リズの演説がひと段落するとアークはリズに握手を求めました。
「フラウは悪魔の化身です!フラウのような悪女をのさばらせておいてはなりません。どうか私に手を貸してください。ご静聴ありがとうございました」
「大変、聞き応えのある演説でしたね。こんな心にずしっと重く来る演説をできる人は他にいません」
「あなたは…確かフラウの部下だったはず。なぜここにいるのです?」
「僕はもうフラウ様の部下は辞めました」
「そうなの?フラウの悪女っぷりに嫌気がさしたのかしら」
「フラウ様は少し独占欲がお強いので、私がおそばにいると私の妻のナターシャ様が気を遣われると思いましたので」
「フン!いい気味だわ?見かければいつもイケメンをはべらせて、調子に乗ってるから気に食わなかったのよ」
「よろしければお食事でも一緒にどうです?」
「あなたが奢ってくださるの?」
「ええ、もちろんです」
二人は高級レストランに行きました。アークは議員の黒服を着ていましたが、普段着姿のリズは止められます。
「お客様、失礼ですがそのお召し物ではこの店にご入店は出来ません」
「ドレスが必要なようですね。ではとりあえず席をこれで確保しておいてください」
アークは金貨を十枚カウンターに置きました。
「かしこまりました。お待ちしております。三十分ほどで食事のご用意ができますので」
「リズさん、ブティックの方へ行きましょう」
リズはブティックに連れて行かれてドレスをあれこれ試着しました。アークはリズがどれを着ても褒めちぎります。漆黒でバラの刺繍と金箔が散りばめられた豪華なドレスに決めたようです。
「まさかドレスまで買っていただけるなんて」
「僕の不手際で店に入れず、申し訳ありませんでした」
「いえ、ここまでしていただけて嬉しいです」
「では、店までエスコート致します」
アークに恭しく手を取られて、まるで女王様にでもなった気分でリズは店に入りました。
…つづく
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本編のパラレルワールドをシナリオにしてみました。ストーリー第50話。