No.96699

真・恋姫無双紅竜王伝⑪~虎牢関の戦い・袁紹、降伏~

第11弾です。なんかもう、メインヒロインと化している瞳陛下登場です。
・・・虎牢関、短かったなぁ。でも舞人はしばらく漢に仕えます。

2009-09-22 03:26:14 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:8063   閲覧ユーザー数:6605

諸侯を各本陣に帰した袁紹は、苛立たしげに陣幕内をうろついた。

「どうすれば・・・どうすればいいんですの・・・!?」

前門の虎牢関、後門の本城攻略軍。虎牢関を攻撃すれば南皮城は陥落し、彼女は帰る城を失ってしまう。虎牢関攻撃を中止して南皮城救援に戻れば、猛将・織田舞人は追撃を仕掛けてくるだろう。彼の勢いは先の冀州での戦でその恐ろしさを体験している。

彼女が考えている間に、息も絶え絶えとなった伝令兵が転がり込んできた。

「はぁ、はぁ・・・申し上げます・・・南皮城、陥落・・・いたしました・・・」

南皮城を攻略した霞・華雄率いる織田軍は、捕虜とした将兵を城の一角に幽閉して玉座の間を占拠後、各地に間者を飛ばして情報収集をしていた。

「他の城はどういう反応だ?」

「はっ。袁家譜代の将は城に籠って抵抗を示しているようですが、外様の豪族たちは我らに恭順の意を示しております」

「ほぉ~。意外と忠誠心はあるんやなぁ」

彼女たちは別に袁家譜代の将が抵抗を示そうが、外様の将が降ろうがあまり関係はなかった。

「ま、ウチらの目的は『南皮城を攻略して袁紹の背後を奪う』やからな」

「おい、張遼。舞人からの使いが返ってきたぞ」

帰ってきた使者は膝をつくと、舞人からの指示を伝えた。

一方その頃舞人は洛陽から来るとある一行を出迎えるため、虎牢関の洛陽側の城門の前に立っていた。

「お・・・来やがったな」

10数騎の騎馬隊に守られた馬車が舞人の視界に入った。彼は下馬すると、臣下の礼を取った。その馬車に乗っていたのは―――

「織田大将軍、任務御苦労。朕は満足であるぞ」

後漢王朝皇帝劉協。後に献帝と呼ばれる人物であった。

「舞人さん!」

瞳は用意された部屋に入って舞人と2人きりになると、子犬のようにパタパタと走って舞人の胸に飛び込んだ。

「瞳、元気だったか?」

「はい。月さんや詠さんに話し相手になっていただいたりして・・・舞人さん、お怪我は大丈夫ですか?」

瞳は憂いを込めた目で舞人の包帯まみれになった左手を見やる。

「これか?気にすんなよ。武人として当然の傷だよ」

彼女の頭をポンポンと叩いて、彼女の心配を無用のものだと安心させた。

―――しかし実際のところは左手の握力は回復せず、利き腕の右も万全とはいえない状態だった。しかしこの少女にそんな事を心配させたくはなかった。

「それで、後は打ち合わせ通りにすればいいんですか?」

「ああ。もう袁紹は追い込まれているだろうから飛びついてくるはずだ」

野戦を得意とする舞人が野戦を挑まずに籠城策を選んだのは、まさにこの為だった。野戦で連合軍を打ち破るのではなく、策謀で自尊心高い袁紹を黙らせる―――

これが、舞人の策の最終目的であった。

袁紹は訳がわからなかった。自分を含めて連合軍の将兵は全員膝をついて臣下の礼を取っている。それは彼女の幼馴染である曹操然り、従妹の袁術と守役の張勲然り、彼女にとってとるに足りない貧乏軍を率いる劉備や、従妹に従っている孫策、涼州連合軍の盟主の娘・馬超もまた然り・・・それと公孫賛然り。彼女らに従う将校たちも末端に至る兵まで膝をついて礼を取っていた。

(どういう・・・ことですの!?)

彼女達の目の前に立つのは先日自らに敗北の烙印を押した敵の総帥織田舞人、彼に守られているように立っているのは―――皇帝・劉協であった。

「袁本初よ」

「は、ははっ!」

思わず冷や汗が流れる。劉協は彼女を見下ろして感情の読めぬ声で続けた。

「これはいったいどういう事かな?」

劉協は右手を上げて、袁紹の背後で膝をつく各陣営の兵達を指さした。

「大規模な軍事演習にしては朕に報告はなかったし・・・そもそも司隷校尉にすぎぬ汝にこの様な大軍を指揮する権限を朕は汝に与えた覚えはないのだが?これは・・・朕に対する謀反と考えてもよいのかな?」

「い、いえ!そのような!」

「ならばこの軍は何だ!」

必死に弁明しようとした袁紹を、劉協が一喝する。

「世上の声を聞けば、朕に忠誠を誓って働いている董相国と織田大将軍が我が子とも言うべき洛陽の民を虐げ、朕を傀儡にしているという事実無根の噂を撒き散らして諸侯の軍勢を動員したそうだな!」

劉協の眼は怒りに燃えていた。

「本初よ!世上を無用に混乱させた事、諸侯を無断で招集して軍を朕が住む洛陽に進めた事、この2つの事柄を踏まえても謀反ではないと申すか!」

「そ、そのとおりですわ!なんでこの袁家当主たる私が陛下に背きましょう!」

冷や汗まみれになった袁紹は必死で弁明する。その言葉を待っていたかのように劉協と舞人は内心、ニヤリとした。

「そうか。ならばここで停戦同盟を結べ」

「へっ?」

思わずキョトンとする袁紹。劉協はさらに続けた。

「条件はまず織田軍の南皮城を占拠している軍を撤退させる。同盟軍に参加した諸侯はお咎めなし。袁紹の司隷校尉の任を解き、冀州牧の任に着任させる。織田大将軍と董相国に忠誠を誓う事。今後袁紹軍は洛陽の事については不干渉を貫く事・・・以上の5つだ」

これらの条件を出された袁紹は、現在の状況から言って従うほかなかった。

「・・・承知いたしましたわ。大将軍閣下と相国殿に今後、忠誠を誓いますわ」

反織田連合軍総帥・袁紹は、織田軍総帥・織田舞人に膝を屈して臣下の礼をとる。

事実上の、反織田連合軍の全面降伏だった。

「ふーっ、上手くいきましたね」

瞳は虎牢関の自室に戻ると月と舞人を招いて茶を入れ、一息ついた。

「これで、少しは平和になるでしょうか・・・」

「甘いな」

月の憂いを込めた呟きを舞人が遮った。

「本初は生まれながらにして三公を輩出した袁家当主という立場にいるせいか、自尊心が高い。これで終わったとは思わない方がいいだろ。さらにあいつの周囲には悪知恵が働く奴も何人かいるからな・・・」

舞人は空に上った月を見上げて溜息をついた。

(あのアホが大人しくしてくれればいいんだがな・・・)

しかし彼の思いとは裏腹に、再び歴史は動き始める・・・


 
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