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英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇

soranoさん

第67話

2018-09-27 22:27:13 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1496   閲覧ユーザー数:1349

 

5月22日、演習最終日――――

 

~演習地~

 

「このような場所でのお見送りさすがに畏れ多いかと……」

ミハイル少佐はアリサ達と共に見送りに来たリーゼロッテ皇女に謙遜した様子で意見をした。

 

「ふふっ、どうかお気になさらず。今回、皆さんが為したことを考えればいくら感謝してもしきれませんから。」

ミハイル少佐の言葉に微笑みながら答えたリーゼロッテ皇女は第Ⅱ分校の生徒たちに微笑んで手を振り、リーゼロッテ皇女の行動に生徒たちは歓声を上げた。

 

「もう、ロッテ……」

 

「ふふっ、さすが姫様の代わりを務めているだけあってさすがのサービス精神ですね。」

 

「フフ、お陰でわたくしは安心してリィンさんの妻を務められ続けていますわ♪」

 

「アルフィン、貴女ねぇ………」

 

「クスクス、お二人はまさに似た者同士ですわね。」

リーゼロッテ皇女の行動にリーゼアリアが呆れている中微笑みながら答えたアルフィンの言葉にエリゼは呆れ、セレーネは微笑んでいた。

 

「フフ、本来ならばリィン君やティオ君達のかつての職場仲間達とも引き合わせたかった所だが。―――――今日で私達もエレボニアに帰還する事になるのだから彼らを忙しくさせている”原因”である”者達”は、全員クロスベルから撤退させたのだろうね?」

「そ、それは………………」

目を細めて睨んで問いかけたオリヴァルト皇子の問いかけにミハイル少佐が複雑そうな表情で答えを濁したその時

 

「そもそもアーヴィング少佐にそんな権限はないし、撤退させようにも連中は”撤退させられない状況に陥っている”からアーヴィング少佐を責めるのはさすがにお門違いだと思うぞ。」

ヴァイスがリセルと共にオリヴァルト皇子達の背後から現れた。

 

「ヴァ、ヴァイスハイト陛下!?それにリセル皇妃陛下まで……!わざわざお見送りにきてくださったのですか!?」

 

「おいおい、俺は”元”とはいえ、リィン達の上司でもあったのだが?かつての部下達の見送りくらいはするぞ。」

 

「フフ、それに第Ⅱ分校には”影の国”で共に戦った仲間もいますしね。」

 

「えへへ………」

ヴァイス達の登場にトワが驚いている中ヴァイスと共に現れた理由を説明したリセルはティータに視線を向け、視線を向けられたティータは嬉しそうな表情をし

 

「だからと言って、本当に見送りに来るなんて皇帝夫妻の癖に夫婦揃ってフットワークが軽過ぎよ……ギュランドロス皇帝とは別の意味で無茶苦茶な皇族ね……」

 

「セ、セリーヌ!ヴァイスハイト陛下とリセル皇妃陛下に失礼よ!?」

 

「ハハ………それよりも陛下。先ほど”撤退させようにも連中は撤退させられない状況に陥っている”と仰っていましたがあれはどういう意味なんでしょうか………?」

呆れた表情でヴァイス達に指摘したセリーヌの言葉にエマが慌てている中リィンは苦笑した後ヴァイス達に訊ねた。

「フッ、どうやらその様子ではまだ知らなかったようだな。アーヴィング少佐、どうせ隠した所で近日中に新聞等で判明するのだから昨日クロスベルの各地で行われた一斉検挙の件をリィン達にも教えてやったらどうだ?」

 

「………………かしこまりました。昨夜に入った情報だが………クロスベルの各地に潜伏していた情報局、鉄道憲兵隊の関係者達は全員、クロスベル軍・警察、そして遊撃士協会によって一斉検挙されてしまった。ちなみに逮捕された理由は潜伏していた者達がクロスベル帝国に”結社の残党”に認定されてしまったからとの事だ。」

 

「え――――――」

 

「ええっ!?ま、まさか昨日にそんな事が起こっていたなんて………!?」

 

「し、しかもクロスベルがクロスベルに潜伏していたエレボニアの諜報関係者達を”結社の残党”に認定するって一体どうなっているんですか!?」

ヴァイスに促されて重々しい様子を纏って答えたミハイル少佐の説明を聞いたトワは呆け、アリサは驚き、マキアスは困惑した様子でヴァイス達に視線を向け

 

「………なるほど。エレボニアの諜報関係者達がクロスベルに潜伏している間に”道化師”達が実際にクロスベルで事件を起こしましたから、クロスベルの各地に潜伏していたエレボニアの諜報関係者も”結社の残党”という冤罪を押し付けられても、世間はその事実を疑わないでしょうね。」

