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英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇

soranoさん

第68話(2章終了)

2018-09-29 21:34:25 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:2531   閲覧ユーザー数:2278

 

~演習地~

 

「それにしても、結社は変な事になってるみたいね………」

 

「ええ、まさか第二柱が追われているとは………」

 

「………はい………」

 

「そのあたりの状況は探っていく必要がありそうね。」

アリサとシャロンの話にエマは辛そうな表情で頷き、セリーヌは真剣な表情で呟いた。

 

「”蛇の使徒”の第二柱か~。確か話によるとその人はシルフィアさ―――じゃなくてリアンヌさんと同じ女性の”蛇の使徒”だったそうだけど、ヨシュアは結社時代その人と話した事とかはあるの?」

 

「………彼女―――――”蒼の深淵”と会話を交わした事はあるけど、会話は数える程だったから正直僕は彼女の人柄等についてはあまり詳しくないよ。彼女の興味はレーヴェだったから、僕はレーヴェのおまけ程度にしか見られていなかっただろうし。」

 

「へ………け、”結社時代”って、もしかしてヨシュアさんは………!」

そこに話に加わってきたエステルとヨシュアの会話を聞いてアリサたちと共に驚いたマキアスは信じられない表情でヨシュアを見つめ

 

「うん、かつては”執行者”の一人だったんだ。………最もエステルや父さん達との出会いがあったお陰で、結社を完全に離れる事ができて遊撃士として活動しているんだ。――――だからこそ、最初貴女が彼らと共にいる事には驚いたよ――――――執行者No.Ⅸ”告死線域”のクルーガー。」

 

「あ、あんですって~!?じゃあ、そこのメイドさんは結社の”執行者”なの!?」

ヨシュアは説明した後真剣な表情でシャロンを見つめ、ヨシュアの話を聞いたエステルは驚いた様子でシャロンを見つめ

 

「そういえばヨシュアはレオンハルト准将と同じ元”執行者”の一人でもあったから、シャロンさんと顔見知りでもおかしくなかったな………」

 

「シャロン………」

リィンは静かな表情でヨシュアとシャロンを見比べ、アリサは複雑そうな表情をしていた。

 

 

「フフ………―――――お久しぶりですわ、ヨシュア様。最後にお会いした時と比べると随分と雰囲気が変わられましたが………それも”剣聖”―――――いえ、かの”空の女神”の一族による導きでしょうか♪」

 

「………そうだね。父さんやエステル達との出会いで僕自身を取り戻せた事は否定しない。そういう貴女こそ、昔と比べると随分と雰囲気が変わっているね。」

 

「ふふっ、ヨシュア様がエステル様達との出会いがあったように、わたくしにも会長やお嬢様との出会いによって今のわたくしが存在するのですわ♪」

 

「もう、シャロンったら………」

シャロンとヨシュアの会話を聞いていたアリサは恥ずかしそうな表情をし

 

「う~ん………それにしてもシャロンさんが”執行者”ね~?あたし達が今まで会ったことがある”執行者”の連中とは全然違うように見えるわね。」

 

「えっと………エステルさんは遊撃士との事ですが………やはり過去結社の執行者と刃を交えた事があるのですか?」

 

「うん。え~と、ブルブランにヴァルター、ルシオラお姉さんにレーヴェ、それと直接戦ったことはないけどカンパネルラとも会ったことがあるわよ。あ、それと”碧の大樹”では結社じゃないけど、アリオスさんとも戦ったことがあるわよ。」

エマの質問に答えたエステルの答えを聞いたリィン達はそれぞれ冷や汗をかき

 

「ひ、一人でもとんでもない強さなのに、レオンハルト准将を含めた4人もの”執行者”やあのアリオスさんと戦ったことがある上”道化師”とも会ったことがあるって………」

 

「経歴がとんでもなさすぎだろ………――――って、そういえばアリオスさんはあれからどうなったんだ?」

我に返ったアリサはジト目でエステルとヨシュアを見つめ、マキアスは疲れた表情で呟いた後ある事を思い出し、リィンに訊ねた。

 

 

