3人の決意
「ジュン、ヒカリ」
「コウキ!」
クウヤと別行動を取り始めたコウキはマサゴタウンにきた。
そこにはヒカリとジュンの姿があり、コウキは迷わず彼らに駆け寄る。
「あのときの通信をきいて、ビックリしたわよ!?
まさかギンガ団のアジトに仕返しにいくなんて・・・!」
「おとなしそうな風貌の割に、やること大胆すぎだろ・・・今に始まったことじゃないけどよ」
アジトにつっこむ前にコウキは万が一に備えジュンやヒカリにそう言い残していた。
最初このことをしった二人は驚いたが、ギンガ団に敗北したショックですっかり自信喪失し自分達になにができるかわからなくなり、なにも動けなかったのだ。
その自信喪失は、今も続いているようだ。
「・・・コウキ・・・お前は特別ですごいだけだよ・・・。
オレなんて・・・」
「わたしには・・・できないことをできるのね、あなたは。
もうわたしなんかがギンガ団と戦っても足手まといになるだけだし・・・そんなわたしとあなたは、こんなにも違う」
そうネガティブな発言を続けるジュンとヒカリをみて、コウキは真剣な顔を崩さずそのまま話し出した。
「そうだ・・・君達に一つ言っておかなきゃ。
あと、ナナカマド博士にも」
「え?」
「む?」
コウキが自分の名前を出したことに気づいたナナカマド博士がそちらをむくと、コウキは彼らに話し出す。
「実は今、クウヤがテンガン山にチャンピオンのシロナさんと一緒に向かってるんだ。
ギンガ団のボス・・・アカギをとめるために」
「!?」
自分達の友人となったポケモントレーナーが、あのギンガ団に立ち向かっている。
しかも自分達が相手していた幹部より上の地位に立つ、ボスという存在と。
「あと、クウヤ言ってたよ・・・キミ達にこれだけは伝えてほしいって」
「え・・・?」
あのとき、コウキはクウヤから言葉を預かっていた。
自分達に向けた、本心からの言葉を。
「おれはおれでボク達はボク達だ・・・だから、自分達が思うようにしろって」
「わたし達の、思うように?」
「こうしたいって思ったことをしろ、後悔のしないようにしろって!」
「後悔のない・・・したいこと・・・」
「そうだ・・・だから、クウヤはギンガ団に立ち向かったんだ。
自分にとって後悔のないようにする道は・・・クウヤにとって、ギンガ団と戦うことだから」
「・・・」
コウキの話を聞いた2人は顔を上げた。
ジュンとヒカリの顔からはさっきまでギンガ団との力の差に対する絶望は感じられなかった。
一方、テンガン山に到着したクウヤとシロナは二人そろって車から降りてテンガン山の洞窟にはいっていった。
「そういえば、あいつらはどこに向かったんだ?」
「やりのはしら」
「やりのはしら?」
そんな場所、聞いたことない。
その名前を出されてもピンときていないクウヤにたいし、シロナはやりのはしらについて説明し始めた。
「テンガン山の頂上にある、遺跡のひとつよ。
そこには神と呼ばれるポケモン達がこのシンオウ地方を作り出すために、舞い降りた祭壇とも呼ばれているわ」
「神様と呼ばれるポケモンかぁ」
そういえば、そんなポケモンの像がハクタイシティにはあったし、それについて語られている遺跡にも足を運んだことはある。
だがそこで、クウヤには新たな疑問が浮かべた。
「なぁ、そういえば神様って呼ばれるポケモンって・・・なに?
おれ、よく知らないんだけど・・・」
「ディアルガとパルキアという名前が付いているわ」
「ディアルガに、パルキア?」
初めて聞くその名前にクウヤは首を傾げる。
「ディアルガは時間を、パルキアは空間を生み出した神。
そのバランスが崩れたとき、世界は異変を起こすわ。」
「世界が異変を・・・まさかアカギ、その異変を起こそうとしてるのか!?」
「そのまさか、よ・・・。
アカギは、そのポケモンの力を利用して・・・自分の理想とする世界を生み出そうとしているというのは本当のようね」
「・・・」
心のない世界を、アカギは望んでいる。
そんな世界があっていいのだろうか・・・もし本当に心のない世界になって、アカギは本当に幸せなのだろうか。
そして自分は、みんなは、どうなってしまうのだろう。
そんな感情がクウヤの中を渦巻く。
「ついたわよ!」
「!」
そのときシロナはテンガン山に到着したことをクウヤにつげた。
車から降りて、頂上をみる。
「ここから一気に上へ上へ上るわよ、いいわね!」
「おう!」
そういってシロナはガブリアスをだし、クウヤもヒーコをだした。
「ヒーコ、いわくだき!」
「ガブリアス、かわらわり!」
ポケモン達は、テンガン山の道をあけるために、それぞれ攻撃を繰り出していった。
岩を削っては上への道を開き、二人を導いていく。
飛行ポケモンを使えば楽に進めるのかもしれないが、テンガン山の頂上付近は周囲の空気が荒れ霧も深く、時折雷や竜巻、吹雪などが起こるのでそれはお勧めできない。
その姿はまるで侵入者を防ぐかのようで、そこになにかあるという信憑性を高めていた。
「大丈夫、クウヤくん」
「ああ!
