ナタは今まで誰にも話せなかった悩みをアークに打ち明ける事にしました。
「私の前世…リリスじゃなくて十七年前、私が生まれる少し前って、多分メリッサだと思う」
「メリッサは確か…セルフィーユ王国を乗っ取ったと言われている魔女でしたね。なぜそれがナターシャ様の前世だと思われたのですか?」
「なんとなく、そう思ったの。たまに夢の中に出てくるし」
「メリッサを討伐された勇者は妖精と共に旅をしていた…と記録には残っていましたが」
「うん、ルリって名前の妖精。メリッサの伝説は絵本にもなってて、その絵本が大好きで何回も読んでたから」
「寝る前に読んでいたならば、絵本の話が夢に出て来ただけではないでしょうか?」
「うーん、でも私…メリッサの気持ち、少しわかっちゃうんだよねー」
「セルフィーユ皇太子を魅了の術で虜にして、国を乗っ取った気持ちが…ですか?」
「うん、多分ね。メリッサも私と同じでいじめに遭ってたんじゃないかな?それで誰からも愛されてないと思い込んじゃって、魅了の術を使ったんだと思うの。私もおじさんにかけてしまった事があるし」
「私も過去に戦争を起こしたのには理由があったのですが、神話として現在に残されている話は都合の良い嘘をでっち上げられて書かれているので、メリッサの伝説もデマカセかもしれませんね」
「うん、私はメリッサよりルリの方が好きだったんだけどね。それでタイタンに会った時、お友達になりたい!って思ったの」
「小柄な妖精に巨人と言う意味のあるタイタンと名付けるとは…。最後にアを付けてティターニアに改名されたのですね」
「うーん、小さいから大きくなって欲しいって意味で付けたんじゃない?」
「ああ、そう言えば大きな犬にチビと名付けている人間がいましたが、それと逆の発想なのでしょうか?」
「それは何も考えずに仔犬に名前付けて大きくなっちゃっただけでしょ?」
「大きいのにチビと呼ぶので違和感を持ちました」
「妖精のルリもね、私と同じでおじさんが好きだったらしいよ」
「おじさんと言うのはゲイザー様の事でしょうか…?」
「ううん、ファザコンって意味」
「娘は父親と似た人を好きになると昔から言いますけどね」
「私も多分、ファザコンなの。お父さんはいなかったんだけど、昔から年上が好きだったし、一歳の時に初めて会ったお師匠様にのこのこ付いて行ったのだって、渋目のおじさまだったからだよー?」
「ユリアーノ様は良いお方でしたが、そんな話を聞くとナターシャ様が怪しい中年男に騙されてさらわれないか心配になってきます…」
「私は邪悪な波動出してる人がいたら見えるから大丈夫!私ね、その頃からずっと好きになった人の事をおじさんって呼んじゃう癖があるのー」
「ゲイザー様はナターシャ様からおじさんと呼ばれるのが嫌だと仰ってましたが…」
「リリムがファザコンになった気持ちもわかるんだよねー。おじさんから頭なでなでされるとドキドキするの」
「リリムは…私が甘やかし過ぎたのが原因なので、ゲイザー様のように少し距離を置いて接するべきでした。ゲイザー様は子育てがお上手だと思います」
…つづく
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書き残してしまったことを書きたくて考えた本編の続き第75話です。