「あの後ヴァイスハイト陛下達に教えてもらった話だけど、昨日の星見の塔で想定以上の活躍をした”褒美”として今日一日だけ仮釈放されて、シズクちゃんと親子水入らずで過ごす事になっているらしいから、今頃はシズクちゃんと久しぶりの”親娘”として過ごしていると思う。」

 

「そうだったのですか………」

リィンの話を聞いたエマは安堵の表情をし

 

「それよりも、いいのか?こんな状況なのにセリーヌがしばらく俺の方に来てしまっても。」

リィンは自分の足元にいるセリーヌに視線を向けた後エマに訊ねた。

 

「ふふ、私も当てはありますししばらくは一人で大丈夫です。」

 

「それに今後の事を考えるとアンタには本来アタシ達が教えるべきであったヴァリマール―――騎神の操縦を含めた様々な事についても知ってもらった方がいいでしょうしね。しばらくアタシが鍛えてあげるわ。」

 

「わかった、よろしく頼む。――――くれぐれも元気で。何かあったら連絡してくれ。」

 

「はい………!セリーヌも、リィンさんのことよろしくお願いね。」

リィンの言葉に笑顔で頷いたエマはセリーヌに視線を向け

 

「ええ、アンタも気をつけなさい。」

視線を向けられたセリーヌは頷いた。

 

 

「マキアスは………しばらくクロスベルに残るそうだな?」

 

「ああ、第Ⅱ分校(君達)と違って、監査院(僕達)は”研修”という名目でしばらく、エレボニアからクロスベル警察へと追いやられたからな。改めて父さんとも話し合う必要がありそうだし、これを機会に君やセレーネのリーダーであった”彼”とも、話したいと思っている。」

リィンの問いかけに真剣な表情で頷いたマキアスはユウナたちと話しているロイドに視線を向け

 

「そうか………ロイドはとても真面目な男だから、マキアスとも話が合うと思う。」

 

「ハハ、そうか。監査院と警察………どちらも”法”に関わる組織だけど、その役割は似ているようで全く異なる………今後の為にも色々と学ばさせてもらうつもりさ。」

 

「フフ、そういえばマキアス様は第二柱のファンとの事ですが、クロスベルに滞在していればその第二柱の新たな意中の相手であるセリカ様の事をよく知るのにもちょうどいい機会ですわね♪」

リィンの話を聞いたマキアスが今後について期待している中シャロンはからかいの表情で指摘し、シャロンの指摘にリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

 

「シャロン、貴女ねぇ………って、そういえばセリカさん、だっけ?あの後リィン達とちょっとだけ言葉を交わした後メイドの人達と一緒にクロスベルに帰って行ったようだけど………一体何を言われたのかしら?」

 

「え、え~と………正確にはエマへの伝言なんだが………」

 

「え……………わ、私ですか?一体どのような事を伝えられたのでしょうか?」

ジト目でシャロンを睨んだ後ある事を思い出したアリサの質問に苦笑しながら答えたリィンの話を聞いたエマは不思議そうな表情でリィンを見つめた。

 

 

「『あの”蒼の深淵”とやらの魔女はお前の身内のようだから、身内として俺に付き纏わないように何とかしろ。あんな女に目をつけられても迷惑なだけだ』、との事だ。」

 

「ア、アハハ………」

 

「アタシ達であの女を何とかできるんだったら、今頃こんな状況になっていないわよ。」

 

「というかあんなにもたくさんの女の人達を侍らせておきながらあの蒼の歌姫(ディーバ)であるクロチルダさんにあそこまで大胆な告白をされておきながら、断った上そんな事まで言うなんて罰当たり過ぎだろう………」

リィンのセリカからの伝言を聞いてアリサたちと共に冷や汗をかいたエマは苦笑し、セリーヌはジト目で呟き、マキアスは疲れた表情で呟いた。

 

「全くセリカったら………エオリアさんに飽き足らず、結社の”蛇の使徒”までハーレムの一人にしようとするとか、見境がなさすぎよ。」

 

「いや、リィンの話だとセリカさん自身は”蒼の深淵”の件についてはレーヴェみたいに迷惑しているって話だから、”蒼の深淵”はエオリアさんの時とは違うと思うよ。」

ジト目で呟いたエステルにヨシュアは疲れた表情で指摘し

 

