No.95200

真・恋姫無双 ~黄龍記~ 第一話

アレクスさん

第二作目投稿

2009-09-13 13:54:46 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:5936   閲覧ユーザー数:4481

真・恋姫無双 ~黄龍記~

 

第一話 

 

并州賊徒討伐

 

 

 

結成から約二ヶ月

 

一刀率いる義勇軍はその後も連戦連勝を続けた。

 

討伐した賊の数は大規模な物から小規模な物の含めて十を超える数に及び、義勇軍も少なからず損害を負ったが、そのおかげで一刀が居を構える邑の周辺地域に蔓延っていた賊徒達はほぼ一掃されつつあった。

 

降伏したり捕らえられた賊の数は軽く一万を超えた。

 

漢王朝の施政に不満を持っていた者がどれ程多くいたか解る数であろう。

 

一刀はその内、賊を率いていた主犯格の者達には容赦無い処罰を下し、その部下達は一刀が開いた鉱山で無償の強制労働に従事させた。

 

その一方で食い詰め農民や家族を養う為に已む無く賊になった者達には犯した罪に応じて一定期間の強制労働を課し、強制労働終了後希望すれば引き続き鉱山で仕事に従事させる事を約束して生活に困らない様にも手配した。

 

勿論強制労働の期間中も前借りという形で給金を家族に渡して面倒を見てやる事も忘れない。

 

また才有る若者は私兵団に登用し、残りの者達は義勇軍の一員として組み込む。

 

一刀は見事に飴と鞭を使って鉱山の労働力を確保しつつ、自軍の戦力を増強する事に成功したのだ。

 

同時に罪を決して見逃さず処断する厳しさを持ちながらも、罪人とその家族に今一度やり直す機会を与える慈悲と寛容さが多くの人々の心を打つ事になり、一刀の評判はますます高まっていくのだった。

 

その評判のおかげで決起当初三千の兵力だった義勇軍は、投降兵のみならず新たな志願兵を加えて瞬く間に膨れ上がり、今では一刀直属の私兵団騎馬兵一千に加え、歩兵七千に弓兵二千の計一万の兵力に達していた。

 

 

そして一刀率いる義勇軍は今、討伐の手を逃れた賊徒達が寄り集まって出来た盗賊団殲滅の為に出陣していた。

 

 

 

 

 

 

「お頭、今日は獲物がごっちゃりでしたね」

 

「おうよ!久々の大収穫だ!これだから盗賊家業はやめられねえ!!

    野郎共!今日は遠慮はいらねえぞ!大いに飲んで食って騒げ!!」

 

「「「「「おお!!!」」」」」

 

三方を崖に囲まれた山間の盆地に構えた隠れ家で盗賊達が馬鹿騒ぎをしていた。

 

彼らは昼間、近くの村を襲撃して略奪と殺戮を繰り広げていたのだ。

 

そして襲撃の結果、村の規模に比べて予想以上の金品、兵糧があった為に彼らは上機嫌だった。

 

しかし、だからこそ気付かなかった。

 

そんな彼らを崖の上から怒りに燃える瞳で見下ろしていた者達が居る事に・・・

 

 

 

 

 

 

山間から少し離れた場所に一刀率いる義勇軍が待機していた。

 

兵士達は皆既に武器を抜き放ち、いつでも戦える準備を整えていた。

 

そこに黒装束の者達・・・一刀が数年の時を掛けて育成した忍、喇叭(らっぱ)と呼ばれる北郷忍群達である・・・が音を立てる事も無く現れて一刀に詳細を報告する。

 

そして報告を聞いた一刀が馬の踵を反して兵士達に告げる。

 

「皆聞け、奴らは今上機嫌で宴会をしている。

皆も知っての通り奴らは昼間、この近くの村を襲撃して略奪し無垢な人々の命を多数奪った。

にも拘らず、奴らは罪の意識も持たずに機嫌良く馬鹿笑いしている!何の罪も無い、唯日々を平穏に生きていただけの人々を殺したにも拘らずにだ!!」

 

 

一刀の言葉を兵士達は黙って聞いている。

 

 

「奴らは人間ではない、自らの欲を満たす為に略奪し殺戮をする。

それは生きる為に他の動植物を食らう獣以下の所業に他ならない!

最早遠慮する事はない!鬼畜外道に堕ちた奴らを一人残らず皆殺しにするんだ!

