「こんな昼間に流れ星?…何か悪い事の前触れかしら」
「…ちゃん、空を見上げてどうかしたの?」
「どうかという事じゃないんだけど、いま流れ星が向こうの方角に落ちていったのよ」
「流れ星…」
「どうしたの、〇〇」
「ぅぅん、何でもないよ」
「嘘ね、そう言う表情する時は、必ず何かあるんだから。気になるんでしょ?落ちた流れ星」
「やっぱり…ちゃんには叶わないね。なんでか自分でも解らないんだけど、どうしても気になっちゃって」
「ふーん。ボクには解らないけど、〇〇が気になるなら調べた方がいいわね。・・・誰か!帰城途中の・・・将軍に流れ星が落下したと思われる付近を調べるように伝令を飛ばして!」
「ありがと、…ちゃん」
「〇〇の為だもの、これぐらい当然よ。さて……何が出てくるかしらね」
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「………いてて……」
あれ、なんで体中が痛いんだろ
寝てる間に変な姿勢にでもなったのか?
頭がガンガンするけれど、他は問題ないか…
風邪でも引いたのか、とりあえず起きて病院にでも
「…………………ここ……………どこ………だ?」
目に飛び込んできたのは、いつもの見慣れた自分の部屋では無く、果てまで抜ける青い空。天を衝くようにそびえ立つ岩山。見渡す限り続く荒野。
俺はいつの間に外に飛び出したんだ?
こんなごつごつとした荒野で寝てれば、そりゃ全身痛くなるか。
「ここの場所を調べようにも…スマホの電波は圏外か」
唯一の情報源が絶たれた事にショックを受けつつ、改めて周りを見渡すが…
「ここ…本当に日本か…?」
仮にここが日本だとして、こんなにも荒野が続く場所があっただろか
日本はインフラ整備が進んでるから、生活圏内ではコンクリート塗装はされてるし、山などでも人が通る道は整地はされているはずだ。にも関わらず、この場所一帯はさら地当然であり、手入れされている痕跡は全くない
「ん~~…ドラマとかアニメの主人公が過去の世界に飛ばされたみたいな場所だな」
まっさかなと笑いながらも、テレビで見るような設定と自らの境遇と当てはめていく
起きたら自分の部屋に居ない、見たことのない風景、電波が通じない…
「まさか…本当にタイムスリップしたのか……?」
頭に浮かんだ考えを否定したくても、否定材料が見当たらない。
むしろ、その考えが答えだと言わんばかりの状況が襲いこむ
「おう、兄ちゃん。珍しい服着てるじゃねえか」
声を掛けて来たのはリーダーっぽい細身の男、身長の小さい男、体格が一番デカい太った男の3人組だった。
頭には黄色いバンダナを付け、軽装だが鎧風の衣服を身に着けている。腰には錆びて刃こぼれしている剣みたいな物も確認出来る。
「あのこびりついたシミは……血か」
映画の撮影ならどんなによかったか…
「おう、兄ちゃん。こいつが気になるのか。金とその服を素直に渡してくれるなら、何もしねえよ。だが、逆らうなら」
男はその言葉と共に、腰から剣を抜きこちらに向ける
その刃を見て確信する。これは模造刀では無く、振れば命を刈り取る|凶器《武器》なのだと。
それに対し、俺は丸腰。1対1なら徒手空拳で戦えなくもないが、今は1対3、とても徒手空拳で挑める局面ではない
「反抗的な目兄ちゃんだな。ちび、デク、やっちまえ」
合図を受けた小さい男が素早く蹴りを、遅れて太った男が殴りかかってくる。
武器を使わらずに仕掛けて来たと言う事は、血や汚れを付けて服の価値を下げたくないのか…
なら、相手も素手に今のうちに数を減らしてやる
「が…はっ…」
俺が一般人と甘く見て飛びかかって来た小さい男の蹴りを躱し、相手の勢いを利用してそのまま投げ飛ばす。
投げ飛ばされた小さい男は受け身を取れずに背中を強打、痛みで悶絶している間に、今度は大男の攻撃も受け流し、がら空きの腹にひじ打ちを打ち込む。完全に決まったと気を緩めた時…自分の体は吹き飛ばされていた
「…ぐぅ…っ!」
「お前の攻撃…痛かったんだな。今のはお返しなんだな」
吹き飛ばされた時に出来た擦り傷の痛み、殴られた時に口の中が切れたのか、口の中に広がる鉄の味。
俺を殴り飛ばした太目の男は、お腹をさすりながらこちらに近寄ってくる。
「おい、ちび、大丈夫か」
「すいやせん、アニキ。油断しやした」
一撃を与えた小さい男も、リーダー格の男に起こされて戦線復帰。
更に、一連のやり取りで頭に血が昇ったのか、今度は剣を構え始めた
「こりゃ…不味いな」
なんとか立てているが、顔に重い拳を喰らった影響からか、症状は軽いが眩暈がして、まともに戦う事はこれ以上は厳しい。
「手こずらせやがって。おい、さっさとバラして引き上げるぞ」
自分達が圧倒的に狩る立場に居る3人は、ニヤリと笑いながらこちらに近づく。
せめてもう一撃与えてやろうと体に力を入れるも、未だに自由が利かずに倒れ込んでしまった
「待てぃぃぃぃぃぃい!!」
雄たけびと共に振るわれた閃光。
その振るわれた一撃は、リーダー格の男が持っていた武器を真っ二つに折り、男達に衝撃を与える。
「…様の命を受け、調査に来てみれば、随分と小汚い野盗に出くわしたものだ」
「なんだ、お前はだ、誰だっ!」
「…ふ、この私を知らぬか。ならば、教えてやろう。我が名は華雄!董卓軍の一番槍であり、天下無双とは私の事よ!」
華雄と名乗った武人は、巨大な斧を自由自在に操り、男たち3人を瞬く間に蹴散らしていく。
俺はそんな光景を目に焼き付けながら、聞き逃せない言葉を反芻する
「華雄に…董卓…だと…?」
約2千年前の中国で、その名を轟かした人物の名が…
頭の中に一つの解が浮かび上がる。否定しようとするも、
”見慣れない風景”
”見たことのない衣服”
”血糊がこびりついた武器”
”華雄に董卓の名”
「これだけ材料が揃ってて、否定するのが無理か」
何が原因でこうなったかは解らないが、後漢末期にタイムスリップしちゃったみたいだな…
自分自身に起きている現象を把握した時、助けてくれた女性がこちらに歩んできた
「意識はあるか」
「はい、なんとか…助けて頂いてありがとうございます。」
「なに、無事ならばよいのだ。暴虐の徒から民を助けるのが我らの役目だからな。お主には色々聞きたい事があるのだが…また後にした方がよさそうだ」
「なに…を」
華雄将軍の発した言葉の意味を尋ねようとするも・・・俺の言葉は最後まで続かない・・・
助かった事に安心した為か、今まで立ち上がっていた力が抜けて、その場に倒れ込んでしまった。
「目立った外傷は見当たらん。安心しろ、直に目が覚める。いまは休め」
薄れゆく意識の中で、その言葉を聞いて意識を手放さした。
この人なら無防備な自分を預けても安心できる・・・そんな思いを抱きながら
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新たな英雄が行き詰まり…
ボケーとしてましたら、こっちが思いついちゃったんです
許してください(¬ω¬)