 

「うふふ、なるほどね。ヴァイスお兄さんたちがランディお兄さん達の件を了承する代わりに、クロスベルの各地に潜伏していたエレボニアの諜報関係者はエレボニア帝国政府・軍の関係者でない事を示す証明書にサインさせた”真の狙い”はそれだったのね♪」

 

「あ…………」

 

「ランディ達にクロスベルで起こった事件に介入させない”対価”はそういう条件だったのですか………」

 

「で、ですがランドロス教官はその条件を堂々と破りましたわよね………?」

ある事に気づいたシャロンとレンの話を聞いたエマは呆け、リィンは重々しい様子を纏って呟き、セレーネは困惑の表情でランドロスに視線を向けた。

 

「おいおい、何おかしなことを言っているんだ?映像に映っているギュランドロス皇帝も言っていただろう?オレサマとギュランドロス皇帝は”別人”だってな♪」

悪びれもない様子で答えたランドロスの答えにその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

 

「うふっ♪正確に言えば、捕虜になったエレボニアの諜報関係者たちを返してもらう為にクロスベルに来るであろうエレボニア帝国政府の関係者達にそういう条件も呑ませるのでしょう?」

 

「ま、そういう訳だ。―――――エリィもそうだが、ティオもすまなかったな。二人は既に警察関係者でもないのに、”結社の残党”の捕縛を手伝わせてしまって。」

 

「いえ………”三帝国交流会”が行われている影響で治安維持に関わる関係者達が多忙なのはかつてクロスベル警察に所属していた者として理解していましたから、かつてクロスベル警察にお世話になっていた身として………そして元特務支援課の一員として動いたまでです。」

 

「………ですね。ちなみにクロスベルに潜伏していた人達はランディさん達の分も含めて”お仕置き”しておきましたよ。」

 

「ハハ、ティオすけにやられた連中には同情するぜ。」

からかいの表情のエルファティシアの言葉に頷いたヴァイスはエリィとティオを労い、エリィは静かな表情で会釈をして答え、ティオの話を聞いたランディは苦笑していた。

 

「ええっ!?じゃあエリィ先輩達も関わっていたんですか……!?」

 

「そ、そういえばティオ主任はヴァイスハイト皇帝陛下の要請によってエリィさんやセティさん達と協力する”仕事”があると言っていましたけど……もしかしてその”仕事”が……!」

 

「クロスベルに潜伏していたエレボニアの諜報関係達の逮捕という訳だったのか………と言う事はロイド君やエステル君達も、各地で”結社の残党”認定されたエレボニアの諜報関係者たちを捕らえたのかい?」

 

「ええ。ちなみにエレボニア方面の遊撃士協会からの応援で旧Ⅶ組の関係者であった”紫電(エクレール)”と”西風の妖精(シルフィード)”も結社の残党の一斉検挙に協力してくれましたよ。」

 

「サ、サラ教官とフィーまで……っ!?」

 

「まさか旧Ⅶ組(私達)の関係者まで関わっていたなんて………」

ユウナが驚き、ある事に気づいたアリサが不安そうな表情で呟き、アリサの推測を重々しい様子を纏って口にしたオリヴァルト皇子の質問に答えたリセルの説明を聞いたマキアスとエマは信じられない表情をした。

 

「………………あの、ヴァイスハイト陛下。我が国の者達が貴国に大変なご迷惑をおかけしていながら勝手な申し出と思われますが、貴国が捕らえた我が国の者達の返還の交渉をさせて頂けないでしょうか……?」

「ロッテ……」

 

「あー……せっかくの申し出の所悪いが、連中の返還の交渉についてリーゼロッテ皇女もそうだがオリビエも関わる事はできない。――――というか、むしろ交渉に関わったらエレボニア(そちら)にとってもそうだが、クロスベル(こちら)にとっても面倒な事態になりかねないから、連中の返還の交渉についての交流会に来ているVIPの面々の参加は遠慮してもらう。」

 

「……?それは一体どういう意味だい?」

複雑そうな表情で黙り込んだ後決意の表情になって申し出たリーゼロッテ皇女の様子にリーゼアリアが心配そうな表情を浮かべている中困った表情でリーゼロッテ皇女の申し出を断ったヴァイスの説明が気になったオリビエはヴァイス達に訊ねた。

