ホクラニ天文台、施設の中に試練の場は存在している。
「扉に、あのキャプテンゲートの模様が描かれてるんやね」
「ホントだロト~。
ヨウカ、さっそくあけるロト?」
「もちろんや!」
そういえばさっきはなんでくしゃみがでたんだろうと思いながらも、ヨウカはキャプテンであるマーマネの試練を受けるためにその扉を開けた。
「こーんにっちわー!
早速試練を受けにきたよぉー!」
「わわわぁっ!!」
「うわっ!」
大きな声で元気よくそう言ったヨウカだったが、その声にビックリして少し太った男の子が飛び跳ねた。
そんな彼のリアクションにヨウカもビックリした声をあげる。
「びっくりした・・・」
「こっちがびっくりしたよぉ・・・!」
起きあがった男の子、マーマネはヨウカをみてそうつぶやく。
マーマネが人見知りだと聞かされていたが、ここまでリアクションが大きいのか。
そんなマーマネにヨウカは苦笑しつつも、改めて話をした。
「えと、準備できたから試練を受けにきたよ!」
「いいよ・・・。
早速・・・試練、はじめよう」
「え、ここで?」
「そう、ここで」
マーマネは試練開始を告げると、自分の後ろにある機械に触れた。
これはなんなんだろう、とヨウカが首を傾げていると、マーマネは機械について説明を始めた。
「今からこの機械を使って、ぬしポケモンをここに呼ぶから、そのぬしポケモンと戦ってもらう。
それが、マーマネの試練なのです」
「これ、もしかしてマーマネくんが作ったの?」
「うん」
「ほぇ~すっごいねぇ~」
ヨウカが感心しながら機械を見上げていると、マーマネは赤くて大きなボタンを押した。
それが、マシンの機動スイッチのようだ。
「ぬしポケモンこいこいマシン、マーク2!
起動せよっ!」
マーマネがスイッチを押した瞬間、部屋は真っ暗闇に包まれた。
「わわわ・・・!?」
「ま、真っ暗だよぉ!?」
「ホントだロトー!
きっとそのマシンがキドウしたから、そのエイキョウでテイデンしたカクリツがたかいロトよっ!」
「えぇ~・・・じゃあこんな暗いところで勝負するの?
あたしちゃんと、試練達成できるかなぁ・・・?」
暗いところが特別苦手というわけではないが、暗くてなにも見えないので戦いにくい。
こんな中でぬしポケモンがきたら、ちゃんと戦えるのかと思った。
そもそも、ぬしポケモンはちゃんとここにくるかとか、この部屋から出られるのだろうかと不安になる。
すると僅かに明かりを灯している存在に気付き、そちらを見る。
「まりゅっ」
「この子・・・マーマネくんところの・・・」
「トゲデマルだよ、トゲデマルがなんとか照らしてくれてるよ!」
「う、うーん・・・照らしてもらっとるけど、暗いままは困るよね・・・。
なんとかして、明かりをつけなくちゃ・・・スイッチどこかなぁ?」
トゲデマルの明かりを頼りにヨウカが周囲を確認していると、扉をたたく音がして同時に声がした。
「2人とも、大丈夫かいっ!」
「この声・・・マーさん!?」
マーマネが確認をとると扉の奥からマーさんだよ、という返事が聞こえてきた。
どうやら扉の奥にはマーレインがいるようだ。
扉越しにマーレインの存在を確認した瞬間、電子的な声で響いてきた。
「レッツ・クイズタァァイム!」
「なにっ!?」
「このクイズは、扉のセキュリティが作動したから流れているんだよ!
このクイズを解けば扉のロックは解除される!」
「そんなセキュリティってだいじょーぶなん!?」
ヨウカがそうツッコミを入れると、クイズがその場に流れた。
「でんきタイプの技を受けると、自分の能力が上がる特性は?」
「え!?」
その問題の答えに戸惑い慌てるヨウカ。
勉強が少し苦手なヨウカは、とりあえず記憶を必死に探り、その中の一つを直感で思い切って言ってみる。
「えっとえっとえっと、ひらいしん!?」
「・・・ピンポーン!」
「ほぇ・・・あってたん!?」
正解したことに、回答したヨウカが一番驚いていた。
それにより扉のロックが解除されたが、それと同時に数匹のポケモンが部屋に流れ込むようにはいってきた。
ハサミのようなトングのような突起を持ったポケモンと、緑色の電車のようなフォルムのポケモンだ。
「ジジジッ!」
「ジムシィィィ」
「わぁっ!?」
入ってきたポケモン達にヨウカは驚き焦り、ロトムにこのポケモン達の確認をとる。
「ねぇねぇ、この子らはなにぃぃぃ!?」
「アゴジムシと、そのシンカケイのデンヂムシだロト!」
「それもまた、マーマネのしれんのひとぉぉつ!