「どうかしらね。確かレシェンテもそうだけど、エクリアさんも昔はセリカと敵対していたらしいけど、最終的にセリカの”使徒”になったんだから、その”蛇の使徒”もいつかセリカの”使徒”になるんじゃない?」

 

「ハ、ハハ………そうなったらセリカさん側の戦力が更に向上する事になるだろうね………」

ジト目である事を推測したエステルの推測を聞いたヨシュアは冷や汗をかいて苦笑しながら呟いた。

 

 

「えっと………エステルさんはセリカさん達とはどういった関係なんでしょうか?」

 

「随分と連中の事を知っているようだけど………もしかして例の”リベールの異変”を解決した仲間なのかしら?」

 

「ううん、セリカ達と出会ったのは”影の国”って所よ。」

 

「”影の国”って確かオリヴァルト皇子殿下やレン皇女殿下達が巻き込まれたっていう………」

 

「”リベールの異変”の半年後に異変に深い関わりがある人物たちのみが巻き込まれた古代遺物(アーティファクト)の事件ですわね。」

エマとセリーヌの疑問に答えたエステルの説明を聞いて心当たりを思い出したアリサは目を丸くし、シャロンは静かな表情で呟いた。

 

「まあ、正確に言えば巻き込まれたのは僕達と僕達と関わりのある人物だったけどね。ちなみにアイドスさんとフェミリンスもその”影の国”に巻き込まれて、エステルはその事件の最中にフェミリンスにフェミリンス自身が力を貸す”契約者”として認められてフェミリンスと”契約”したんだ。」

 

「へ………って事はあちらのフェミリンスさんという女性も異種族の方なんですか?」

ヨシュアの説明を聞いてあることに気づいたマキアスはアイドスを始めとしたリィンと契約している異種族達やヴァイス達と何らかの会話をしているフェミリンスに視線を向けた。

 

「うん、フェミリンスはアイドスさんと同じ世界―――”ディル=リフィーナ”の”女神”よ。」

そしてエステルの答えを聞いたアリサ達はそれぞれ石化したかのように固まり

 

「め、”女神”って、………リィンはあまり驚いていないようだけど、フェミリンスさんの事も知っていたの?」

 

「ああ。けど最初知った時は心の底から驚いたよ、――――メンフィルの”本国”がある大陸――――レスペレント地方では伝説の存在であるあの”姫神フェミリンス”が一人の人間の為だけに力を貸していたんだからな。」

 

「アイドスと婚約している君だけはエステルさんの事は言えないと思うぞ………」

 

「全くよね。おまけに七大罪の魔王の一柱に竜の姫君、覇王と聖女の娘に精霊王にまで寵愛されているなんて、アンタみたいな”規格外”の起動者(ライザー)は、間違いなく歴代初よ。」

表情を引き攣らせながらフェミリンスを見つめた後に問いかけたアリサの疑問に答えたリィンの答えを聞き、マキアスと共に呆れたセリーヌはジト目でリィンを見つめた。

 

 

 

「フフ、何だか………あっという間だったわね。」

 

「ああ……でも、またすぐに会えるさ。アリサも数日ほどクロスベルに残るんだったか。」

 

「ええ、帰りは一応、母様と一緒に戻ろうと思ってる。列車砲に巨大軍需要工場………問い質したいことも多いから。」

 

「お嬢様………」

 

「………そうか。」

アリサの決意を知ったシャロンは心配そうな表情でアリサを見つめ、リィンは静かな表情で見守っていた。

 

「ふふ、心配しないで。これでも開発部を背負う室長だから。―――お互い頑張りましょう。Ⅶ組(わたしたち)や特務部隊(あなたたち)にしかできないやり方で。それがあの”約束”を果たすことにも繋がるでしょうから。」

 

「アリサ………そうだな。」

 

「はい………!」

 

「ああ、踏ん張り所だろう!」

アリサの言葉にリィン達はそれぞれ頷き

 

「ハハ………――――今後、どこまで君達の力になれるかどうかわからないが………私は私で、できるかぎりの悪あがきをさせてもらうつもりだ。それからありがとう。演奏家オリビエ・レンハイムの我儘に付き合ってくれて。」

リィン達の様子を黙って見守っていたオリヴァルト皇子は感謝の言葉を述べた後ウインクをした。

 

