No.97913 繰り返しながらも新たなる外史[旅]!?~決意の章~・第六話つよしさん 2009-09-28 23:28:57 投稿 / 全5ページ 総閲覧数:6834 閲覧ユーザー数:5906 |
卑弥呼「だぁりんよ、荒れておらんか?」
一刀の部屋から早足で出て行き、城の廊下を歩いていた華佗に、市から戻ってきた卑弥呼が話しかける。
華佗「別に荒れてなどいないさ…」
そう言いつつも、足を止めず廊下を進んでいく。
卑弥呼「…そうか。で、どこへ行っておる?」
急患か?、と続ける卑弥呼。
華佗「…………………」
その言葉に華佗の足が止まり、うつむく。
卑弥呼「だぁりん?」
卑弥呼は、こんな華佗は初めて見るのだろう。華佗の前に回り込み顔を見ようと下からのぞき込む。
華佗「…なぜ」
卑弥呼「おぉう!?」
顔を覗き込む前に、言葉は発したために驚く卑弥呼。
「なぜ、この国の人間はあのような考えを持つ?」
それはほんの小さな声。
「…どういうことかのう?」
だが、聞こえた。小さくも怒りのこもった華佗の声は。
「…この大陸で医者をして渡り歩いているとき、様々な人間を俺は見てきた」
華佗は続ける。分からない、と。
華佗の用いる医術は五斗米道。世界の全てにあまねく平定をもたらすため、文字通り「闘う」医術。
東に病を患う者がいるならば、針を用いて病を治療。
西に身体が傷ついた者がいるならば、針を用いて傷を縫い。
戦が起こるならば、東西南北問わず駆けつけ、針を用いて傷を治し癒す医術。
華佗はこの大陸で間違いなく、最高の医者だろう。『病魔』と呼ばれる病の元を絶ち、治療を施す。
彼は病を持つ者を差別しない。それが、町民だろうが、商人だろうが、奴隷だろうが、そして帝だろうが差別しない。全てが等しく病人だ。
華佗「この国には王がいて、将がいて、兵がいて、民がいて────戦が起こっていた」
今でこそかつての戦は終わり、争いといえば盗賊な類や、静観を決め込んでいる五胡。
だが確かに戦はあった。
馬が駆け、剣が舞い、槍が長く伸び、楯が攻撃を弾き──────血が飛び交い、内臓が飛び出し、人が物言わぬ肉塊となる戦が。
華佗「俺は戦という病魔が嫌いだ。まぁ、好むやつはいないと思うけどな。…だが、それ以上に嫌うものがあった」
この戦は大陸のために。この戦は勝利のために。この戦は率いてくれる将のために。この戦は─────王のために。
華佗「何が忠義だ!何が将軍のためならば命は惜しくないだ!何が王の楯となれて光栄だ!」
兵は将と王のために。将は王のために。王は大陸のために。
すべては平和のために。これがこの大陸に住み、戦を行う者たちの志。
華佗「なぜ生きようとしない!なぜ命を投げ出す!なぜ戦をする!」
華佗には理解できない。傷を作る戦が。命を失う戦と心が。
華佗「命に貴賤なし!…なぜこれが分からないんだ!北郷もそうだ!黄忠さんの娘さんの話では、あいつは璃々ちゃんのために命を投げ出し、死ぬことを受け入れたという!それがカッコいいとでも思っているのか!?…そんなの自己満足だろう!残った方はどうなる!心に一生の病を負うに決まっている。それは俺には治療できないだろう!」
華佗は拳を握り、城中に響くぐらいの声で思いを叫ぶ。
卑弥呼「……………………むぅ」
卑弥呼は唸るだけで何も言えない。卑弥呼は腕があり、三国の武将相手でも勝てるほどの腕を持つ彼(彼女?)だが、戦を好むわけではない。確かに命を投げだす所業には賛成できない。