「……今後の西ゼムリアの平和を保つための話し合いでもある”三帝国交流会”の期間中に捕らえられた世間では”結社の残党”――――つまり”国際犯罪組織”の関係者扱いされているエレボニアの諜報関係者達の返還の交渉を交流会に訪れているエレボニアのVIP達が関わったという事実が世間に知れ渡れば、エレボニアは他国家や他勢力からの信頼を更に失う所か結社と連なっている疑いがかけられ、クロスベルは国際犯罪組織の関係者のをむざむざと他国―――――それも”宗主国”であったエレボニアに返還する交渉をしたという事実が世間に知れ渡ればクロスベルの民達もそうですが、世間のクロスベル政府に対する信頼が揺らぎかねない可能性に陥りますから、彼らの返還の交渉は秘密裏に行わければならないのです。」

 

「ましてや、昨日の一斉検挙の際、”結社の残党”の一部はレクター少佐の誘導によってメンフィル帝国領――――それも”七日戦役”勃発の地となったユミルを撤退ルートに選び、ユミルの領内に密入国をしましたから、リーゼロッテ皇女達が彼らの返還の交渉に関われば、メンフィル(我々)も関わらざるをえませんので。」

 

「え……………」

「レクター少佐がユミルを撤退ルートに選んだって……一体どういう事ですか!?」

セシリアと共に説明したサフィナの話の中にあった驚愕の事実を知ったその場にいる全員が血相を変えている中エリゼは呆け、リィンは厳しい表情で訊ねた。

 

「そのままの意味よ。リィンお兄さん達も知っての通り、平時のユミルは他のゼムリア大陸に存在するメンフィル領と違ってメンフィル兵を徘徊させていない所か、配置もしていないわ。さすがに同盟を結んでいるとはいえクロスベルの軍や警察関係者が許可もなく他国領に踏み込めない上、普通に考えればエレボニアの政府・軍関係者が”七日戦役”勃発の地となったユミルを撤退ルートに選ばないという先入観があるから、レクター少佐は敢えて撤退ルートにユミルを選んだのよ。――――まあ、その結果それを予測していたロイドお兄さんやサラお姉さんたちにボコボコにされたらしいけどね♪」

 

「え……………それじゃあユミルはロイドさん達が守ってくれたのですか………?」

 

「――――ああ。最も、少佐達も”七日戦役”の件があるから、郷から逸れるルートを選んだ上万が一ユミルの関係者達に遭遇しても危害を加えるつもりはなかったらしいけどね。」

レンの説明を聞いてあることに気づいたセレーネが呟いたその時、聞き覚えのある青年の声が聞こえた後ロイドが姿を現した!

 

「あ…………」

 

「わあ………!おっかえりー、ロイド――――――ッ!」

ロイドの登場にユウナが呆けたその時、目を輝かせたキーアがロイドにタックルをした。

「おっと。ただいま、キーア。いい子にしてたか?」

 

「うん!昨日は赤ちゃんがいるセシルの”定期健診”の為にシズクと一緒に病院に付き添ったんだよ~!」

 

「そうか………ありがとうな、キーア。」

嬉しそうに報告するキーアの頭をロイドは優しくなでた。

 

「フフ、長期の出張、お疲れ様、ロイド。」

 

「お帰りなさい、ロイドさん。もしかしてロイドさんもランディさん達の見送りに?」

 

「ああ、何とか間に合ってよかったよ。」

 

「ハハ、それにしては絶妙なタイミングじゃねぇか。まさに”真打ち登場”ってか?」

エリィとティオに労われたロイドは頷き、ランディは苦笑した後からかいの表情でロイドを見つめた。

 

「ハハ………別にそんなつもりはないんだが………―――――久しぶりだな、リィン。」

 

「ああ……”碧の大樹”の件以来だから、こうして直に会うのは1年半ぶりになるな。今レン教官から聞いたけどユミルを撤退ルートに選んだレクター少佐達と戦ったんだって?少佐達が父さんや郷の者達と接触する前に無力化してくれて、本当に助かったよ。」

 

「ユミルや父様達を私達の代わりに守ってくださり、本当にありがとうございます。」

ロイドと対峙したリィンはエリゼと共に感謝の言葉を述べ

 

「いや、結果的とはいえクロスベルの事情に君達の故郷まで巻き込みかけたのだから、そのお詫びとして俺達は当然の事をしたまでさ。」

 

「それでも本当に感謝している。―――ありがとう。」

 

「”七日戦役”で頂いたメンフィルの恩を仇で返そうとしていた我が国の愚行を止めて頂き、本当にありがとうございます………」

 

「えっと、貴女は………?」

アルフィンは頭を下げて感謝の言葉を述べ、アルフィンと初対面のロイドは不思議そうな表情でアルフィンを見つめた。

 

「フフ、そういえばまだ名乗っていませんでしたわね。1年半前のエレボニアの内戦終結後”七日戦役”の和解条約に従ってリィンさんの7人目の妻としてリィンさんに嫁いだアルフィン・シュバルツァーと申します。ロイドさんの事はリィンさんやオリヴァルトお兄様達から伺っておりましたわ。」

