その刹那、ナタの指先から光の弓が現れて、光の矢を放ちます。光の矢はゲイザーの胸に命中しました。ゲイザーの剣はナタの目の前でピタリと寸止めされて、その場に膝をつきました。ゲイザーは苦しそうに俯いて胸を手で押さえています。
「ナターシャ様、ご機嫌麗しゅうございます」
ゲイザーはナタの手の甲に口付けをしました。近衛騎士が側近の姫君に忠誠を誓う際に行う儀式と似ています。
「な、何をしておる!わしの言うことを聞けんのか?」
ゲイザーはクルリと向きを変えると、オズワルドに向かって剣を構えました。
「やったぁー。チャーミングの魔法、大成功!おじさん、悪い魔術師をやっつけちゃって?」
オズワルドが呪いの魔法を詠唱すると、ゲイザーは悶え苦しみ始めて、剣を床に落としてしまいました。
「アーク!ゲイザーを殺せ。わしに逆らった罰だ」
「承知しました。オズワルド様」
鎧の天使が槍を構えました。床に転がるゲイザーの身体に槍を振り下ろそうとした瞬間、フラウの爪が槍を払い退けます。
「ゲイザー様は殺させないわ!」
「困りましたね。ご婦人には手が出せない…」
「いい加減にしろ!お前もこうだ?」
呪いの魔法でアークも床に倒れて、悶え苦しみ始めます。オズワルドが高笑いしていると、フラウがオズワルドの背後に回って首を締め上げました。
「あなただけは許さない!」
鈍い音がしてオズワルドは床に倒れました。ゲイザーとアークはカードに戻って、絨毯の上に二枚のカードが落ちました。
「おお、神よ…。悪人を裁く為に私は生まれて初めて自らの手を汚しました。どうかお許しください」
フラウは十字架を宙に描いてから、祈りを捧げました。ナタは机の上に置いてあった宝石箱の中のジョルジュとルーシーのカードを確認してから、床に落ちているゲイザーとアークのカードも中にしまって、持ち帰りました。
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第26話です。