 

「こちらこそ………本当に助かりました。」

 

「殿下が立ち上げてくださった”Ⅶ組”という枠組み――」

 

「私達ならではの形で続けさせて頂こうと思います。」

 

「そうか………今後も楽しみにさせてもらおう。」

 

(というか、”演奏家オリビエ・レンハイム”って………”三帝国交流会”に参加しておきながら、またスチャラカ演奏家をやっていたのね………やっぱりミュラーさんが見張れなくなった影響で、前より悪化しているじゃない。)

(ハハ………どんな状況に陥っても相変わらずなのは、オリビエさんらしいけどね。)

「………ハッ………」

リィン達とオリヴァルト皇子の会話を見守っていたエステルはジト目でオリヴァルト皇子を見つめ、ヨシュアは苦笑し、リィン達と談笑しているヨシュアの様子を厳しい表情で睨んでいたアッシュは鼻を鳴らしてその場から離れた。

 

 

「えへへ、まさか演習地でツーヤちゃんに続いてミントちゃん達にも会えるなんて、これもエイドスさんのお導きかな?」

 

「ふふっ、エイドス様の事ですから今のティータさんの言葉を聞けば全力で否定なさるでしょうね。」

 

「うふふ、空の女神(エイドス)の性格を知っているレン達からすればその様子が目に思い浮かぶわね♪」

 

「ア、アハハ……―――サザ―ラントの件はミント達も後で聞いたよ。ミントもママ達と一緒にサラさん達のお手伝いをしたかったのだけど、ティータちゃん達も知っているようにミント達のエレボニアへの入国は認められなかったんだよね………そのせいで、ティータちゃんやツーヤちゃん達と一緒にパパの故郷のお墓参りもできなかったし………」

嬉しそうな表情をしているティータの言葉に微笑みながら答えたセレーネの推測と小悪魔な笑みを浮かべたレンの推測に苦笑したミントは残念そうな表情を浮かべた。

 

「ミントさん………そんなに気を落とさないでください。いつか必ず、わたくし達が全員揃ってハーメル村のお墓参りができる機会がありますわ。」

 

「………そうだね!それにしてもみんなの学生服や教官服、初めて見たけどとっても似合っているよ♪」

 

「えへへ………そうかな?」

 

「うふふ、デザインは悪くないけど欠点は毎日同じ服装で代わり映えしない事なんだけどね。――――それにしても前々から気になっていたけど、竜族って、みんな大人になったら美人かつスタイルが完璧になるのかしら?ミント達もそうだけど、ヴァイスお兄さんの側妃の一人も竜族だけど、その人もミント達のように綺麗なお姉さんでスタイル抜群だし。」

セレーネの言葉に力強く頷いたミントはティータ達の服装について誉め、ミントの誉め言葉にティータと共に同意したレンだったが、すぐにからかいの表情になってミントとセレーネを見つめた。

 

「あっ!私もそれについては前々から気になっていたよ。ミントちゃんやツーヤちゃん、それにセレーネちゃんの3人とも凄い美人さんで、胸も凄く大きいし………」

 

「え、えっと………」

 

「ううっ、隙あらば場を引っ掻き回そうとするレンちゃんの性格も相変わらずだよね………」

レンの言葉に頷いた後興味ありげな様子で見てくるティータの視線にセレーネは困った表情で答えを濁し、ミントは疲れた表情で溜息を吐いた。

 

 

「ユウナ、改めてになるが今回は本当にありがとう。再びクロスベルに現れた結社が撤退したのも君達の活躍のお陰だよ。」

 

「そ、そそそそ、そんなっ!あたし達のした事なんて、大した事じゃなく、実際に結社の執行者達と戦ったのはリィン教官達―――旧Ⅶ組や特務部隊の人達ですよ!」

ロイドに感謝の言葉を述べられたユウナは緊張した様子で答え

 

「フフ、でもオルキスタワーでは”道化師”と戦った上、勝ったのでしょう?第Ⅱ分校に入学して僅か2ヵ月弱でそこまでの実力をつけていたなんて、本当に驚いたわ。」

 