・・・迷ってる場合じゃないし、なによりもおれはおれの願いのために戦うって決めたんだ!
後悔しないために・・・!」
「そう、本当にミクリの言ってたとおりだわ」
クウヤの言葉を聞いてシロナは笑った。
「だったら、このまま一気に敵陣に突っ込むわよ!」
「おぅ!」
ハクタイシティのテンガン山の麓。
「ここが、テンガン山の内部に続く道だね」
「ええ」
「そうだな」
そこにいたのはコウキにヒカリ、それにジュンだった。
クウヤの言葉を受け取って、彼らが出した答え。
それは、ギンガ団と全力で戦うことだった。
「もうあんな悔しい思いはしたくない、傷つき苦しむ姿も見たくない」
「失敗して、本当に悔しいから・・・あいつらにはとことん仕返しをしてやる!」
「これが僕達の決めたこと・・・今、やるべきことなんだ」
芽生えた強い思い、それを与えて自分達の心の奥の気持ちに気づかせてくれた存在を見捨てるわけにはいかない。
だから自分達はどうなろうと、最後まで全力で戦いたい。
ポケモン達も、そんな少年少女の答えに同意してついてきてくれた。
その思いも裏切りたくはない。
敗北を知って、彼らは今どうするべきかを学んだ。
そのすべてを無駄にしないために行動を起こし、ここまできた。
「準備はいい?」
「もちろんよ!」
「さっさといこうぜ!」
ジュンとヒカリの意思を確認したコウキはドダイトスを出した。
「ドダイトス、ロッククライム!」
ごつごつとした岩肌を凄まじい勢いでのぼる技、ロッククライム。
これでコウキは霧に包まれた場所まで一気にのぼっていくことを思いつき実行した。
ドダイトスにしっかりと捕まってのぼる3人。
霧の近くで洞窟を発見して、ドダイトスはそこに入っていき3人をおろした。
「ありがとう、ドダイトス、今は休んでてくれ」
そういいコウキはドダイトスをもどし、かわりにレントラーを出した。
「さて、と」
「本気であいつらとぶつかるぜ」
「ええ!」
ジュンはムクホーク、ヒカリはピクシーを出した。
視界にギンガ団が入ると、3人は彼らに勝負を挑む。
一方、ジムリーダー達はそれぞれの町で騒動を起こしているギンガ団を片っ端から取り押さえていた。
「こちらヒョウタ、今炭坑の休憩室に立てこもっていたギンガ団員をすべて沈黙させてとらえたところだよ」
「こちらナタネ、ギンガハクタイビムを取り囲んで、チェリムをはじめとする私の草ポケモン達が相手を一人ずつ捕まえてるわ」
ヒョウタとナタネはそれぞれの状況を報告していた。
そこにスモモも連絡を取り、今門下生達がギンガ団を捕まえたと報告する。
「了解、引き続きギンガ団を制圧していってくれ」
そんな彼らの報告を聞いていたのは、緑髪の少年だった。
彼のそばには、アゲハントやメガヤンマがいる。
この少年はリョウ、むしポケモンを操る四天王の一人だ。
「・・・各所で騒動を起こして、本来の目的から目を逸らさせるのが目的だってシロナさんが言ってたね」
「ええ・・・そのようね」
そしてこの老婆も四天王の一人であり、じめんタイプを使いこなすキクノだ。
彼女は普段は穏和で優しい性格の老婦人なのだが、状況が状況だけにその顔には厳しさも見せていた。
「もちろん、犯罪を止めなきゃいけないけど・・・なにより一番防がなきゃいけないのは爆破事故ね。
今のところはあの3つの湖爆破以来爆弾は見つかってないし、万全の体制はとっているけど・・・油断はできないわ」
「そうですねキクノさん。
奴らはバトルにしろ本気で挑んではいるけど、爆弾などを持ってそばに置いても恐怖していない・・・。
神様の名前まで出して爆破を起こして集団で人もポケモンも傷つけようとしている・・・困ったものですよ」
「ええ、しかもそれで死んだらどうすると聞かれても、敵を葬った勇敢なものだから我々は神の元にいけるだなんていってますしね」
そこに加わってきたのはエスパー使いの四天王、ゴヨウ。
「そんなことをしても、勇気を示したことにはならないし、神様だってお怒りになられるはずよ・・・それもわからないなんて・・・」
「一度そう思いこみ始めたら、なかなか理解はできないでしょう。
それを変えるには・・・一度とらえ、そして間違いを正していくしかないです、根気よく長く少しずつ」
彼らの更正はやはり難しい問題か、とリョウが頭を抱えた。
そのとき、最後の四天王の姿がないことに気づき、彼の居場所をゴヨウにきく。
「そういえばゴヨウさん、オーバさんは?」
「ナギサ周辺のギンガ団を制圧しにいっています。
ですが、気になる報告がさっきありました」
「気になる報告?」
ええ、とゴヨウはオーバとよばれる四天王の一人から聞いた話を彼らにもする。
「ナギサシティの街中も一応パトロールはしてみたのですが、ほかの町と違い、ギンガ団は影も形もなかった、とのことです」
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これもこの数まで来たかぁ。