No.95624

真・恋姫無双紅竜王伝⑤~旧友との出会い、動く歴史~

第5弾、今回は話短めです。
そろそろ真・恋姫のアニメが1月後に始まるようですが、私の住む県では確か放送されなかったような・・・?
・・・よかったよかった、放送されるようです!

2009-09-15 23:08:59 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:7888   閲覧ユーザー数:6479

劉協の嗅覚が香ばしい魚の匂いを察知し、彼女は目覚めた。

「舞人さん・・・?」

「起きたか、協」

青年は魚を取ってきたようで、焚き火を数匹の串に刺さった魚が囲んでいた。

「食べたらさっさと山を降りるぞ。いつまでもこんな山にいてもしょうがねぇからな」

「は、はい」

掛けられていた彼の外套をキチンと折りたたんで、パタパタと焚き火の方に駆け寄る。

「ほれ。塩かけただけの魚だけど美味いぜ」

串に刺さっていた魚を一本渡し、食べるように促す。ちなみに塩は「常在戦場」を旨とする彼が持ち歩いているものだ。

「あ・・・美味しいです」

「だろ?魚は塩焼きが一番美味いんだぜ」

バリバリと骨まで食べる舞人と、箸を使わない食べ方に苦労しながらも上品に食べる劉協。全ての魚を食べ終わった後、舞人はぽつりと口を開いた。

「まさかお前が女だったなんてな・・・」

「・・・ごめんなさい」

感情のこもらぬ青年の呟きに、裏切った罪悪感が少女を襲う。

(そうだ・・・私、この人をだましてたんだよね・・・)

罪悪感で青年の顔を見ていられず、俯いてしまった劉協。俯いた少女の頭にポン、と暖かい手が乗せられた。

「ま、お前にもなんかの事情があったんだろ?それを後ろめたく思う必要はねぇよ」

「・・・はい」

「分かったんならもうちょっと元気よく返事しやがれお子ちゃま」

ぐにー

「ま、まいひょはん!いひゃい、いひゃいでふ~!ほっへはをひっはらはひで~!」

グイグイと頬を引っ張る舞人とバタバタと涙目で暴れて逃れようとする劉協。誰も見てはいなかったが、もし第三者が見ていたら2人はまるで仲の良い兄妹のように映っただろう。

「い・・・痛かったですよぅ・・・」

「うるせ、とっとと行くぞ」

舞人は舞月に劉協を乗せて、自らも跨り出発しようとした。しかし―――

「ん?」

「どうしたんですか、舞人さん?」

何らかの気配を感じて舞人は振り返る。大量の人の気配。これは―――

「軍が近づいて来てるな。西―――っていうと涼州からの軍か?」

「軍・・・ですか?」

舞人は馬首を山頂の方に向けさせて舞月の腹を蹴り、駆けさせた。飛ぶようなスピードで舞月は走り、平野が見渡せる山頂付近に上った。

「わ、すごい数の軍!どこの軍でしょう?」

「牙門旗は―――『董』だと?」

紫紺の旗に確かに『董』の一文字。涼州太守董卓の牙門旗であろうと劉協は検討を付けた。

「月(ゆえ)の軍か・・・」

「(ムッ、なんだか女性っぽい真名・・・)お知合いなんですか?」

真名を呟いた舞人を心なしか睨みながらふくれっ面で劉協が訊ねる。

(なんで俺、睨まれてんだ?)

懐に抱え込んでいる少女に睨まれている事に内心首をかしげていたが、舞人は馬首を軍の方面に向けた。

「董卓殿のところに行くんですか?」

「ああ。この辺山賊が多いからな。俺個人で守るより軍に守ってもらった方がいいだろ」

董卓軍先陣の将・張遼は彼方から一騎、駆けてくる姿を見つけた。

「なんや?」

時間が経つにつれて、近づいてくる人物が分かってきた。馬の体毛は黒く、何よりも特徴的なのは乗馬している人間の髪の毛だった。

炎のような深紅の髪を無造作に束ねている人物を彼女は一人しか知らない。

「お~?あれは・・・舞人や!おぉ~い、舞人~!」

「霞(しあ)か!久しぶりだな!」

張遼―――霞はぶんぶんと旧友に向けて手を元気よく振り、舞人も手を振り返す。

相対した2人はお互いの愛馬を降りて向かい合い、握手を交わす。

「久しぶりやな~。元気しとったか?」

「ま、何とかな。みんなは元気か?」

和気あいあいと近況を語り合う2人。

「・・・・(ムッ)」

舞人においてけぼりにされた劉協は、不機嫌な顔でつかつかと舞人の背後に近寄り―――

ゲシッ

「痛っ!て、てめーなにしやがる!」

「知りません!」

舞人の向う脛を思いっきり蹴り飛ばし、ソッポを向いた。2人のやり取りをキョトンとした顔で見つめていた霞だが、破顔一笑すると劉協の頭をグシグシと撫でた。

「う~ん、可愛いなぁ~!舞人、この子名前なんて言うんや?」

しかし彼女の笑顔は舞人の言葉を聞いたとたん、真っ青に変わる。

「劉協」

「へ?」

ピタリと動きを止めて一種の彫刻と化する霞。周りの兵もピタリと動きを止める。

「霞、お前さんが遠慮なしに撫でているがきんちょは漢王朝の皇太子・劉伯和殿だ」

真っ青に顔を染めた彼女は兵に向かって怒鳴る。

「お前ら何しとんねん!殿下の御前やぞ!全員下馬や、下馬せいー!」

「・・・久しぶりに会ったと思ったら、とんでもない方を連れてきたものね・・・」

「そう褒めるなよ、詠」

「褒めてない!どうせあんたの事だから行き当たりばったりで行動して偶然ボク達に出会えたってところでしょ!?」

「おお~、さすがは名軍師賈駆殿だ~」

「あんた声に感情がこもって無さ過ぎ!この無計画ヤクザ放浪者!」

「んだとこの近眼軍師!」

董卓軍は皇位継承者というやんごとなき身分の人物を迎えて、大休止を取っていた。軍の本陣の天幕では賈駆―――真名を詠が舞人と額を突き合わせて睨みあいをしていた。その一方では劉協と董卓―――真名を月が意気投合していた。

「そうなんですか・・・月さんは舞人さんとは幼馴染なんですか・・・」

「はい、劉協様。特に詠ちゃんとはあんなに仲が良くて・・・」

『仲良くなんかない(わよ)!』

「仲ええやないか」

声を合わせて反論した舞人と詠に霞がツッコミを入れる。

「ところでお前らなんでここに?」

月は可愛らしい印象を持つ少女だが、彼女も曹操や鮑信達と同じ地方軍閥を率いる総帥なのだ。彼女が動くことで、周囲は大きな影響を受けることにもなる。

その彼女が動いたという事は―――?

その頃洛陽では、一人の男が息を引き取った。

その男の名は何進。字を遂高。漢王朝の大将軍―――いや大将軍だった男だった。

 


 
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