 

「ええっ!?貴女がオリヴァルト殿下の………!」

アルフィンが自己紹介をするとロイドは驚き

「えっと、リィン。もしかしてそちらの人が貴方とセレーネがかつて所属していた………?」

 

「っと………そういえばまだ名乗っていなかったな。俺はクロスベル軍警察捜査一課所属、ロイド・バニングス捜査官。かつてはリィンやセレーネが所属していた”特務支援課”のリーダーを務めていた。君達は確か”旧Ⅶ組”だったね?君達の事はリィン達から聞いているよ。俺達の代わりにクロスベルの事件を解決してくれてありがとう。」

ロイドの事が気になったアリサがリィンに訊ねると、ロイドは自己紹介をしてアリサたちを見回した。

 

「い、いえ………ティオさん達の助力がなければ星見の塔に辿り着けなかったですし、それに新Ⅶ組を含めた多くの方々の助力もあって、何とか代わりを務められたようなものですから………」

 

「そうだな……僕達がまだ学生だった頃から数々の大事件を解決してきた君達”特務支援課”と比べるとまだまだな事が今回の件で痛感したよ。」

ロイドの感謝の言葉に対してエマとマキアスは謙遜した様子で答え

 

「――――そんなことはないさ。俺達だって様々な人達の力を借りて今までの事件を解決できたようなものだし、今回の件だって君達の力も借りて事件を解決できたのだから、お互い様さ。――――――お疲れ様。今回は本当に助かったよ。」

二人の答えに対して指摘をしたロイドは笑顔を浮かべてアリサたちを見つめて労いの言葉をかけ、その様子を見守っていた多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

 

「リィン達の話を聞いて察してはいたけど、まさかここまで似ているなんてね………」

 

「ふふっ、もしかしたらリィン様の性格はロイド様に影響されたのかもしれませんわね♪」

 

「ア、アハハ………(私はどちらも”素”だと思うけど………)」

我に返ったアリサはジト目でロイドを見つめ、シャロンはからかいの表情で呟き、トワは苦笑し

「ロイド、貴方………」

 

「帰ってきて早速ですか………」

 

「えへへ、でもそれがロイドだもんね♪」

 

「ったく、どうせお前の事だからユミルでリーシャちゃんとうらやまけしからんこともしたんだろう?この弟王が………!」

一方エリィとティオはジト目でロイドを見つめ、キーアは無邪気な笑顔を浮かべ、ランディは呆れた表情で溜息を吐いた後悔しそうな表情でロイドを睨み

 

「クスクス、教官と出会う前だったら私も危なかったかもしれませんわね♪」

 

「あんたねぇ………けど、ロイド先輩のそういう所も相変わらずよね………」

 

「………教官とロイドさんはまさに”似た者同士”ですね。」

からかいの表情で呟いたミュゼの言葉に呆れたユウナは苦笑しながらロイドを見つめ、アルティナはジト目でリィンとロイドを見つめた。

 

「えっと………俺、何か不味い事でも言ったのかな………?」

 

「というかなんでそこで、俺の名前まで挙がるのか意味がわからないんだが………」

 

「ハッハッハッハッ!さすがはそれぞれ三帝国の綺麗所をハーレムの一員にした英雄殿達だね♪」

周りの人々の様子にロイドは戸惑い、リィンが疲れた表情で溜息を吐くとオリヴァルト皇子は暢気に笑っていた。

 

「全く、このスチャラカ皇子は………お目付け役のミュラーさんがいないせいで、前よりもスチャラカしているんじゃないかしら?」

 

「アハハ……ミントは前と同じだと思うよ?ミュラーさんがいても、オリビエさんはいつも通りだったし。」

 

「二人とも、この場には他の人達もいるんだからそういうことを口にするのは慎んだ方がいいと思うよ………?」

 

「フウ………ミントもアストライアのように段々とエステルの悪影響を受け始めてきていますわね………」

するとその時エステル達が姿を現した!

