メリッサはニヤリと気味悪く笑いました。
「何でも言う事を聞くと言ったね?実は私の魔力が弱くなって来てしまって、お前の体をちょっと貸してくれたら、魔力が元に戻るんだよ」
「体を貸すなんて出来るんですか?」
「ああ、簡単に出来るさ?お前だけ奥の部屋においで。坊やはそこで待ってな」
ルリが洞窟の奥に連れて行かれるのを、ジンは無言で見送ります。しばらくしてルリだけ出て来ました。ジンの斬られた右腕の布を剥ぎ取ると、肩から巻かれた包帯も解いて、斬られた右腕を乱暴に傷口に押し当てます。
「痛たたたたた…。そんなに強く押し付けるなよ」
「男の癖にピーピー喚くんじゃないよ?今、治してやるからじっとしてな」
いつものルリと少し雰囲気が違うなと思いましたが、ルリは指先でスッと傷口をなぞると、腐りかけていた右腕が元通りにくっ付きました。
「すげぇ!本当に治るなんて思わなかった…」
「それじゃ私はこれでお別れだよ?」
そう言い残すと、入り口に置いてあった箒に跨って、空高く舞い上がると、どこか遠くへ行ってしまいました。
「今のはメリッサだったのか?本物のルリはどうなったんだ…」
洞窟の奥からボロボロのローブを身に纏った老婆がヨロヨロと現れます。そのままドサッと地面に倒れました。ジンは慌てて老婆を抱き上げると、村にとんぼ返りしてクレスの診療所に駆け込みます。掻い摘んで事情を説明しました。
「なるほど、これは老婆の姿に変えられたルリだと言うんだな?酷く衰弱しているが…」
「多分そうだと思う。どうすればルリを助けられる?」
「助けるも何も老衰のようだから僕には手の施しようがない…」
「本当に役に立たねぇヤブ医者だな!お前は」
「チャービルの街で雇われなくて村に戻ったと嘘をついていたが、本音を言えばジンの言う通りだよ。ヤブ医者だから田舎じゃないと怖くて働けなかった…」
「ルリはお前の事を尊敬してたんだぞ!先生みたいになりたいっていつも言ってたんだ」
「彼女なら才能もあったし、僕より腕の良い女医になれたかもしれないのに、僕のそばにいたらロクな知識も身に付かないよ」
「ルリはお前に惚れてたんだよ?気付いてなかったのか!」
「好きだと打ち明けられた事もあったが、大事な娘さんをお預かりしているのに、もし僕がルリに手を出したりしたら、こんな田舎村だと一気に悪い噂が広まりかねないから断ったよ…」
「ルリはアカデミーで他の男に言い寄られても全部断ってたんだ。お前の為に操を立ててたんだよ…」
…つづく
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昔、知り合いが某少年漫画に持ち込みして、編集の人にこき下ろされまくった作者の原作の小説。復刻版の第6話です。