「まあ、あの”化物”連中の相手を毎日放課後に強制的にさせられれば、嫌でも実力はつくと思うぜ?お嬢も知っていると思うがその”化物”の中にはあの”鋼の聖女”どころか、リィンと契約している異種族のお姉さん達も含まれているんだぜ?」

 

「そ、それは………」

 

「………………なるほど。ユウナさんはかつて”影の国”に巻き込まれたわたしのような状況―――いえ、それ以上の状況なのですか。心の奥底から同情しますよ………」

 

「ほえ~?ユウナ、ブンコウに行ってすっごく強くなっているのに、どうして喜ばないの~?」

微笑みながらユウナを称賛するエリィの感想に苦笑しながら答えたランディの話にエリィ達と共に冷や汗をかいたロイドは表情を引き攣らせて答えを濁し、ティオはジト目で呟いた後憐みの目でユウナを見つめ、ロイド達の様子にキーアは無邪気な様子で首を傾げた。

 

「ア、アハハ……確かに分校長を始めとした教官達の一部は無茶苦茶な人達で、授業も大変ですけど、第Ⅱ分校に留学した事は結果的によかったと思っています!」

 

「………そうか。第Ⅱ分校で色々と経験して見違えたユウナが、今度こそ俺達の後輩としてクロスベルに帰って来る日を楽しみに待っている。」

第Ⅱ分校に入学したユウナが成長している様子に静かな笑みを浮かべたロイドは笑顔を浮かべてユウナを見つめ

 

「あ…………――――はいっ!」

ロイドの応援の言葉に一瞬呆けたユウナは嬉しそうな表情を浮かべて力強く頷いた。

 

 

「ユウナ、とても嬉しそうね………」

 

「まあ、ずっと目標にしていた人達に今までの成果を認めてもらったから、嬉しいんだろうな。」

 

「………なるほど。先月の演習でのリィン教官達への助太刀を教官達から称賛してもらったクルトさんが言うと、真実味がありますね。」

ユウナの様子を微笑ましそうに見守っているゲルドの感想に続くように呟いたクルトの推測を聞いたアルティナは納得した様子で呟いた。

 

「ぐっ………別に僕は彼女のように”嬉しい”って訳じゃ………というか、そもそもあの時は君やユウナも僕と同じ理由で助太刀に向かったのだから、君だけは僕の事は言えないんじゃないのか?」

 

「………さて、何のことやら。」

 

「クスクス………」

自分の指摘に唸り声を上げた後反論してきたクルトの指摘に対してアルティナはクルトから視線を逸らして答えを誤魔化し、二人の様子をゲルドは微笑ましそうに見守っていた。

 

 

「お姉様………くれぐれも、お姉様もそうですがお兄様も無茶はしないようにお気をつけください。」

 

「フウ………その”無茶”をやらかした貴女にだけは言われる筋合いはないと思うのだけど………」

 

「うっ。そ、それは………」

エリゼを心配したリーゼアリアだったが、呆れた表情で溜息を吐いた後ジト目で見つめて呟いたエリゼの言葉に反論ができず、気まずそうな表情で答えを濁し

 

「もう、エリゼったらまだ根に持っているなんて、いつもの貴女らしくないわよ?」

 

「フフ、先輩はエリゼさんにとって大切な”妹”なのですから、”根に持つ”というよりも”過保護”なので、そのような態度をとっておられるのではないでしょうか♪」

 

「………アリアをそそのかした張本人である貴女がそれを言う?全く………エリゼさんの仰る通りあんな無茶はもう2度としないでよ?貴女がオルキスタワーからいなくなった時は本当に心配したんだから………」

二人の様子を呆れた様子で見守っているアルフィンに笑顔を浮かべて指摘するミュゼにジト目で指摘したリーゼロッテ皇女は真剣な表情でリーゼアリアを見つめた。

 

「ええ………心配をかけてしまって本当にごめんなさい。もう、あんな無茶は2度としないつもりよ。」

 

「フフ、それはそれとして。――――エリゼさんが先輩を許したという事は、教官の新たな伴侶の最有力候補はエリゼさん公認であるアリア先輩という事なのでしょうか♪」

 

「ミュ、ミュゼ!?」

 

「フフ、でもそれについてはわたくしも気になっていたわ。―――ちなみにリーゼアリアの次の候補はリーゼロッテかしら♪」

 