アゴジムシとデンヂムシはぬしポケモンの仲間だから、戦ってもらうよぉ!」
「そういうことならわかった!
お願いサニちゃん!」
そう言ってヨウカはサニちゃんを出すと、デンヂムシはスパークでつっこんできた。
それを回避したサニちゃんはパワージェムでデンヂムシを攻撃、たいあたりしてきたアゴジムシも全身で受け止めてからとげキャノンを放つ。
そしてデンヂムシが放ってきたほうでんも、ミラーコートで反射することによって相手のポケモン達に一斉にダメージを与える。
「サニちゃん、とげキャノンできめよっ!」
そのかけ声と同時にサニちゃんはとげキャノンを相手に放ち、そこにいたアゴジムシとデンヂムシをすべて倒した。
「やったぁ!」
その喜びもつかの間、再び扉が閉まってしまった。
「ってあれぇ!?
また扉しまっちゃったし暗いままだよぉ!」
「また何かが電力を使って動き出したみたいだよ!」
「でんりょく?」
ここでそんな電力を消費するもの、そして停電になった原因。
ヨウカはトゲデマルの明かりを頼りに、マーマネが作り動かした機械に目を向ける。
よく見てみると、機動をしているのを示すかのようにランプが点灯しており、
「もしかして、あなたのそのマシンって・・・まだ動いてるんじゃない?!
停電の間もそれだけ動いてて・・・だから停電の状態が続いているとか!」
「そうみたい!
あ、きてます、確実に近づいてきています!」
そうヨウカとマーマネが言葉を交わしている間。
何かが鋭い羽音と放電のバチバチ音を鳴らしながら、スゴいスピードでホクラニ岳のあの曲がりくねった坂の上空をまっすぐに飛ぶ存在があった。
その存在が目指す場所はただ一つ、ホクラニ天文台の試練の部屋だった。
その後、また扉を開けるためのクイズが流れて、ヨウカはそれに不正解しそのとばっちりとして放電をマーマネが受けるというアクシデントが発生しつつも、次の問題には正解した。
だがそのとき、今度はデンヂムシが5匹現れてヨウカに戦いを挑んできた。
このピンチは次に出したタツくんの活躍によって脱したものの、扉は閉まってしまう。
「いつでられるのだろー・・・」
「・・・ごめんなさい」
さっきまたクイズが流れてきて、それに不正解だったためにでんきショックを受けたマーマネがそう呟くとヨウカは気まずい顔をして小声で謝る。
次にでたクイズは、進化の流れの問題だったのでヨウカはそれに答えることに成功、扉が開かれた。
「わっ!?」
だがその瞬間、扉の向こうから激しい放電が放たれる。
その放電の中から、クワガノンが姿を現した。
他のポケモンと比べて何かが違う、そう思ったヨウカがマーマネに確認をとりはじめる。
「もしかしてこれが、ぬしポケモン!?」
「いかにも、ぬしポケモンのクワガノンだよ!」
ぬしポケモン、クワガノンは鋏を大きく広げて威嚇してきた。
ぬしポケモンらしいその姿に一度は驚くヨウカだったが、試練を達成するためにボールを構えてポケモンを出した。
「お願い、ニャーくん!」
ヨウカは迷わずニャーくんを出した。
というのも、このクワガノンとまともに戦えそうなのはニャーくんしかいないからだ。
ニャーくんのことを対戦相手と認識したクワガノンはまた鋏を大きく広げて、ニャーくんに向かって10まんボルトを放ってきた。
ニャーくんはその10まんボルトを回避するとほのおのキバでかみつきにかかるが、それをクワガノンは全身で受け止めてからスパークを放ち、ニャーくんにダメージを与えてきた。
「なんて電気の力だよっ・・・!?」
「ヨウカ、どうするロト!?」
「とはいえ・・・!」
シャドークローで攻撃した直後にクワガノンがシザークロスで反撃したのを見て、ますますニャーくんで戦い続けなければならないと感じるヨウカ。
でんき技を受けられそうなのはカリちゃんくらいなものだが、むし技で攻撃されたらまずい。
タツくんも受けられるかもしれないが、決定打になる技を持っていない。
だから意地でもニャーくんに戦ってもらうしかないのだ。
「ニャーくん!」
「ヒィニャッ!」
なによりも、ニャーくんがやる気だ。
ヨウカの次の技の指示にあわせて、ニャーくんは全身に熱を帯び体毛を燃やしてクワガノンにつっこみ攻撃する。
クワガノンは反撃でシザークロスを繰り出してきたが、ニャーくんはそれを回避した。
先程よりもそのスピードは上がっており、次に繰り出したシャドークローからのほのおのキバも炸裂した。
その連続攻撃を受けたクワガノンは、スパークよりももっと激しい電撃を見に包み、ニャーくんに突っ込んできた。
「もう一度、ニトロチャージ!」
クワガノンに迎え撃つため、再び技を繰り出した。
電撃の火花と炎の飛び火が周囲に舞い上がり、弾け飛び互いに吹っ飛ばされる。
すぐひのこで反撃しようとしたニャーくんだったが、まだ耐えていたクワガノンに10まんボルトを受けて大ダメージを受けてしまう。
「ヒィィニャッ!」
そのダメージに耐えたとき、ニャーくんの身体を激しい熱気が包みこんだ。
そんなニャーくんの姿をみてあることに気付いたヨウカは、にやりと口角をあげるとニャーくんの名前を呼んだ後で技名を叫ぶ。
「決めて、かえんほうしゃ!」
「ヒィァァァアアッ!!」
ヨウカの声と同時にほのおの技を放つと、その炎に迎え撃とうとクワガノンは10まんボルトを放つ。
かえんほうしゃと10まんボルトは激しく衝突したが、最後は炎が押し切り10まんボルトの雷撃を巻き込んで、炎がクワガノンを包み込んだ。
「・・・あぁっ・・・!」
マーマネがそう声を漏らした瞬間。
炎はきえ、地面には戦闘不能になり地に落ちたクワガノンがそこにいた。
自分が育てたぬしポケモンを打ち破ったことに、マーマネも驚いた。
「・・・ぬしポケモンの、クワガノンが倒れた・・・!