 

「おや………」

 

「あ…………っ!」

 

「フッ、まさに”勢揃い”の状況だな。」

 

「……!?(あの黒髪の野郎はまさか………!)」

 

「………………」

エステル達の登場にオリヴァルト皇子は目を丸くし、ティータは嬉しそうな表情をし、ヴァイスは静かな笑みを浮かべ、ヨシュアの顔を見た瞬間左目が疼いたアッシュは左目を抑えながらヨシュアを睨み、アッシュの様子に気づいたミュゼは真剣な表情を浮かべ

 

「お疲れ様です、エステルさん、ヨシュアさん、ミントさん、それにフェミリンス殿。貴女達も第Ⅱの見送りに?」

 

「うん!リィン君達に挨拶をしたかった事もそうだけど、ティータとも話をしたかったしね!」

 

「ハハ、そういえばティータは”リベールの異変”時、共に解決したエステル達の仲間だったな。」

リセルの問いかけに答えたエステルの話を聞いたリィンは苦笑しながらティータに視線を向けた。

 

「エステルお姉ちゃん、ヨシュアお兄ちゃん、ミントちゃん!」

するとティータは嬉しそうにエステル達に駆け寄り

 

「久しぶり、ティータ。最後に会ったのは第Ⅱ分校への入学前だから2ヵ月ぶりくらいかな?」

 

「第Ⅱ分校では友達ができたかしら?」

 

「うん!みんな、とっても優しい人達で、授業も新鮮で為になる内容ばかりで毎日がとても楽しいよ!」

ヨシュアとエステルの問いかけに対してティータは嬉しそうな様子で近況を伝え

 

「アハハ……授業が楽しいって、さすがはティータよね。」

 

「ティータのそういう所はエステルも見習うべきだと思うけどね。日曜学校どころかジェニス王立学園に短期間いた時も、君、頻繁に居眠りをしていただろう?」

 

「うっさいわね!そんな昔の事をここで持ち出さないでよ!?」

 

「ア、アハハ……」

 

「ハア………将来生まれてくるアストライアに”母”としてどのような教育をするのか、考えただけで頭が痛くなってきますわね………」

 

「クスクス………」

エステルとヨシュアのいつものやり取りの様子にその場にいる全員が呆気に取られている中ミントは苦笑し、フェミリンスは呆れた表情で溜息を吐き、ティータはエステル達の様子を微笑ましそうに見守っていた。

 

「えっと、お義兄様。もしかしてこの方達が4年前のお義兄様のリベール王国の旅行時にお世話になったカシウス卿の………?」

 

「ああ。そしてエステル君は”百日戦役”の英雄であるカシウスさんの娘であり、世界で一人しかいない遊撃士達の頂点たる存在―――――”ブレイサーオブブレイサー”にしてメンフィルから”侯爵”の爵位を貰った自由貴族であり、そしてあの”空の女神”の血を引く”空の女神の末裔”さ♪」

 

「なっ!?そ、”空の女神”の………!?しかも”百日戦役”で活躍したあのリベールの”英雄”の娘だなんて………!」

 

「そ、そういえば以前オリヴァルト殿下達から”空の女神”に子孫が存在して、その一族が今も存続し続けている話を聞いたことはありますが………」

 

「まさかアンタがかの”剣聖”の娘にしてあの”空の女神(エイドス)”の末裔とはね………」

リーゼロッテ皇女の質問に答えたオリヴァルト皇子の答えにその場にいる多くの者達が驚いている中マキアスは信じられない表情で声を上げ、エマは驚きの表情で真剣な表情を浮かべているセリーヌと共にエステルを見つめた。

 

「あたしとしては不良中年親父はともかくあの自称”ただの新妻”の子孫に見られたくないんだけどね………ま、それはともかく。――――初めまして!あたしの名前はエステル!遊撃士のエステル・ファラ・サウリン・ブライトよ!よろしくね、Ⅶ組と第Ⅱ分校のみんな!」

 

「同じく遊撃士のヨシュア・ブライトです。サザ―ラントでは僕達の遊撃士仲間のアガットさんやフィーに協力してくれてありがとうございました。」

 

「ミントは二人の義娘でママ達と同じ遊撃士のミント・ルーハンス・ブライトだよ!よろしくね!」

 

「――――我が名はフェミリンス。様々な事情により彼女達と共に遊撃士稼業を務めていますわ。以後お見知りおきを。」

エステルは疲れた表情で溜息を吐いてジト目である人物を思い浮かべた後気を取り直して自己紹介をし、エステルに続くようにヨシュア達も自己紹介をした。

「貴女達がカシウス卿の………――――お初にお目にかかりますわ。わたくしの名はアルフィン・シュバルツァー。リィンさんの妻の一人でオリヴァルトお兄様の妹の一人ですわ。4年前は兄のお世話をしていただき、ありがとうございました。」

 

「へ………ってことは貴女が”七日戦役”の件でリィン君と結婚したオリビエの………アハハ、別にあたし達はお礼を言われるような事はしていないわよ。そこのスチャラカ皇子のストッパーは主にミュラーさんとシェラ姉だったし。」

 

(兄上………)

自己紹介をしたアルフィンの話を聞いたエステルは目を丸くした後苦笑しながら答え、エステルの話にその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中クルトは疲れた表情で兄の顔を思い浮かべた。

 

