アークの街頭演説が終わってファンとの握手会が始まりました。ナタは少し離れた場所でそれを見ていて右肩にはピーター、左肩にはティターニアが乗っています。
「ナターシャ様、これから一緒にお食事にでも行きませんか?」
「んー、やめとく。アークと一緒にいると周りの女たちの目が痛いのよね」
「お付き合いしていると言うのに、デートも滅多に出来ませんし、なんだか物足りませんね」
「アークがファンの前で堂々と私が恋人だって発表しちゃったから、アラヴェスタ・タイムスにも『メサイアのアーク、熱愛発覚!』って載っちゃって、おかげで街を歩きづらいのよ…」
「それは私も目を通したのですが、なぜ私の事は何も言わずにナターシャ様だけを批難するのかわかりませんでした」
「アークには多分、一生わかんないわ…」
「主従関係にあった為に断りきれずに許婚にされたなどとデタラメを書かれて不快です」
「アークは人気があるから、私がファンから妬まれてるのもあると思うよ」
「メサイアのファンにはそんな心の穢れた人はいない…と思いたいのですけど」
「おじさんのファンはマナー良いのに、アークのファンはマナー悪くて、メサイアのファン同士でもたまに揉めてるよ?」
「何度もファンの前で説明したのですが、なぜ理解されないのか…。ナターシャ様がご結婚できる年齢になるまでは、想いを秘めていましたと」
「確かに私は結婚できる年齢だけど、おじさんはまだ子供扱いしてるし、私がワガママ言っておじさんに無理やり私と結婚しろってアークは命令されたとファンに思われても仕方ないよ」
「ゲイザー様がそんな理不尽な命令を私にしてくるわけがないのに…」
「おじさんのファンもそう言ってる。アークのファンはちょっとおかしい人が多いんだよ…」
「リリスも近所の人から悪い噂を流されていたんです。足が不自由なリリスの代わりに私が近所付き合いをしていたのですが、献身的な良い夫だと私の事は褒めてくれるのに、妻のリリスはなぜか悪口ばかり言われていて、それを聞くたびに私の心は痛みました」
「アークは何もかもが完璧すぎるのよ。顔も良くて、性格も良くて、頭も良くて、戦っても強くて、欠点がないところがアークの欠点」
「欠点がないのが欠点…。私はどうしたら良いのですか?」
「おじさんみたいになんか欠点があれば良いのかも?」
「ゲイザー様にも欠点なんてあるんですか?」
「いっぱいあるよ!貧乏性でお金に細かくてドケチだし、デリカシーがないから少し太ったとか失礼な事言ってくるし、家族をほったらかして他人を大事にしたりするし…」
「私には全て褒め言葉に聞こえます。お金の管理がしっかり出来て、女性の変化にすぐに気付けて、赤の他人にも優しくできる…」
「そうなんだよね…。おじさんの欠点って全部おじさんの良いところなの」
「欠点がないのが欠点の意味がわかりました。私には良いところがないので欠点がなかったのですね」
…つづく
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
書き残してしまったことを書きたくて考えた本編の続き第86話です。