ジンは単刀直入に質問する事にしました。
「王様に聞きたかった事があってね。妖精のルリについてなんだが…」
「うむ、ルリジサ・ボラージの魂を受け継いでいるそこの妖精の事かね?」
「人間のルリの魂って事は、もし仮にこの妖精が人間になったとして…、その時に妖精のルリが人間のルリになったら…、この妖精自体の魂はどうなるんだ?」
「勇者と言うのは視点が普通の者とは違うから質問も実にユニークだな?」
「そんなにユニークな質問をしたつもりはないけど?」
「妖精には人間で言う命がないのだ。つまり魂も存在していない。完全なる無なのだよ」
「悪い…。俺は頭が悪過ぎるんで、もっとわかりやすく説明してくれないか?」
「しょうがないなぁ。ボクがジンにもわかりやすく説明してあげるよ?妖精は生き物じゃないんだ。自然そのものが妖精になる。例えば水や木それ自体が妖精なんだけど、水や木は人間とは心が通わせられない」
「確かに水や木は口を利かないからな…」
「水や木が人間と話をしたくて、人間の言葉を話せる人間の姿をした形に具現化したものが妖精と呼ばれているんだ」
「わかりやすい解説をありがとう。て言う事はお前は人間のルリそのものなのか?」
「そうだよ?考え方も価値観も全部、一緒さ」
「俺には人間のルリと妖精のルリが別の生き物に見えたんだよ」
「ボクを生き物として認識してくれてるのは気付いてた。ジンは本当は心が優しいってクレス先生も言ってたし、ボクがチャービル卿に捕まった時もお前は助けに来てくれたから、ボクが死ぬのは嫌だったんだよね」
「お前はルリじゃないって思ってたんだけど、みすみす殺されるのをほっておくのはできなくてね…」
「妖精は死んでもすぐ生き返れるし、死ぬ事自体は怖くないんだ。ただ死ぬ時にちょっと苦しかったりはするからそれが嫌なだけ」
「一応痛みは感じるっぽかったからな。少し強く握り締めただけで大げさに騒いでいたし…」
「痛みは必要な感覚だよ?生命の危機を知らせる為の機能だからね。痛みを知らない生き物は自ら死を選んで火の中に飛び込んだりもする」
…つづく
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処女作の復刻版、第54話です。オオカミ姫とは無関係のオリジナル小説ですが、これを掲載する前に書いていた、オオカミ姫の二次創作とかなり設定が酷似しています。