No.951956

ビーストテイマー・ナタ4

リュートさん

昔、書いていたオリジナル小説の第4話です。

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2018-05-10 23:04:23 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:133   閲覧ユーザー数:133

大陸の中心地と呼ばれる街が見えて来ると、少し離れた場所に、大きな翼を持った魔物は舞い降りました。ナタはルーシーをカードに封印して、宝石箱にしまいます。

 

「ここからは目立たないように歩いて行こう」

 

ナタはコクリと頷いてゲイザーの後ろを小走りで付いて来ます。街に着くと宿屋の受付に行きました。

 

「宿泊だ。大人一人と、子供一人」

 

「お兄さん、子供は預かるから良い女を紹介するよ?」

 

「女に興味はない。部屋に案内してくれ」

 

「まさか、あんた…。子供にしか興味がないのかい?」

 

ゲイザーが鋭い眼光で睨み付けると、宿屋の主人は慌てて部屋に案内して受付に戻って行きました。部屋に入るとゲイザーは荷物を降ろしてからナタにこう言います。

 

「今夜は満月の夜だ。私をカードに封印してくれないか?」

 

「うん、わかった!」

 

ナタが呪文を詠唱すると、ゲイザーはカードに吸収されて、真っ白なカードには剣士の絵が浮かび上がりました。ナタは剣士のカードを宝石箱にしまうとネズミのカードを取り出します。

 

「ひとりぼっちだとさみしいから、ピーターならちっさいし、出しても大丈夫だよね?」

 

小さなネズミが現れてナタと戯れて遊んでいました。その頃、ゲイザーはカードの中で瞑想に耽っていました。暑さ寒さも感じず、空腹も眠気もありません。ただ真っ白な空間にフワフワと漂っていて、天と地の区別も付きませんでした。

 

「静かだな。考え事をするのにちょうど良い場所だ。思っていたより居心地は悪くない」

 

時間の流れる感覚もなく、どれくらいの時間が経ったのかもわかりません。突然、身体が引き寄せられて、ナタに呼ばれたと感じました。眩しい光が窓から差し込んでいます。

 

「もう朝になったのか…。私がいない間、良い子にしていたか?」

 

「うん!ピーターと遊んでたら寝ちゃった…」

 

「ピーターはどこにいる?」

 

「おじさんを召喚する前に、カードに封印したよ?」

 

「それなら良いが、あれもモンスターだから気を付けないと…」

 

「ピーターは悪い事なんか絶対にしないよ?」

 

「それと私の事をおじさんと呼ぶのはやめてくれ」

 

「じゃあ、なんて呼べば良いの?」

 

「ゲイザーと呼べばいい」

 

「うーん、なんか変な感じ…」

 

「他の友達はみんな名前で呼んでるだろう?」

 

「そうなんだけど、おじさんはなんて言うか、お師匠様の次くらいに大事な人だから…」

 

「まだ会ったばかりの他人に、そこまで心を開く理由がわからないな」

 

「うまく言えないんだけど、おじさんには初めて会った時から、初めて会った気がしなかったの」

 

「ユリアーノ様も見ず知らずの私の事を簡単に信頼し過ぎだ。私が親ならば、どこの馬の骨ともわからない傭兵の男に子供は預けない」

 

「私もお師匠様も悪い事考えてる人はすぐわかっちゃうんだよ」

 

「魔力の波動とか言うやつか…」

 

宿屋の主人に宿泊費を支払ってから、魔法屋に寄ってみました。ナタが魔導書を手に取っています。ゲイザーが値札を見ると、思わずゼロを数えてしまいました。

 

「魔導書とはこんなに高い物なのか!こんな物はとてもじゃないが買えない」

 

結局、何も買わずに店を出る事にしました。次に役所へ行きました。役所には手配書がたくさん掲示板に貼り出されています。ゲイザーは簡単にこなせそうな仕事はないかと探しました。

 

「スライムの討伐か…。これなら簡単そうだ」

 

ゲイザーは手配書を掲示板から剥がし取って、リュックに入れました。

 

…つづく


 
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