「お義姉様まで………アリアはともかく、わたくしはリィンさんとそれ程親しくありませんわよ。」

ミュゼのからかいに対してリーゼアリアが驚いている中ミュゼに悪乗りするかのようにアルフィンにからかわれたリーゼロッテ皇女は困った表情で答えた。

 

「………そう仰っている割には今年の夏至祭のパーティで兄様が殿下をダンスに誘ってくるかどうかを気にしているようだと、以前のリーアの手紙に書いてありましたが。」

 

「あ、それについてはわたくしがリーゼロッテから貰っている手紙にも書いてあったわ。」

 

「あらあら………ふふっ、という事は、将来”私達”が全員揃って、リィン教官の伴侶になる日が来るかもしれませんわね♪」

静かな表情で呟いたエリゼに続くようにある事を思い出してその内容を口にしたアルフィンの話を聞いたミュゼは意味ありげな笑みを浮かべてリーゼロッテ皇女とリーゼアリアを見つめ、ミュゼの発言にエリゼ達はそれぞれ冷や汗をかいた。

 

「もう、この娘はまたそんな事を言って………」

 

「というかさりげなく自分まで含めようとするなんて、貴女のそういう所は第Ⅱ分校に行っても相変わらずのようね………」

ミュゼの発言にリーゼアリアとリーゼロッテ皇女はそれぞれ呆れた表情で溜息を吐き

 

(フフ、後でゲルドさんに以前ゲルドさんが視た未来にリーゼロッテ達もわたくし達と一緒にいたのかどうかを、訊ねてみるべきかしら?)

 

(………その必要はないわ。兄様のこどだから、どうせ私や貴女の予想通り――――いえ、”それ以上の結果”になる事はゲルドさんの予知能力に頼らなくても目に見えているわ………)

 

苦笑しながら小声で訊ねてきたアルフィンに対してエリゼは疲れた表情で呟いた後ジト目でリィンを見つめた。

 

 

「………………そう。もしかしてセリカをクロスベル――――いえ、ゼムリア大陸に再び呼び寄せた”真の理由”はセリカの―――――アストライアお姉様の”焔”で”終焉”を浄化させる為かしら?」

ヴァイス達から並行世界のユウナ達からもたらされた情報を伝えられたアイドスは重々しい様子を纏って呟いた後ある事をヴァイス達に確認した。

 

「ああ。念の為に確認するが、かつて”影の国”でシルフィエッタ皇妃達の”試練”の際に見せた女神アストライアの浄化の焔で”巨イナル黄昏”のトリガーとなるエレボニア帝国に眠る”呪い”を浄化させることは可能か?」

 

「………可能よ。”聖なる裁きの炎”は”全ての呪いや罪を浄化する炎よ。”その炎の前では例え”邪神”すらも浄化されるわ。しかもその”呪い”は話に聞く所”至宝”―――空の女神(エイドス)が人に与えた”神器”が原因で生まれたそうだから、お姉様の身体に宿っているセリカならば、確実に浄化できると思うわ。」

 

「そうか………」

 

「ちなみにアイドス様ではその”聖なる裁きの炎”は使用できないのでしょうか?サティア様の身体に宿っているという意味ではアイドス様も同じ条件になりますが………」

アイドスの答えを知ったヴァイスが静かな表情で頷いた後ある事が気になっていたリセルはアイドスに訊ねた。

 

「貴女達も知っているでしょうけどこの身体はキーア―――”零の至宝”によって作られた”アストライアお姉様そっくりの肉体”であって、アストライアお姉様自身の肉体ではないわ。だから当然アストライアお姉様のみしか扱えない”聖なる裁きの炎”を私が扱う事は不可能よ。」

 

「しかし”慈悲の大女神”である貴女のみが扱える”神術”ならば、”聖なる裁きの炎”とやらと同等の効果があると思われるのですが。」

 

「そうよね~。”慈悲の大女神”なんだから浄化の神術の一つや二つ、扱えて当然だと思うわよ。呪われた存在や邪悪なる存在を滅する事も考えようによっては”慈悲”でしょう?」

 

「さ、さすがにそれは偏見なのでは………」

アイドスの説明を聞いて新たなる疑問が出たリザイラとベルフェゴールの意見を聞いたメサイアは苦笑しながら指摘した。

 

