プロローグ
時は西暦180年の後漢
400年の永きに亘って続いた漢王朝も崩壊の兆しを見せ始めていた。
皇帝は十常侍達宦官の傀儡と化し、宮中は私利私欲に凝り固まった者達が自らの欲望を満たさんとする場と化していた。
官人や役人達の間では不正や賄賂が横行し、民に重税を課して苦しめる。
人心は荒れ果てて各地では賊徒が横行、その賊徒を討伐するべき筈の官軍は脆弱で碌な戦果も挙げられない体たらく振り
人々の悲鳴と嘆きの叫びは大陸全土を覆いつくし、世界はまさに混沌と化していた。
そんなある日、暗雲覆い尽くす空を切り裂くかの様に一筋の白き流星が流れ落ちた。
大陸中で見る事の出来た白き流星を見た人々は、各州の都市を中心に流れる噂話を思い起こす。
『白き流星と共に天の御使いが舞い降りる。我の者数年の時を経て空へと舞い上がり、数多の英傑達と共に人々を絶望から助けて世界を救うだろう。』
有名な易者『管路』が立てた占いの結果である。
やがて噂話を知り、流星を見た人々は乱世を終わらせる英雄の出現を待ち望む様になるのだった。
**「ん・・・何処だここは?」
そして・・・流星の落下から約4年の月日が流れた。
西暦184年
この年、大陸で未曾有の混乱が巻き起こった。
黄巾の乱である。
黄巾党、黄巾賊と呼ばれた彼らは当初太平道を信仰する信者達によって構成されていたのだが、やがて食い詰め農民や盗賊、山賊などを吸収して兵力は三十六万に達する一大勢力へと膨れ上がる。
そして彼らは付近の村や県城等を次々と攻略して勢力地を拡大していくのだった。
これに対して漢王朝は遅蒔きながらも事の重大さを(やっと)理解して黄巾賊討伐の為に廬植、朱儁、皇甫嵩らの将軍達にそれぞれ官軍数万を預けて派遣。
冀州、豫州、荊州を中心に激戦を繰り広げるに至るのであった。
しかし碌な戦を経験していない脆弱な官軍は黄巾賊の勢力拡大を押さえるので精一杯。
酷い所では逆に賊軍に打ち破られる始末であった。
そして混乱は更なる混乱を呼び、他の州でも黄巾賊のみならず盗賊や山賊が結託して暴れまわるに至って世界は混迷の色をより一層強くしていくのであった。
そんな中、并州の各地から集まった志願者達によって義勇軍が組織される。
その兵数は約三千
だが彼らは唯の義勇軍では無かった。
特に義勇軍の中核を成す五百の私兵団の兵一人一人は並々ならぬ武芸者であり、更に五百人全員が完全武装の装備に身を固めて騎馬に乗りこなす。
大将格の者達はそれぞれが様々な特技や技術を有しており、正に一騎当千の強兵(つわもの)ぞろい。
脆弱な官軍などとは比べ物にならない錬度を誇り、瞬く間に并州各地に蔓延る賊徒を次々と葬っていくのだった。
その中でも特に戦闘において常に義勇軍の先頭に立つ総大将の青年は一際大きい白馬を見事に乗りこなしつつ、圧倒的な武技を持って賊徒を討ち果たしていった。
更には自軍の五倍の戦力を持つに至って冀州の本体と合流しようとしていた一万五千の黄巾賊を昼夜を問わない一撃離脱を駆使した奇襲の策を用いて撃滅
そして散り散りばらばらになって逃げる賊を疾風の如く追跡して殲滅してしまうのだった。
しかしそれ程の武を誇りながらも彼らは決して力無き民衆には手を出さず、逆に何処からとも無く届けられてくる薬や食料を賊の襲撃にあった人々に惜しみなく提供していくのだった。
結果、義勇軍の武名とその義侠心は瞬く間に大陸広くに鳴り響く事になり、やがて人々は義勇軍が掲げる十文字の旗の中に存在する一際大きな旗を見てかの軍をこう称する様になる。
天の旗を掲げし天の御使いの軍と・・・
そして何時しか軍を率いる『北郷一刀』
四年前何処からとも無く并州に現れて、瞬く間に幾つもの新たな鉱山を開くに至り僅か数年で并州でも有数の大富豪となった彼
その一方で各地の貧しい村々を回っては農地開拓法や灰などを用いた肥料等の知識を与える傍ら、才ある若者を徴用しては自分の配下に加え武芸を叩き込んで私兵団を形成、周辺地域の治安維持に努める。
しかしてその気さくにして分け隔ての無い性格から食客や峡客に慕われ、多くの民の信頼をも集める青年
そんな彼こそが管路が予言した流星と共に現れる天の御使いだと人々は噂し合う様になるのだった。
そしてその噂はやがて各地で横行する賊の討伐に四苦八苦していた官軍の将や州牧達の耳にも入るのだった。
初投稿作品いかがだったでしょうか?
何分これから始まる物語のあらすじだけですので判らない事等も多いと思います。
そのあたりはこれから徐々に明らかにする予定ですのでご勘弁を・・・
ではこの辺で、最後までお読みいただきありがとうございました。
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初投稿作品です。
読み辛い点など色々あるかもしれませんが、宜しくお願いします。