だが、兵たちの言い分も理解できないわけではない。兵だけではなく将も、そして王も、平和のために戦った。その姿勢が嫌いとは言えない。戦を美徳というべきではないのだが、平和のために一生懸命戦う姿は美しくも見えてしまう。
華佗「…己の命を軽く見る人間を医者にはできない。あいつは医者になるべきじゃないんだ…」
華佗は卑弥呼に何も言わず立ち去り、卑弥呼も華佗を呼びとめることが出来ない。彼の背中は止めるな、と言っているように見えたから。
卑弥呼「…五斗米道に沿わぬ者を医者には出来ん、か。ということは北郷は医者になること望んだのか…。だが、沿わぬからだけか?だぁりん…」
卑弥呼はそうは思えなかった。それは華佗の言葉の中にも含まれていたから。
卑弥呼「…だが、だぁりんはそこまで戦を嫌う訳では無かったがのう…」
卑弥呼は疑問に思う。華佗の性格はあのようであったか、と。
卑弥呼は、三国志が舞台の外史は数多く回っている。初めてこの外史に来た時から、常に華佗と共に大陸を回っている。そして貂蝉が一刀に振られる度に別の外史へ赴く。
確かに華佗は戦を嫌う傾向にはあったが、命を失う者、命を投げ出す者に嫌悪を抱いてはいなかった。
卑弥呼「…やはり少しおかしい」
華佗の事だけではない。この外史はどこかおかしい。
あくまでこの外史は三国志に準拠している。それなのにこの国には『スポーツ』が存在している。サッカー、野球、バスケ。様々だ。
なぜこれがこの国にある?
一刀が教えた。
これが最も適した答えだろう。
だが、おかしい。
それならば、なぜ黄忠が一刀の事を知らなかった?ここまでの功績者を知らないのはおかしい。
ならば『スポーツ」、というものは別から来たという可能性がある。
卑弥呼「北郷の想像力で外史が混ざり合っておるのか?だが、このような形で…」
??「起こるのは、別の要因が関わっているのではないか?よねん、卑弥呼」
卑弥呼が考え事をしていると、華佗が去った別方向から、猛った肉体を揺らしながら貂蝉が近づいてきていた。
卑弥呼「ぬ、貂蝉か。どうした?北郷に振られたか?」
貂蝉「もぅ、失礼ねん。まだ試合は始まったばかり。さっきもご主人様の相談に乗ってあげて好感度をびくんびくん上げてきたばかりよ」
残念ながらそれは勘違いだ。
卑弥呼「ふん、そうか。ならばこの外史は期待できるとうことかの?いつも主が傷心の旅に新たな北郷を求める所為で、だぁりんと最後までいけなかったが、これで最後かのう?」
最後とかないから。ありえないから。
貂蝉「んふぅ、そうねん。…けどそれよりも卑弥呼?あなたが疑問に思ったこと私も疑問に思っていたのよ」
先程まで漢女の顔をしていた貂蝉はまじめな顔で話す。
卑弥呼「…やはりそうか。もしや『否定派』かのう?」
卑弥呼のいう『否定派』。それは外史を認めぬ者達。外史を否定する者達。外史を壊す者達。
一刀を始めの外史で殺そうとしていた、左慈と干吉がいる派閥のこと。
対して、『肯定派』と呼ばれる者達は貂蝉や卑弥呼といった、外史を肯定し、『否定派』から外史の『要』となる人間を守る者達。ちなみに貂蝉たち「漢女」はごく稀だ。
貂蝉「いいえ、違うわねん。それならばご主人様を殺すことが目的。それなのにこんなにまどろっこしいことをする?現に左慈ちゃんたちの気配を感じない。私たちが気付かない筈ないのに」
卑弥呼や左慈達は外史とは『ズレている』。異彩を放つ人間は分かりやすい。
卑弥呼「ならば何だ?このような現象。儂は知らんぞ?」
胸を強調するように、腕を組む。…いや胸筋ですよ?