二度と同じ事を起こさせない為に・・・・・いいな!!」

 

「「「「「おおう!!」」」」」

 

一刀の力強い檄に大声で応える義勇軍の兵士達

 

彼らは解っているのだ。一刀が本気で怒っている事が・・・

 

幾つもの鉱山を持つ富豪でありながら身分に関係なく優しく接してくれて、また危険な戦いにも率先して参加して挑む。

 

その行動の全てが無垢な人々の為であり、決して代価など求めない。

 

そんな彼の優しさと強さにどれだけ多くの人々が救われた事か・・・

 

襲われた村もそんな彼の優しさに救われた村の一つであった。

 

日々の食事にも事欠く有様の中に一刀が訪れて鉱山での仕事を紹介し従事させ、更には当座の食料まで用立てて村を救ったのだ。

 

そのおかげで村は救われ、人々は挙って一刀を慕ってくれていたのだった。

 

だからこそ許せなかった。彼らの平穏と笑顔を奪った盗賊達が・・・

 

 

そしてその思いは兵士達も同様だった。

 

兵士達は皆、一刀がどれだけ頑張って人々を守ってきたのか知っていた。

 

それこそ身を粉にして頑張り続けて人々を、民衆を守って来たのだ。

 

にも拘らず、そんな一刀の頑張りを無にする行為を行った盗賊達に兵士達は激しい怒りを燃やしていた。

 

 

今正に、将と兵士達が一つとなって愚かな盗賊達にその牙を剥こうとしていた。

 

 

 

 

 

 

「松明を点けろ!」

 

「はっ、松明を点けろーーーっ!!」 ボボボボボッ

 

一刀の指示に副官が応え、後方で待機する兵士達に大声で指示を出す。

 

「銅鑼を鳴らせ!」

 

「はっ、銅鑼を鳴らせーーーっ!!」 ジャーン ジャーン ジャーン  ジャーン ジャーン ジャーン

 

兵士達は遅滞無く行動し一斉に松明を点け、力一杯銅鑼を鳴らす。

 

「よしいくぞ!獣以下に堕ちた鬼畜外道共を決して一人も逃すなよ!全軍、突撃ーーーーーっ!!!」

 

「「「「うぉおおおおおおおーーーーーっ!!!」」」」

 

白馬に乗って駆け出す一刀と騎馬隊、それに遅れじと全兵士達が一斉にその後を追う。

 

怒号と進軍の音が辺りに響き渡り、静かな夜の一時が一変して命を奪い合う戦場へと姿を変えていった。

 

 

 

 

一方、盗賊達は・・・

 

 

「たくよ~~、こんな時に見張りなんてやってられるかってんだ!」

 

「全くだ!こんな所に誰が来るってんだ」

 

「まあまあいいじゃねえか、俺達は俺達で盛り上がろうぜ」

 

盆地へ入る入り口の見張りを命じられた者達も宴会場から失敬してきた酒や食い物で大いに盛り上がり、完全に油断していた。

 

そんな時、突然前方で大量の松明が灯った。

 

「なっ、なんだぁ!?」

 

続いて銅鑼の音が辺りに響き渡ると、凄まじい掛け声と共に白馬に跨った若武者を先頭に騎馬隊が、そしてその後ろから気合十分な雄叫びと共に数千の兵士達が駆けて来るのが見えた。

 

「まさか・・・敵?」

 

「てっ、敵だ!敵襲だ!敵襲ーーーーーっ!!!」

 

突然の事態に見張りの者達は慌てて敵襲の声を上げる。

 

だが次の瞬間!

 

「うおおおおおおおおーーーーーっ!!!」

 

『ブォン』

 

「「「ほへっ?」」」

 

風の如き速さで接近した一刀が凄まじい風斬り音と共に剛槍を横薙ぎした。

 

その槍の一振りで見張り者達は全員首を、或いは胴体を断たれて絶命する。

 

余りの凄まじさに彼らは自分の死すら認識できないまま死を迎えたのだった。

 

 

それからは最早一方的だった。

 

酒に酔った盗賊達が一刀によって鍛え上げられた義勇軍に敵う訳も無く、また三方を崖に囲まれた山間の盆地は隠れ場所としてはうってつけの場所だったが、いざと言う時の逃げ道すら無くしてしまっていた。

 

結果、盗賊達は逃げる事すらも叶わず徐々に追い詰められていき、最終的には一人残らず討ち取られていった。

 

そして盗賊達を率いていたお頭の前には手下達を蹴散らして現れた一刀の姿があった。

 

「貴様が盗賊達の頭か?何の罪も無い人々の命を奪った報いを受けて貰う」

 

坦々と、しかしその瞳には激しい怒りの炎を燃やし、氷の如き冷たき殺気を飛ばしながら一刀は腰に佩いていた大太刀を抜き放った。

 

「てっ、てめえら、何してやがる!早くそいつを殺せぇ!!」

 

「!?う・・・うぉおおおお!!」

 

周囲に居た手下達が命令に従い、一刀に向かって一斉に襲い掛かった。

 

だが・・・

 

  フッ

 

    『ズバッ ザシュッ ドシュッ ザンッ ドバッ』

 

一刀が音も無く姿を消した次の瞬間、複数の斬撃音を響くと共に一瞬の内に五人の賊が討ち倒されていた。

 

「ひぃいいっ!?一瞬で五人を・・・・・ばっ化け物だぁーーーーーっ!?」

 

「なっ!?てめえら待ちやがれ!!」

 

姿を消した上、一瞬で五人の賊を葬った一刀。

 

そんな一刀の姿に盗賊達は化け物か妖術使いの類を連想させ、恐慌をきたして逃げ散っていった。

 