試練、おわった・・・!」
「やったぁ!」
ヨウカがガッツポーズを決めると同時に、マシンが機能を失った。
すると部屋に明かりが戻り、マーレインも部屋にはいってきた。
「マーくん、ヨウカちゃん、大丈夫かい!」
「マーさん!」
「大丈夫ですよー!」
どうやら扉を開けるために奮闘していたが、ぬしポケモンとの勝負の激しさを理由に身を潜めていたようだ。
まぁバトルのトバッチリで関係ない人を巻き込んだら大変なので、安全な場所に隠れていたマーレインの判断は間違っていなかったのだろう。
マーレインの顔を見て安心した笑みを浮かべているマーマネと、無事を示すためにニャーくんを抱き上げて笑うヨウカ。
二人の顔を見て安心した後で、マーレインは倒れているぬしポケモンに気付く。
「見事にぬしポケモンを倒したんだね」
「あ、はい!」
「マーくん、キャプテンの仕事は最後までやろう」
「うん」
マーマネは頷き、ヨウカにZクリスタルを差しだす。
「・・・うん、試練達成を認めてこのデンキZ、あげるね」
「ありがとうマーマネくん」
ヨウカはマーマネからデンキZのZクリスタルを受け取り、ニッコリと笑ってそれをしっかり握りしめる。
「・・・ううーん・・・人と話すのやっぱり苦手・・・」
「大丈夫?」
「でも、大丈夫になるようにがんばる。
まだキャプテンになったばかりだけど・・・でも、キャプテンに任命されたからには、ちゃんとそれと向かい合いたい。
人見知りを克服するためにも、ポケモンや機械、そしてみんなとがんばる」
「そっか、頑張りやなんやね」
マーマネの努力の姿勢を感じたマーレインはうんうんと頷く。
「僕もマーマネをキャプテンに任命したのが、間違いなかった。
そう思うとこの島のルールがほかと違ってて、よかったと思うよ」
「え、どういうことです?」
「実はウラウラじまはちょっと他の島と事情が違っていてね・・・。
カプやしまキングではなく、僕のような元キャプテンが後任を決めるんだよ。
最も、それでいいかの最終判断はしてもらうけどね」
「そうなんですか?」
「だから僕は、いとこであるマーくんに自分の後任をさせたんだよ。
結果、正解だったよ・・・マーくんはキャプテンとしての務めを果たしているから」
「えへへっ」
マーレインの話にマーマネは照れ笑いをする。
そんなマーマネに対してマーレインも笑いかけつつも、注意すべきところにはしっかりと釘をさしていった。
そのときも笑っていたので、釘の威力は大きく感じる。
「とはいえ、今のままじゃまた使うことはできないけどね。
電力の消費を押さえなければならないのが、今後の課題だ」
「うん、がんばる!」
マーレインの言葉をしっかりと受け止めて笑ったマーマネ。
直後に、彼らの様子をほほえましく見ていたヨウカの方を向く。
「ヨウカ」
「ん?」
ヨウカの顔を見上げながら、マーマネは試練の中で思ったことをそのまま打ち明けた。
「・・・次に会えたら、ポケモンバトルがしたい」
「うん、楽しみにしてるよっ!」
ポケモンバトルをする約束をして、ヨウカはホクラニ天文台をあとにした。
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この試練は新旧どちらも楽しかったですね。
ただ、ぬしポケモンには苦戦しました。