「エステル………時と場合を考えて発言しなよ………下手したらここにいる人達のオリヴァルト皇子に対する印象が変わるかもしれないんだよ?」

 

「いや、変わるも何も幾ら猫を被っていたところで、オリビエは所詮ただのスチャラカ皇子じゃない。どうせオリビエの事だから、”本性”もとっくに見せていると思うわよ?」

 

「フッ、さすがはエステル君。久しぶりの再会でそこまで僕の事をわかっている事をこんな大勢の前で口にしてくれるなんて、その…………照れてしまうよ。」

呆れた表情をしたヨシュアの指摘に対してジト目で答えたエステルの話を聞いたオリヴァルト皇子は顔を赤らめて答え、その様子にその場にいる全員は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

 

「顔を赤らめながらおぞましい事を言うのはやめい!」

 

「「お(義)兄様、おふざけは時と場合を考えてしてください。」」

エステルはオリヴァルト皇子を睨んで怒鳴り、アルフィンとリーゼロッテ皇女は同時にハリセンでオリヴァルト皇子の頭を叩いてツッコミをし

 

「アハハ……何年経っても、どんな状況になろうともオリビエさんはオリビエさんだね。」

 

「ハア………まさに皇族の恥晒しのような人物ですわ………」

その様子を見守っていたミントは苦笑し、フェミリンスは呆れた表情で溜息を吐いた。

 

「あ、それよりも旧Ⅶ組のみんなに先に謝っておくね?昨日エレボニアの諜報関係者達を捕らえる際に妨害してきた貴女達の仲間の一人に”お仕置き”をしちゃってごめんね?」

 

「わ、私達Ⅶ組の仲間でエレボニアの諜報関係者達を捕らえる際に妨害してきた人物ってまさか………」

 

「間違いなくミリアム様かと。」

 

「まあ、ミリアムの立場を考えれば仕方ないといえば、仕方ないか………」

 

「はい………」

エステルに謝られ、エステルの話にあった人物にすぐに思い当たったアリサは不安そうな表情をし、シャロンは静かな表情で呟き、マキアスとエマは複雑そうな表情をしていた。

 

「!?…………」

一方シャロンに気づいたヨシュアは驚いた後真剣な表情でシャロンを見つめていた。

 

「やれやれ、君達に撃退される羽目になったミリアム君はご愁傷様と言うべきだろうね………と言う事はもしかしてミリアム君もクロスベルに捕らわれてしまったのかい?」

 

「ううん、ミリアムちゃんもそうだけどクレア少佐だっけ?二人はシェラ姉とトヴァルさんに保護してもらって帝都(ヘイムダル)に帰還してもらったわ。」

 

「ちなみにレクター少佐は戦闘終了後サラさんとフィーに保護してもらって、帝都(ヘイムダル)に帰還してもらいました。」

 

「ふえ………?どうしてミリアムちゃん達だけは捕まえずにエレボニアに帰還させたんですか………?」

疲れた表情で溜息を吐いた後にヴァイスに問いかけたオリヴァルト皇子の質問に答えたエステルとロイドの話を聞いたトワは不思議そうな表情で訊ねた。

 

「ん?大した理由じゃないぞ?連中にクロスベルに手を出せば、痛い目に遭う事を連中の”親玉”に伝える伝言役として見逃してやっただけだ。」

そしてヴァイスの答えを聞いてあることを察したその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

 

「いやいやいや!?思いっきりとんでもない理由じゃねぇか!?つーか、それって2年前のギュランドロスのオッサンとルイーネ姐さんの”仕切り直し”のようなものじゃねぇか!」

 

「ほう、ランディはすぐに気づくとはさすがだな!だぁっはっはっはっ!」

 

「あの、笑い事ではないのですが。しかもクロスベルに潜入していたエレボニアの諜報関係者の救援に来たレクター少佐達を無力化していながらも捕まえずにわざと見逃す事も一種の”見せしめ”になって、オズボーン宰相もそうですがレクター少佐達にも挑発しているように見えますね。」

 

「幾ら相手側に非があるとはいえあまり相手を挑発するような事は正直な所、止めて頂きたいのですが………」

 

「全くですね。相手の性格を考えれば、むしろ逆効果になるでしょうしね………」

 

「しかも昨日は結社と地精にも喧嘩を売ったものね~?」

逸早く我に返ったランディは疲れた表情でヴァイスに指摘し、ランドロスは豪快に笑い、ティオはジト目でランドロスを見つめた後推測を口にし、エリィとリセルは疲れた表情で溜息を吐き、エルファティシアはからかいの表情で呟いた。

 

「うふふ、そんな事よりもエステルはミリアムへの”お仕置き”はどんな”ぶっ飛ばし”になったのかしら♪どうせエステルの事だから手加減抜きの”ニーベルンヴァレスティ”でミリアムに”お仕置き”したのでしょう?」