「――――一応、私が扱える神術で”聖なる裁きの炎”に匹敵する浄化の神術はあるわ。」

 

「………そういう事はもっと早くに答えなさい………」

 

「フフッ、ですがエレボニアの”呪い”を浄化する手段が増えた事は朗報かと。」

 

「ええ………”切り札”は多い事に越したことはありません。――――ましてや世界の命運がかかっているのですから。」

アイドスの答えにヴァイス達と共に冷や汗をかいて表情を引き攣らせたフェミリンスは我に返ると疲れた表情で指摘し、サフィナはセシリアと共に苦笑した後表情を引き締めて空を見上げた。

 

 

その後調整が終わった武装を受け取った第Ⅱ分校の面々がそれぞれ列車に乗り込む中、ユウナはエリィ達と共に見送りに来ていたケンとナナに別れを告げようとしていた。

 

 

「―――ケン、ナナ!お父さんとお母さんによろしく!手紙もいっぱい書くから二人とも良い子で、元気でね………!」

 

「うんっ!ねーちゃんもゲンキでなー!」

 

「クルトちゃんとアルちゃんとゲルドちゃんもまたねー!」

 

「ああ……また会おう!」

 

「どうかお元気で………!」

 

「またいつか必ず会おうね………!」

ケンとナナの別れの言葉にクルト達はそれぞれ力強く頷いて答えた。

 

 

「リィン。エレボニアとメンフィル・クロスベル連合の関係の問題でお互いに大変だろうけど、内戦やクロスベル動乱の時のように俺達にもできる事は必ずあるはずだ。碧の大樹の時のようにいつかそれぞれが協力する時が来ると思っている。」

 

「その時が来たら今度はⅦ組や特務部隊の人達と一緒に頑張りましょうね!」

 

「ああ………っ!」

ロイドとエステルの言葉にリィンは力強く頷き、そしてロイド、エステル、リィンの三人は未来への約束の印を示すかのようにそれぞれの拳を打ち合わせた。

 

 

~クロスベル某所~

 

第Ⅱ分校の面々を乗せたデアフリンガー号がリーヴスへと帰還して行く様子を万が一リィン達に見つからないようにサフィー達は見守っていた。

 

「行ったか………先月の”特別演習”同様、今回の”特別演習”も僕達の世界とは異なる”結果”になったな………」

 

「はい。”劫焔のマクバーンと蒼の騎神の撃破”に加えて本来”劫焔”によって破棄される予定だった”神機の回収”、ですね。」

 

「フフ、それとクロスベル双皇帝による”結社”と”地精”に対する”宣戦布告”もですわね♪」

 

「しかも帝都を含めたクロスベルの領土に潜入していたエレボニアの諜報関係者達を全員一斉検挙した上、その人達の救出に来たクレア教官達を”返り討ち”にした挙句クレア教官達にオズボーン宰相に対する”宣戦布告”の伝言役として見逃すとか、無茶苦茶よ………ううっ、皇帝が二人ともオズボーン宰相のように野心がある上好戦的な性格だから、この世界のクロスベルは別の意味で心配になってくるわね………」

ザムザ達と共にリーヴスへと帰還して行くデアフリンガー号を見守っていたサフィーは疲れた表情で溜息を吐いた。

 

「そうでしょうか………?確かに二人を含めた”六銃士”達のクロスベルでの活躍を聞く限り彼らもオズボーン宰相のような強烈な”野心”がある事は見受けられましたが、少なくてもあのお二人から感じられる印象はオズボーン宰相とは全く異なるように思いますが。」

 

「それについては僕も同感だ。昨日の”道化師”達と対峙した陛下達の言動からして、僕は陛下達はクロスベルの民達を思って”怒り”を見せている事やクロスベルの”守護者”のように見えたな。」

 

「フフ、少なくてもサフィーさんにとっては私達の世界のクロスベルの統治者である”総督閣下”よりはよほど素晴らしい為政者なのだと、私も思いましたわよ?