貂蝉「…そうねぇん。この外史事態が一度崩壊寸前までいった外史。私たちが分からないこともあるかもしれないわねん」
貂蝉も悩んだ顔をしつつ、卑弥呼に倣い腕を組む。……いや胸筋だって。
卑&貂「「うーーーーーーーーん」」
胸を前に出し、腕を組みつつ唸る二人。いや、だから胸k…。
────────その時。
卑&貂「「!!!」」
何かに気づいたかのように、城下へ視線を向ける二人。
卑弥呼「…貂蝉よ」
貂蝉「ええ、卑弥呼」
彼(彼女)らは視線を同時に頷き。
卑&貂「「れっつら!」」
同時に叫び。
卑&貂「「ごー!」」
同時に消えた。
────貂蝉と卑弥呼が廊下で話し合っていた同時刻。
男O「また振られてしもうたなぁ…。でも絶対おるはずや!この国には俺の運命の子が!」
男Oは町を徘徊しつつ意気込む。彼の頬には大きな赤い紅葉の跡が見える。
男O「しっかし、なんべんも思うけどけったいなトコやなぁ~。日本では考えられへんで」
『日本では』。聡明な人なら気付くと思うが、この男O、この国の、いやこの世界の住人では無い。
男Oが、この外史に来たのはこの世界で数えて、一年ほど前。
彼は当然混乱した。いくら戦が無くなったとはいえ、始めの1ヶ月は死ぬ一歩手前、ということが何度もあった。
だが、彼は死ななかった。なぜか?
それは彼曰く。
そこに女のコがいたから。
だという。
なんのこっちゃ。という人も多いだろう。
考えてほしい。
彼は弱い。彼は普通の学生だ。家が道場というわけでもなく、部活に入っているわけでもなく、喧嘩に強いというわけでもない。
彼の取り柄といえば、陽気な性格。高いコミュニケーション能力。女好き。ぐらいだろうか?
だが、一見役に立ちそうにないこの長所は彼がこの世界で生き残るには最適な能力だった。
彼の通っていた聖フランチェスカ学園は女子9割、男子1割で、更には可愛い女のコの多いハーレム学園だった。
にも関わらず、彼は女性と長続きしたことが無い。なぜ?────それは性格がモロバレしているから。
そして、この世界。こちらも学園に勝るとも劣らず可愛いコが多い。
彼は放浪の途中で、市を見て回っている劉備を見て思った。「チャンスや」と。
この世界には自分の性格を知る者はいない。じゃあ、自分を好きになってくれるコがいるのではないか、と。
だが、相手は武将や、文官。そして、王。普通に会おうと思っても会えるわけがない。
じゃあどうする?
ああ、なら自分も武将になればええんや。
普通なら考えないだろう。だが、彼は違う。彼は無類の女のコ好きなのだ。彼には妄想を実現するための根性があった。
まずは基礎体力。
その為に呉軍の雑用を志願し、練兵に参加しつつも雑用をこなし、孫権と呂蒙に振られ、甘寧に追い回された。
次に武術。
兵の質が高いのは魏と聞いた。魏には新兵に対する特殊な訓練法があると聞き、魏軍に入隊し、訓練に参加しつつも、風と流琉に手を出そうとし、秋蘭に頭を打ち抜かれそうになる。
そして、心。
徳を主とした王の下にいれば、心が穏やかになるも、不屈の精神が得られるのではないか?と思った彼は蜀軍に入り、魅力というものを学びながら、諸葛亮と劉備に手を出そうとし、鬼に殺されそうになった。
かくして、一般男性では考えられぬほどの力を持ちつつも、三国の軍に彼の居場所はなくなった。
じゃあ、民に手を出せばいいだろう。と考えたのだが性格は変わらず。
見事に振られ続ける人生。
男O「そろそろ身ぃ固めんと子孫残されへんなぁ…。どないしよ…」
女遊びを止める。という選択肢がない男O。
???「じゃあ、元の世界に戻ればいいだろう?今のお前ならそこそこモテるかも知れねえぞ?」
男O「へ?」
男Oの目の前に包帯を巻いた男が立ちふさがる。
男「え?自分なんなん?…え、あ、あれ?他の人どこいったん?」
突然話しかけられ、混乱する男O。そしてなぜか、回りには人っ子一人いない。
???「結界ってやつだ。今のオレたちは人から見えん。見えれば騒ぎになるからな」
謎の男の声は抑揚のない、まるで人形が喋っているような声。
男O「…ようわからんけど、まぁ、包帯巻いた怪しいやつおったらパニック起こすやろうしなぁ」
???「いや、そういう問題じゃないんだが…まぁ、いいか」
そう言いながら、右手を振り上げる謎の男。
男O「へ?な、なんなんこの手?てか、ちょ待って?自分どっかで…」
謎の男の行動に混乱しつつも何かを思い出しそうとする男O。
???「…ちっ!早く消えろ!」
右手を振り下ろす。
男O「あ!なんか思い出してきたで!確か…てか、俺の名前は………!」
パンッ!
