったよ」
「前に俺がチャービルの剣術大会で優勝した時にオレガノって奴がスカウトして来た癖に、卒業前の試験の結果が散々だったから、誰も迎えに来てくんなかったんだよ」
「ふむ、オレガノには余から苦言を呈しておくよ」
「それで王子様は何の用で呼び出したんだ?」
「この前、其の方に頼んでおった件について、何か進展はなかったかな?」
「何か頼まれてたっけな?俺の記憶にないんですが…」
「イノンドがモテる秘訣を探れと頼んだのを忘れたのか?」
「ああ、それならヒゲを剃り残してチクチクにすれば良いらしいです」
「なんと!ヒゲを剃り残すのは紳士にあるまじき行為だと余は習っておったのだが…。ユーカリもヒゲがチクチクする方が好きなのかな?」
「ヒゲなんてどうだって良いわよ?」
「セルフィーユ王子!そのような戯言を真に受けてはいけません。ジンジャー殿も嘘を教えないように?」
…つづく
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処女作の復刻版、第59話です。オオカミ姫とは無関係のオリジナル小説ですが、これを掲載する前に書いていた、オオカミ姫の二次創作とかなり設定が酷似しています。