アークはナタにデートの誘いを断られて、一人でマルヴェールに帰りました。徒歩だと翼で飛んで帰るより時間がかかります。
「アーク殿、この記事について聞きたい事があるのですが」
「ああ、もうそんな大きな記事になっていたんですね」
「なぜ私に一言も相談せずに決めたのです?」
「敵に手の内を見せるわけがないでしょう?」
「私がアーク殿の敵になると?」
「ええ、私はゲイザー様の反対派の党に所属する予定なので。以前、ゲイザー様はこう仰いましたよね?無能だと罵るなら幹部に立候補しなさいと」
「あれはアーク殿に言ったわけではなくて、アラヴェスタ・タイムスのコラム記事を書いてる政治評論家に言ったのですが、まさかそのように受け取られていたとは…」
「ゲイザー様は私の意見に耳を傾けてくださらないので、私が幹部となって腐りきったアラヴェスタ王国を改革してみせます」
「私をテオドールのフィクサーだと呼ぶ者もいますが、テオドールは私の意見が間違っていると思った場合は許可しませんよ」
「アラヴェスタの王政にはマルヴェールの幹部でもあるユリアーノ様とゲイザー様の影響がとても強いので、テオドール様は影武者で真の国王はゲイザー様だと言う声もありますよ」
「私はナンバーツーの方が動きやすくて良いのです。フラウやテオドールには面倒な役目を押し付けて申し訳ないと思っています」
「そこがあなたの小賢しいところです。国王を名乗らず、実質上…今、二つの国を動かしているのは全てあなた一人です」
「私にはカリスマ性がありません。おそらくアーク殿の方が私よりもカリスマ性があるので、あなたの演説を聞いた者はあなたに投票するでしょう」
「カリスマ性?神が与えた天性の才能の事ですか…。私の才能は私自身が磨き、努力して得たものですよ」
「魔界の王とは言え、過去に多くの者を先導して従わせていたならば、カリスマ性の持ち主である事は間違いありません」
「私の才能は天が与えたものではありません!仮にそうだとしても才能を磨きもせず、努力を怠れば才能を失うでしょう」
「世襲制は才能のない者が国を動かす事になる場合もある。初代国王は有能であっても、その子供が有能であるとは限らない。親子で似た才能を持っていても怠惰な暮らしが、その才能を潰すのでしょう」
「元アラヴェスタ国王がまさにそれでしたね」
…つづく
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書き残してしまったことを書きたくて考えた本編の続き第87話です。