その日、この街は戦場になった。
今や、この街は戦場であった。
「皆さん、家に上がる際には靴は脱がないように、また必ず隊員と一緒に行動してください。時間は一時間の予定ですが近くに
――それでは、ただいまより一時帰宅を開始します、」
今回、防衛隊員たちのリーダーを務めている嵐山の言葉を受け、いくつかの家族がかつての我が家に足を踏み入れる。
危険な警戒区域に一般人を招き入れる試みは初めてではないものの、それは常に、彼らが失ったものや守るべきものを再認識させるものであった。
第一次侵攻から、警戒区域内の土地は住宅や家財も含め全てがボーダーに譲渡されているが、かつての住人が希望すれば家屋の現状を撮影したり、貴重品の回収を防衛隊員が代行するなどの活動をボーダーは行っている。
そしてまた、倒壊の危険がない状態であれば、防衛隊員の立会のもと一時的な帰宅も許されている。
当然のことながら警戒区域内では何時
今回一時帰宅を希望した住民は3世帯5人。
それぞれに嵐山隊、来隊馬、茶野隊が付き添い、早沼支部の隊員と各隊の
通常の防衛任務に比べると過大に思える戦力であるが、それはつまり必ず市民を守るという意思の表れであろう。帰宅者と面識のある支部の隊員や、人気の高い広報部隊が参加しているのも彼らに安心感を与えるためだ。
数年ぶりに足を踏み入れた我が家は埃こそ被っているものの、全てあの日のままの姿だった。
アルバムや記念品など……
やがてそろそろ切り上げる時間になろうかという時、辺りにサイレンの音が鳴り響く。
『
近隣の皆様はご注意ください』
「
[効いてるけどギリギリ範囲外です、北西50メートルに
「っ!まずい!」
通常であれば意に介さない程度の相手である、一般人を守りながらでも問題なく撃破できるだろう。
しかし、家屋を守るとなると難易度は大きく跳ね上がる。厳密には防衛隊員に家屋を守る責務は無いが、住人たちの目の前で家を傷つけるわけにはいかないという気持ちが否応にも巻き起こる。砲撃を行う敵は、そういう意味では最悪の相性であった。
最初に家から飛び出したのは嵐山、続いて向かいの家から村上。このような事態では避難させる住人一人につき隊員一名が充てられることになっているため、他のメンバーは既に逆方向から脱出している。
そして嵐山と村上の存在を認めた
「……俺が止めます。」
村上が発射と同時に宣言し、レイガストを
砲撃が大きく弾け、その後には、、、見事、盾が砕ける寸前になりながらも村上鋼は砲撃を止めきったのであった。
村上は盾を波型に変形させていた。例えば1枚だけの紙であっても、波型に折ると水の入ったコップを支えられる程の強度になる。その要領でレイガストとシールドの強度を上げ、上方に力を逃がすことで砲撃を止めてみせたのだ。
最も完全に止めきれたのは、村上の意図を汲んで同様の
砲撃を止められた
ようやく狙撃位置に着いた太一と佐鳥のツインスナイプが
戦闘が終了し、退避させていた住民と隊員を再集合させてそのまま撤収の流れとなった。その帰路には、先程の
「ああ……横水さん家が……」
近所で交流があったのだろう、壊れた家を目にして住民の一人が嘆くが、それに答える者は居ない。
なぜならば、この街は既に戦場である。
あの日から、この街は戦場なのだ。
あの日、切り離されたものを守るように、振り払うように
今日も少年たちは戦う。
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ワールドトリガー二次創作SS
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