イノンドが否定するので、ジンはセルフィーユ王子にこう言いました。
「そこにいるユーカリ姫に直接、聞けば良いんじゃないか?イノンドのどこが好きなのかを」
「何度も聞いたよ?余には一生わからない事だと言うだけで、何も教えてはくれん」
「私も興味はありますね。姫さまがなぜ好きになってくださったのか」
ユーカリ姫は大きく溜息を漏らしました。
「はぁ…、バカみたい!あんたたち、人に聞いてばかりいないで、少しは自分の脳みそ使って考えたら?」
「俺もルリに何度も聞いたんだ。クレスなんかのどこが良いんだよ?って。ユーカリ姫と同じ事しか言わなかったよ」
「女心は複雑なのだな。宝石やドレスを与えれば他の女の気は簡単に引けるのだが、ユーカリだけは宝石もドレスも何も欲しがらんのだよ」
「そんなものいくらあったって何にもならないじゃない?」
「ユーカリの愛を余のものにしたい…。イノンドよ、意地悪をせずに余に秘訣を教えてくれまいか?」
「何度も申し上げましたように、私にもわからないのです。姫さまが私のような下々の者を好いてくださる理由が…」
「一緒にいたら楽しいからよ?それ以外に理由はないわ!」
「ではユーカリは何をすれば一緒にいて楽しいと感じるのだ?」
「だから!人に聞かないで少しは自分で考えなさいって言ってるでしょ?」
「姫さま、セルフィーユ王子は他の国の王子よりも素晴らしいお考えを持った方です。きっと良い国王になられますので、ぜひ王妃となって支えてあげてください」
「良い人かどうかは私が決める事でしょ?あなたが勝手に決めないで」
「少なくとも私よりは良い人ですよ」
「あなたのそう言うところ、大嫌いだったわ」
「私は姫さまに嫌われて当然のダメな男です」
「私の一番大事な人をダメな男だなんて言わないでちょうだい!いくらあなたでも許さないわよ」
「私が自分をダメな男だと認めるのが姫さまは許せないと言うのですか?」
…つづく
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処女作の復刻版、第60話です。オオカミ姫とは無関係のオリジナル小説ですが、これを掲載する前に書いていた、オオカミ姫の二次創作とかなり設定が酷似しています。