 

「いや、殺傷力が滅茶苦茶ある”ニーベルンヴァレスティ”だと加減しても、ミリアムちゃんが死んじゃうでしょ。ちゃんと加減した技で無力化したから戦闘後もミリアムちゃんは意識を保っていたわよ。」

 

「そういっている割にはエイドス直伝の神技で”白兎”を無力化したようですが。」

レンとエステル、フェミリンスのとんでもない会話内容にその場にいる全員は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

 

「エ、”エイドス直伝の神技”って………もしかしてエステルさん、エイドス様がゼムリア大陸に滞在している間にエイドス様から技を教えてもらったんですか………?」

逸早く我に返ったセレーネは表情を引き攣らせながらエステルに訊ね

 

「うん。エイドスの話だと、エイドスの血を引いているあたしなら習得できるって話だったからせっかくの機会ってことでエイドスから、エイドスの神技と神術を教わったのよ。その代わり”ニーベルンヴァレスティ”を含めたあたしのいくつかの技もエイドスに教えたけどね!」

 

「そ、”空の女神”の”神技”と”神術”を教わったって………!どちらも決して”人”の身で、習得できるものではありませんよ………!?」

 

「まあ、その娘が空の女神の血族である事を考えるとその娘が空の女神の”神技”や”神術”を覚えられる”素質”がある事には一応納得はできるわよ。………にしても空の女神の神技と神術が受け継がれたなんて話、七耀教会が知れば、絶対大騒ぎするわよ………」

 

「ひ、非常識な………」

 

「お、お姉ちぁ~ん………」

 

「ハッハッハッ!エステル君の”人外”っぷりは相変わらずどころか、前よりもパワーアップしているね♪」

エステルの答えを聞いたエマは信じられない表情をし、セリーヌとマキアス、ティータは疲れた表情で溜息を吐き、オリヴァルト皇子は暢気に笑い

 

「ご愁傷様です、ミリアムさん。この時ばかりは心の奥底から同情します。」

 

「そういっている割にはあまり、同情しているようには見えないわよ………」

 

「大丈夫………そのミリアムって人は、ちゃんと無事な様子で教官や私達と一緒に行動している所も”視えた”事があるよ………」

 

「前々から疑問に思っていたが、君は一体どこまでの未来を既にみたことがあるんだ………?」

静かな表情である人物を思い浮かべたアルティナの言葉を聞いたユウナは呆れた表情で指摘し、ゲルドの話を聞いたクルトは疲れた表情溜息を吐いた。

 

「――――よかった。何とか間に合ったみたいですね。」

 

するとその時エステル達やロイドのように導力バイクで演習地に来たセティ達がリィン達に近づいてきた。

「セティ……それにシャマーラとエリナも。エリィ達が見送りに来てくれて、君達は見送りに来ていない事を不思議に思っていたけど、何か用事があったのか?」

 

「うん!ヴァイスハイト陛下達から依頼された品物の最終調整にちょっとだけ時間がかかっちゃって、来るのがギリギリになっちゃったんだ。」

 

「え……………ヴァイスハイト陛下達からの”依頼”、ですか?しかもその品物の最終調整の関係で遅れたという事は、もしかしてわたくし達に関係があるのですか?」

リィンの質問に答えたシャマーラの説明を聞いたセレーネは不思議そうな表情でヴァイスを見つめて訊ねた。

 

「フッ、察しがいいな。―――――第Ⅱ分校の諸君、知っている者もいるかもしれないが改めて紹介しておこう。彼女達はクロスベルの”工匠特区”の礎となった”ディオン三姉妹”。双界一の職人と評されている”匠王”の娘達だ。昨日(さくじつ)、クロスベル軍・警察の代わりにクロスベルで暗躍を行っていた結社の連中の撃退、そして星見の塔に徘徊していた結社の人形兵器の掃討の礼として、彼女達が開発した武装を第Ⅱ分校の諸君に送呈する。遠慮なく受け取るといい。」

 

「彼女達の開発した武装もウィル殿が開発した武装と遜色ない程の素晴らしい品々ですから、今後の活動に役立てて下さい。」

 

「フフッ、さすがに父様と同格だなんて過剰に評価し過ぎですが………皆さんが私達が開発した武装の力を完全に引き出すことができれば、生身で戦車や機甲兵等の”兵器”にも対抗できる力を秘めていますよ。」

 

「ふえええええええええっ!?」

 

