ゲイザーがスライムを薙ぎ払っても薙ぎ払っても、新たなスライムを召喚されて、ビーストテイマーには近付く事すら出来ません。
「卑怯者!スライムの後ろに隠れてないで前に出て来い!」
「魔導師は戦いで前には出ないものですよ?脳筋の剣士とは戦い方が違うのです…」
「なぜ村を襲った?お前も人間だろう?」
「ふふ、私にも依頼人がいるのです。野菜の値段が高騰すると得をする者もいますからね…」
「まさか依頼人は八百屋か?しかし八百屋にこれだけの手練れを雇う金などあるだろうか…」
「考え方の底が浅い…。これだから脳筋は話にもならない」
「どうせ私も殺すのだろう?冥土の土産に教えてくれ…。依頼人は誰なんだ?」
「ではヒントをあげましょう…。野菜が高くなると誰が困りますか?」
「家庭の台所を預かる主婦か、レストランのシェフのどちらかだろうか…」
「レストランのシェフは近いですな」
「シェフが近い…宮廷料理人か!まさか国王への復讐が目的か?」
「ご名答…。剣士にしては、なかなか頭が切れるじゃありませんか?」
「しかし国王なら金には困っていないはず…」
「ええ、そうでしょうね。でも食費は毎日の事です。それが何倍にも膨れ上がったら、どうなりますか?」
「国民の支払う税金が上がると言うわけか…」
「剣士の割には教養が高くて驚いてますよ?」
「私は没落貴族の家庭で育ったのでね。子供の頃に家庭教師から教育は受けているんだ」
「なるほど、ではそろそろお喋りは終わりにして、死んでもらいましょうか?」
「ナターシャ!ジョルジュを召喚しろ!」
鋭い牙の魔物が現れてスライムを蹴散らしました。ローブの男は怯む事もなく、湿地帯の奥で薄ら笑いを浮かべています。ジョルジュは泥に足を取られてもがき始めました。
「私がなぜここを根城にしているか、おわかりになりますか?」
「地形が有利だからか…。ズル賢い奴だ」
「私には勝てませんよ?そんな子供のビーストテイマーにはね」
泥で動けないジョルジュに、スライムが執拗に攻撃を仕掛けます。ジョルジュはなす術なく、一方的にいたぶられて血まみれになりました。
「ジョルジュ!このままだとジョルジュが死んじゃうよ…」
「ジョルジュを封印しろ!私だけで戦う」
ナタはジョルジュをカードに封印して安全な場所に身を隠しました。ゲイザーは細い板の上を進み、邪魔をするスライムを何度も薙ぎ払います。小さいのでコアを破壊するのは簡単でしたが、すぐまた新しいスライムが湧いて出ます。
「無駄だ!スライムは私がいる限り何度でも蘇る。それ以上、私には近付けまい?」
その時です。ゲイザーは隠し持っていたナイフを投げて、ローブの男の胸に命中しました。周りにいたスライムは一斉に崩れ落ちます。
「バカな…。ナイフ投げだと?」
「奥の手と言うのは最後まで取って置くものだよ?私は傭兵仲間からはナイフ投げの達人と呼ばれている」
…つづく
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
昔、書いていたオリジナル小説の第6話です。