 

「………………それはわかっているわよ。あの人達はあたしやロイド先輩達のようにクロスベルの事を本当に大切にしている人達で、悪い人達じゃないって事は。でも、やる事為すこと全てが非常識で滅茶苦茶過ぎよ………」

サフィーの言葉に首を傾げて呟いたルディの意見にザムザは静かな表情で頷き、ミューズの指摘に複雑そうな表情で同意したサフィーは帝都(クロスベル)へと視線を向けた後疲れた表情で肩を落とした。

 

 

「まあ、それを言えばそもそもこの世界のリィン教官の事情を含めたあらゆる事柄が非常識かつ滅茶苦茶な状況ですが。」

 

「――――」

サフィーの意見に続くようにルディはジト目で呟き、ルディの意見に同意するかのように突如現れたクラウ=ソラスは機械音を出し、それを見たザムザ達は冷や汗をかいた。

 

「コホン。それはともかく………この後はミシェルさんの配慮であの”劫焔”を滅した異世界の魔剣士―――――セリカ卿達との顔合わせ兼模擬戦なのだから、今のうちにウォーミングアップをすませておこう。」

 

「ううっ………結社最高の”執行者”や”騎神”を生身であんなアッサリ倒すような人達と今から模擬戦だなんて、気が滅入るわ………」

 

「”六銃士”やクロスベル軍関係者の上層部達との模擬戦と同等――――いえ、それ以上に蹂躙される事は目に見えていますものね。」

 

「フフ、ですがこれもこちらの世界の”黒キ星杯”での激闘、そして私達の世界に戻った時に備えた修行の一環なのですから、泣き言を言う訳にはいかないかと。」

ザムザの言葉にサフィーとルディが疲れた表情で答えている中ミューズは苦笑した後静かな笑みを浮かべて答えた。

 

「………そうね。それじゃあそろそろ、行きましょう!」

 

「ああ!」

 

「はい!」

そしてサフィー達はその場から去っていった。

 

 

こうして………様々なトラブルに巻き込まれつつも無事2回目の”特別演習”を終えた第Ⅱ分校は様々な立場の多くの者達に見送られ、リーヴスへと帰還した。

 

 

なお、クロスベルと遊撃士協会の共同作戦によって虜囚の身となった情報局や鉄道憲兵隊はレクター少佐の交渉によって、解放されてエレボニアに送還されたが、その代償にエレボニアは多額の身代金をクロスベルに支払う事になった上、更にはクロスベルが用意したクロスベルに潜伏していたエレボニアの諜報関係者がクロスベルについての情報を何らかの方法で、他者に教えれば即死する呪いがかかる魔術契約書にサインする事になってしまい、その結果クロスベルに潜伏していたエレボニアの諜報関係者達の労力は無意味と化した。

 

また、かつての”西ゼムリア通商会議”のようにクロスベルに徹底的に嵌められた事を思い知らされた上、”宣戦布告”までされたオズボーン宰相は内心クロスベルに対する怒りや屈辱を抱えながらも顔に出すことはなく、不敵な笑みを浮かべて笑いながら帝都クロスベル方面を見つめていたという………

 

 

 

 

 

これにて2章終了です!閃Ⅳ、初っ端から僅かな期間ですがとんでもない豪華メンバーを操作できることにまさにテンションアガットでしたwwそして気の早すぎる話ですがこの話のⅣ篇を書くときは序盤から書く必要がありそうだなと思いました(汗)なお現時点でⅣ篇に参戦する予定(つまり、焔と菫の軌跡に殴り込んでくる)の灰の軌跡側のキャラはリィン、セレーネ、アッシュを除いた新Ⅶ組、特務部隊のメンツ、エリゼ、アルフィン、レン、リィンの使い魔達、戦女神陣営、ミント、フェミリンス、ディオン三姉妹、ケビン&リースの予定です。なぜ一部ほとんど接点がないこのメンツにしたのかは、閃Ⅳ篇を始めた時にわかると思います。(まあ、少なくても閃Ⅲ篇を完結してからですからいつになるか不明ですが(笑))閃Ⅳ篇は原作ですら豪華メンバーが揃うのですから、この物語で書いたらそれこそドリームパーティーが実現するような気がしますw例えばダブルレン&ユウナ(レンの妹の方)とか、ダブルリィンとか、軌跡、戦女神、アビスの主人公勢揃いとか………


 
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