「な―――――お、お待ちください!そのような事、今初めて聞きましたし、失礼を承知で意見をさせて頂きますが彼らには分不相応な物ですし、エレボニア帝国政府に話も通さずにそのような高性能な武装を学生の彼らに下贈(かし)すれば、エレボニア帝国政府にいらぬ誤解を招いたり等の様々なトラブルの発生の恐れが考えられます!」

ヴァイスとリセル、エリナの説明にその場にいる多くの者達が驚いている中トワは信じられない表情で声を上げ、ミハイル少佐は絶句した後慌てた様子でヴァイスに意見をした。

 

「エレボニア帝国政府に関しては、既に交渉に入っているルイーネ達に交渉相手であるアランドール少佐にその件も言い含めておくようにルイーネ達に伝えてある。それにセティ達が開発した武装は昨日の件が起こらなかったとしても、元々ユーディ達―――――”カイエン公爵家”が”寄付”という形で送呈するつもりだったらしいから、そんなに目くじらを立てる必要はないぞ。」

 

「へ………ユ、ユーディット皇妃陛下達―――――”カイエン公爵家”が、第Ⅱ分校にセティさん達が開発した新武装を”寄付”するつもりだったって………一体何故ですか?第Ⅱ分校と”カイエン公爵家”は縁もゆかりもありませんよね?」

ヴァイスの説明を聞いたアリサは不思議そうな表情でヴァイス達に訊ねた。

 

「アリサ室長ならば、既に気づいていると思うが第Ⅱ分校が設立された理由の一つは内戦後どこぞの宰相の政策によって、トールズ本校が改革された事によって失われつつある獅子心皇帝の理念を受け継ぐ事だ。そして第Ⅱ分校が設立された理由は元を辿れば、前カイエン公爵―――――クロワール・ド・カイエンが勃発させた内戦が一番の理由だ。父が犯した大罪の償いとして、そしてかつてはエレボニアを支えた”四大名門”の一角として、トールズ本校の連中から”捨石”やら”落ちこぼれ”やらと見下されながらも、改革前の本校の理念を受け継ぎ、精進し続ける第Ⅱ分校の諸君に対する細やかな協力として、この先も厳しい戦いが待っている第Ⅱ分校の諸君の生存率を少しでも上げるためにセティ達に武装の開発を依頼、依頼した武装を第Ⅱ分校に寄付する事を決めたそうだ。」

 

「あ…………」

 

「ユーディットさんがそのような事を………」

 

「………………後で改めてお礼を言っておかないといけませんね。」

 

「そうだね………それにしても今の話を聞いて、改めて非常に優秀な人材をエレボニアは手放してしまったことを痛感するね………」

 

「殿下………」

ヴァイスの話を聞いたトワは呆けた声を出し、アルフィンは辛そうな表情をし、静かな表情で呟いたリーゼロッテ皇女の提案に頷いて疲れた表情で溜息を吐いたオリヴァルト皇子の様子をクルトは心配そうな表情で見守っていた。

 

「ユーディット皇妃陛下か………僕もユーディット皇妃陛下の人柄やクロスベルでの活躍は新聞等で知っていたけど、今の話といい、とてもあの前カイエン公爵の娘とは思えない聡明な人物だな………」

 

「そうね。まさに言葉通り”鳶が鷹を産んだ”としか思えない貴族令嬢よね。」

 

「セ、セリーヌ。」

静かな表情で考え込んでいるマキアスの言葉に頷いたセリーヌの感想にエマは冷や汗をかいた。

 

「ま、そういう訳で第Ⅱ分校の諸君は遠慮なく受け取るといい。――――まだ、何か言いたいことはあるかな、アーヴィング少佐?」

 

「いえ………――――お前達、ヴァイスハイト陛下達の寛大な心に感謝し、そして陛下達の期待を裏切る事がないようにこれからより一層精進するように!わかったな!?」

 

「イエス・サー!」

そして第Ⅱ分校の生徒達はセティ達が持ってきたセティ達特製の武装の受け取りやサイズの調整等を始め、その間にリィンはアリサ達と今後について話し始めた。

 

 

 

ついに閃Ⅳが発売されましたね!まあ、私がゲットするのは明日ですが(畜生………なんで新作のPCゲーの発売日は金曜日なんだよ………!)閃Ⅳのプレイの関係で2章が終わったらしばらく更新は止まるので申し訳ありません。なるべくエウシュリー新作が発売されるまでには更新は再開したいと思っています(汗)それと2章終了後に出す予定のキャラのステータスはエリゼ、アルフィン、ベルフェゴール、リザイラ、セリカ、ロカです(他の戦女神、魔導巧殻キャラはあまりにも多い上、魔導巧殻に関しては2章のみの限定参戦でしたので終章でも活躍する予定の戦女神陣営を代表して主人公&メインヒロインのセリカとロカだけにしました)


 
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