そんな手下達を頭が必死に呼び止めるが、誰一人として聞きはしない。

 

あっと言う間に手下達は逃げていってしまった。

 

「後は貴様だけだ」

 

一刀は逃げた賊には眼もくれず(どうせ逃げられないと判っている為)頭に向けって歩き出した。

 

「う・・ううう・・・・・ちっ、ちくしょぉおおお!!」

 

徐々に近づいてくる一刀の存在に、その覇気と殺気に耐え切れなくなった頭が破れかぶれに手に持つ大刀を振り被って勢い良く振り降ろした。

 

    『ザシュッ』

 

「ギ・・・ギャァアアアアアッ!!」

 

しかし大刀が振り下ろされる事は無かった。

 

眼にも止まらぬ速さで繰り出された一刀の太刀が頭の両手首を斬り飛ばしたからだ。

 

そして・・・

 

「死ね・・・神速百裂斬」

 

   ドバシュゥッ

 

頭は全身を滅多切りにされて、その一生を終えたのであった。

 

 

「皆、よくやってくれた。俺達の大勝利だ!勝ち鬨を上げろーーーーーっ!!!」

 

「「「「「うぉおおおおおおおーーーーーっ!!!」」」」」

 

 

こうして一刀率いる義勇軍は周辺地域に蔓延っていた賊徒達を一掃し終えたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ皆、今日は無礼講だ!好きなだけ飲んで食ってくれ!」

 

「「「「「おうさぁ!」」」」」

 

一刀が居を構える邑はまるで祭りの如く賑わっていた。

 

有る意味当然だろう。何せやっと盗賊に怯える必要の無い平穏な日々が戻って来たのだから。

 

義勇軍の者達は目的を果たした達成感を顔に浮かべて浴びる様に酒を飲み、邑の者達もそんな義勇軍の者達に感謝しつつ、久しぶりの美味い酒に酔っていた。

 

誰もが皆、笑顔を浮かべて陽気に騒いでいる。

 

一刀もそんな皆の姿を見て微笑んでいた。

 

だがその反面、出てしまった少なくない犠牲と世界の状況に憂いても居た。

 

「(この世界にやって来て約四年、右も左も解らなかった俺を受け入れてくれた邑の人達の為に出来る限りの事をやって来た。

そのおかげでこの邑と周辺の村々は他とは比べ物にならない位豊かになった。

けどそれはあくまでもこの周辺のみであり、他の地域は未だ賊の横行に怯え民衆が苦しんでいる。)」

 

愁いを帯びた顔で一刀は空を見上げる。

 

雲一つ無い夜空には月が輝き、まるで一刀率いる義勇軍の功績を称えているかの様であった。

 

「天の御使いか・・・」

 

有名な易者管路が立てた占いに出て来た天の御使い

 

一刀は自分こそが天の御使いだと噂されている事を知ってはいた。

 

だが一刀自身は自分が天の御使いだなどと思ってはいなかった。

 

確かに自分は類希なる才能を持ち、それを努力で伸ばしてきたおかげで武芸十八般の武神と称されるまでになった。

 

そればかりではなく人によっては胡散臭い代物と言われる仙術や道術に興味を持ち、齢十五にして中国へと旅立ったばかりか、その旅の途中で偶然にも本物の仙人と出会って仙術や道術を師事

 

そして僅か一年という期間でありながらも様々な仙術や道術を極め、その過程で錬丹術をも身に付けた。

 

更には東洋の錬丹術に似て非なる西洋の錬金術にも興味を示し、すぐさま渡欧

 

そこでも様々な導術や錬金術を見に付けるに至り、それに応じて膨大な知識と技術を得るに至った。

 

そう、一刀は齢十七にして世界最高の知識と技術、そして世界最強の武を誇る存在へとなっていたのである。

 

 

だが如何に世界最高峰の知識と技術、そして世界最強の武を持つ者とは言え、一人の人間である事に変わりは無く・・・当然限界はある。

 

たった一人では守れる人々の数は高が知れているし、幾ら知識や技術を持っていても一人で造れる物には限りがある。

 

今の一刀には手が届く場所に居る人々を守る事で精一杯なのだ。

 

そんな自分が天の御使いなどとは到底思えない。一刀は本気でそう考えていた。

 

 

しかしその一方で一刀はこうも考えていた。

 

 

自分の持つ知識と技術、そして武術と武芸を使いこなせばより多くの人々を救えるのではと・・・

 

それこそが、自分がこの世界にやって来た理由であり使命なのでは?

 

 

と考えていた。

 

 

 

一刀はこれから自分がどう生きるべきなのか、深く考えさせられていた。

 

 

 

 

そしてその数日後

 

一刀の元にある意味自分の運命を決める事になる人物がやって来るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

第一話これにて終了です。

 

いかがだったでしょうか?

 

作者としてはお読みになられてお楽しみ頂ければいいのですが。

 

さて、次回はいよいよ真・恋姫無双の人物が登場します。

 

いったい誰が登場するか?(予想がついている方も居るかもしれませんが・・・)

 

こうご期待を!

 

 

 


 
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