謎の男が右手を男Oに当てると同時に何かが弾けた音がし、男Oが消えた。
???「…ふぅ、今日はこんなものか。じゃあ、どっか宿を……」
謎の男は額に少し汗をかき、両手を広げた。
が
???「思ったより見つかるのが早かったな」
手を戻し、振り返る。
卑弥呼「今のは何だ?滅か?」
貂蝉「ちょっと違うみたいねん。消した、というより飛ばした感じがしたわねん」
振り返った先には貂蝉と卑弥呼。
???「いつ気付いた?」
貂蝉「あなたが今、男Oを消した?ときと同じ力を使った時かしらねん」
卑弥呼「ほんの一瞬であったが、明らかに異質だからのう。気づかぬわけがあるまいて」
???「ほう、流石は肯定派筆頭実力者、漢女道の貂蝉と卑弥呼か。少し舐め過ぎていたかな?」
謎の男は足を半歩開き、警戒の態勢へ入る。
貂蝉「ということは、あなたは『否定派』かしら?その格好もこの外史の『否定派』の正装だものねん」
卑弥呼「だが、この外史で役目を持っているということは名のある者と見るが、いかがかのう?」
そして、2人も警戒の態勢へ。
???「さぁ、どうだろうな?」
貂蝉「とぼけちゃだめよん?この外史がおかしいのは貴方の仕業ね。すぐに戻さなければ…」
警戒の態勢から、戦闘態勢へ。結界と呼ばれる空間が歪み始める。
???「……………はぁ」
対して謎の男はため息。
卑弥呼「…む?」
卑弥呼も貂蝉と同じく戦闘態勢を取ろうとしていたのだが肩すかし。
???「お前らさぁ…。もしかしてこの外史がおかしいのは自分たちに関係ないとかおもってないか?」
卑&貂「「??????」」
???「やっぱり…。…わぁーったよ!説明してやるよ!」
卑弥呼「なに?お主の所為ではないのか?」
???「いや、俺の所為でもある。だけど、お前たちも無関係じゃないんだよ!」
貂蝉「どういうこと?」
貂蝉も卑弥呼も頭上に?マークが飛び交っている。
その姿を見て謎の男は息を大きく吸い込み、続ける。
???「だったら教えてやるよ!一刀が帰ってきて、繰り返しながらも歪んでしまった、この新たなる外史をな!」
─────今、全ての謎が解ける。
???「てか、卑弥呼。お前、胸当ては?」
卑弥呼「ん?」
卑弥呼は謎の男の言葉に自分の胸を見る。
するとそこには露わになった、胸。
なぜ胸当てがないのか?
それは胸を強調して腕を組んだりしたから。そして、急に出てきてしまったものだからその勢いで胸当てが取れてしまったのだ。
卑弥呼「き」
?&貂「「き?」」
卑弥呼「きゃああああああああああああああああああああ!恥ずかしいいいいいいいいいい!!」
ありえないスピードで城に消える卑弥呼。
おそらく胸当てを取りに行ったのだろう。
???「…なぁ、オレ帰っていいか?」
いや、だから胸筋だって。
Tweet |
|
|
48
|
1
|
追加するフォルダを選択
なんと久し振りの週一投稿です。
ちなみに???の最後付近のセリフは言わせたかったことです。
セリフの頭にキャラ名入れました。理由はその方が分かりやいからです。
でわ、ごゆるりと…
続きを表示